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旋律の闇色勇者(トラペゾへドロン)  作者: 傘ㇻ戯 エンリ
ヴェイング大陸バルケイト篇
25/28

二十五話 戦争開始 人間族優勢

HAPPY NEW YEAR‼

ハッハー! 遂に年越しだー!

また怠惰な日々を送ってやるぞー! 俺高一なのにさー………

「なっ―――――ち、崩されたか」


「え、急にどうしたの?」


「いや、なんでもない」


(やっぱ俺が近くに居ないと強度は保てないか………)


リョーカは自分の保険(・・)がたった今崩されたのを感じた。

リョーカが魔法で作ったものである壁。それなりの強度を持っているはずだったのだが、魔力供給が無いといつか崩されてしまうのは分かっていた。

しかしそのタイミングが思っていたより早かった。


四時間前に発動を感知し、そして今破られた。

その時点でなぜ自分たちより先に魔物の軍が到着しているのか疑問であったが、ふたりを不安にさせまいと黙っていたのだ。


(雑魚ばっかりじゃないな。こりゃ俺が到着したらいきなり戦うことになりそうだ………)


街にはギルドマスターが居る。

しかし、恐らくマスターは冒険者たちの指揮をしている。自分が前線に向かうことはしないはず。

そしてSSSランクの冒険者たちは今ソブラストライト大陸にいるという。


(ギルドで見た限りじゃ、あまり強い奴はいなかったな………んっ?)


リョーカは自分の着ている服の背中が引っ張られていることに気が付いた。

ミリーである。


「不安そうだけど、どうしたの?」


「いや、な」


「………大丈夫、あの街には最強が居る、から」


「最強って………」


SSSランクより強いって言ったらギルドマスターしか思い当たらないし、でもひとりだけでは………。


「なにも、魔法だけが、武器じゃない」


「ほぅ、そこまで言うなら信じてやろうじゃねぇか。その最強って奴を」


夜明けの草原を、三人が流れ星のように走る。











南門

「グハハハハハ! 雑兵どもが、俺の倍化魔法の前にしねえええぇぇぇ!」


南門で暴れている存在がひとり居る。

真っ黒の肌に岩のように盛り上がった筋肉。その腕が振り回すハンマー。

その姿は伝説上の生き物、ドワーフに似ているが、それでもこの男は人間だ。

冒険者ギルド所属、ラングリー。それなりに名前の通っているAランク冒険者である。


ラングリーが使っている魔法、倍化魔法とはこの世で珍しい無属性魔法。どの属性にも該当せず、使える魔法も普通の魔法とは異なる効果を持つ。

その原因はやはり精霊にあると言われている。


「おっと、門は通らせん! ハンマー倍化!」


ラングリーの身体が白色に光ると同時に持っているハンマーの体積が倍になった。

それを横なぎに振り回して横を抜けようとしている魔物を一掃した。


重量も倍になっているにも関わらず軽々と振り回しているのは自分の筋肉を倍加しているからだ。それも重ね掛けし、通常の四倍の筋力と化している。

そのせいでハンマーに掛けられる魔法は二倍までが限界なのだが、魔物(・・)であるならば十分。


周りの魔物が死んだことを確認すると、再び前線へと特攻する。

そして今度は今掛けている倍化の全てを解いて、


「身体八倍化!」


数多い冒険者、魔物の中でも目立つほどに大きくなったラングリー、そして


「おらああああああ!」


数多くの魔物をキックで倒した。数多くの冒険者も巻き込んで


「ラングリーさん、仲間も巻き込まないでくださいって言ってるでしょ!?」


「いやあすまんすまん。でも仕方なくね? 死んでないからよくね?」


「良くありませんよ!」


ガハハハハハハハ、と戦場に愉快な笑い声が響いた。

その声は周りに居る冒険者をジト目にしたのだが、本人が気づくことはない。






西門

西門では広がっていく赤と青の魔法が展開されていた。

ここは冒険者ではなく、主に騎士団が出ていた。ふたつの魔法の原因は、騎士団の中の魔道騎士隊所属のふたり。

ふたごのアイ、マイ姉妹である。


「《紅蓮の炎 地獄の業火となりて全てを滅せよ》」

「《聖麗の雫 今戦場に舞い降り勝利への糧となれ》」

「「なんちゃって合成魔法―――――ランページミスト!」」


ふたりが手を前に突き出した瞬間、赤い髪の少女アイからは真っ赤な火

                青い髪の少女マイからは澄んだ水が出て、混ざり合って火が水を蒸発させた。

それは戦場を包み、視界を悪くする。

それに慌てふためく魔物たちは、一気に戦列を崩された。


「みんなー、危ないから」

「死にたくない人は全力で逃げてねー」


「「《聖なる蒼 荒れ狂う紅 ふたつが生み出すは無》これがホントの合成魔法―――――バーストボム!」」


意図的に一か所に集められた水が、意図的に熱を一点に集められた炎に包まれる。そうして意図的に蒸発させられた水を、意図的に一瞬で広範囲に広げられる。

つまりは―――――水蒸気爆発。


「あはは、たのしーね」

「ホントおもしろーい」


キャハハハハとふたりは声を重ねて笑う。

周りの騎士はただただ巻き込まれなくて良かったという安堵と、明らかに魔道騎士の中で最年少のふたりに恐怖を覚えるのだった。






東門

東門の手前で魔物は足止めを喰らっていた。

門の手前に明らかに飛び越えることが出来ない大穴が空いているのだ。下が見えないほどの穴に、停滞を余儀なくされている。


「くはははははははははは、バーカバーカ! そんなのも越えられねぇのかよ! 魔物ってのは大したことないなぁ!」


そんな大声で魔物をけしかけているのは、冒険者ギルド所属。Bランクのネイラキッドという少年だ。

街の外壁の上に悠悠と腰かけているのが魔物からも見える。

そして指を刺して笑っている。


魔物がそんな少年を放っておくわけもなく、飛行能力がある魔物が飛び出した。その数パッと見で五十体。


「バッカ! 突っ込むしか能がないのかなぁ!」


再び明らかな暴言を大声で吐き、ネイラキッドは外壁に手を吐いた。


「《全ての生命の主 星の怒りを示せ》―――――グランドランス!」


詠唱を終えた瞬間、外壁のいたるところが盛り上がり、そして鋭い針のような形を取る。

そしてネイラキッドの「行け!」という命令で、全ての突起が壁から飛び出した。

その全てが的確に魔物を捉え、空を飛んでいた魔物は一掃された。


「やっぱ魔物って脳みそ入ってないみたいだねぇ! わっかんないかなぁ、僕との力の差がぁ!」


煽るだけ煽るネイラキッドを、しかし見ているだけしか出来ない魔物たちは自然に歯をくいしばる。

周りの壁は流石に壊すことが出来ない。厚すぎるからだ。

しかし唯一の門は大穴に遮られている。


「やっぱ土魔法が最強だよね。みんな地味だっていうけどさぁ」


高笑いを響かせるネイラキッドへの冒険者たちの印象はこうだ。


(((うわっ、絶対リーダーとか向いてない人だ………)))


門の下で魔物を待ち構えている冒険者たちは、例外なく呆れ顔をしていた。






北門

他の冒険者もつけずにたったひとり奮戦しているのがケイである。

たった一本の短剣を構えて、魔法を使えない(・・・・)身でありながらも特攻して魔物を切り裂いていく。


「第一門解除(Jaeliy Fankac Rin)………」


ケイはボソッと呟く。

その瞬間、縦に振られた短剣の直線状の魔物たちが半分に両断された。

その長さ十メートル。明らかに短剣の刃が届く範囲ではない。


ケイは魔力が全くない身で、最強の冒険者と言われている。

その理由がこれである。

ある人物に頼んで身体に直接刻まれた(・・・・)己の血の魔法陣。その効果でケイは戦っている。


「血よ(Breyt ya)我に従え(Mani ty Gediky)」


恐らく誰にも理解できないだろう言葉を並べる。

それが詠唱となり、持っている短剣に赤いオーラを纏わせる。

そしてそのオーラは徐々に鋭く尖った形となり、短剣を長剣へと変えた。


「断て(Htibar)」


剣を水平に振るった。

そうすることで赤い筋は戦場の百八十度に広がり、触れる者全てを断ち切っていく。

限界まで広がると、その筋はまるで鞭のようにケイの元へ引き寄せられた。

再び短剣に纏われる赤。

それが魔物たちに恐怖を植えつけた。


「まだ終わらない。終わらせない。

 回れ(Wrevy)」


今度は赤い筋が円状に飛び出し、魔物を二十体ほど囲む。

それは瞬間的に魔物を拘束し、身動きを封じる。


「KYAKYAAAAAAAAAAAAAAAA!」


いつの間にかケイの後ろに回っていた三体の魔物。

ケイの首筋に噛みつこうとした。


「咲け(Ediy)」


その行為は結果的、無駄だった。

ケイが詠唱した瞬間、ケイの背中から赤い結晶が剣山のように飛び出し、魔物を貫いた。


「百花繚乱(Platy)」


そして拘束していた魔物たちは、筋に締め付けられて下半身と上半身が分断される。


圧倒的な力量差。

それを動物だった時の本能が感じさせた。

ある程度の知的生物である魔物でも、元は動物。まるでライオンに睨まれた鼠のようにちぢみ込む。


「貴方たちのリーダーを出しなさい。でないと、あなた達、全滅しますよ?」











「同じ魔物として情けないと思うぞ。馬鹿どもが」


大きな戦斧を抱えた大男が唸る。

そこには四つの機械があり、それぞれ東西南北の門が映されていた。


そう言って立ち上がろうとする男を後ろから抑えたのは、白衣銀フレームメガネの男だった。


「だめだクランガル。今出て行ったら人間どもにばれるだろ。それに魔物たちが人間にやられているなら嬉しいことだろ」


「しかしだなぁ、反撃すらできてねぇんだぞ」


「うるさい。科学者には科学者の考えがあるって言っただろ。お前は脳筋すぎる。それに計画にもまだあと少し時間が必要だ。計画が発動したらどこへでも出て行って良いから、今は大人しくしておいてくれ」


「………っくそ、正論ばっか並べやがって。カスト、お前脳みそが鉄でできてんじゃねぇのか?」


大男の言葉に目を鋭くするが、すぐに冷静になる。

メガネを一回直し、そして白衣の男も画面を見る。


「こいつらも計画が発動したら従わざるを得なくなるさ。そう、魔王様にな」


大男と白衣の男は、同時に口を歪ませた。











「さて、そろそろあの馬鹿デカい男を黙らせに行くか」




「あのふたり、顔に狂気しかなくて私好みだわ~。奴隷にしちゃいたい」




「あの小僧、魔物を馬鹿にすることは魔族を馬鹿にすることと同義であることをおしえてやらんといけんな」




「人間のくせにやるね、あの女。もうすぐ魔物も全滅しちゃいそうだし、あたしが行くしかないかなぁ」




魔物襲来から一時間、ようやく魔族が動き出す。

ケイさんのは魔法じゃねぇぞ?

魔法よりチートな能力だ。使えるようになったのは魔法のおかげだけどね。


つーか題名の話。

一応全部サブタイ付けました。

〈ヴェイング大陸バルケイト篇〉の題名は完全にふざけてますよハイ。

だってつまらないですし。

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