二十一話 人型魔族は紳士的(笑)
今回はいつもの半分くらいの長さです。キリが良かったので。
次はいつも通りに(ならねぇかもなぁ………)
朝になり一行はシュユルを旅立った。
長居するほどに興味も余裕も無かったということだ。
森を抜け今は街道のようなところを歩いている。
右には森、左には川があり、元都会育ちのリョーカも慣れない自然を味わっていた。
「ここらでちょっと休憩でもするか」
「そうだねー。ちょっと歩き通しはきついよぉ」
全員の承諾もありリョーカたちは少し休むことにする。
リョーカは手ごろな岩に腰かけた。そしてミリーに手招きする。
どこに座ろうか迷っていた様子のミリーはすぐに気づいてリョーカに近づいてきた。
「どうしたの? こんなところで年下の女の子を襲う気?」
「なっ………馬鹿言うな。ちっと相談があるんだよ」
相変わらずの桜色、いやどす黒い赤色の頭を持つミリーに対して内心ため息を吐くリョーカは疲れたように首を振る。
リューシアとアリシアが離れていることを確認し話を切り出した。
「で、どうだよアイツは」
「? 何のこと?」
「とぼけんじゃねぇ。お前もアイツ、アリシアを見定めてんだろうが」
目を点にしていたミリーは納得したようにうんうんと二回頷いた。
鋭くした目線をミリーに向けるリョーカには、今はもう誰も知ることはない忌み嫌われていた頃のリョーカの雰囲気を出していた。
ミリーもあの時のことを思い出して顔を帰る。
「楽しく話しちゃいるが、まだ信用してねぇだろ? 俺と同じで」
「まだ信用するに値しない、かな?」
リョーカは不満そうな顔をして手を振った。
「まだ、か。甘いな。お前なら分かっていると思ったが。
人から冷たい目線を送られ、そして学んだ『人を疑う』ということを」
「あら? お父さんもそういう事?」
「俺のことはどうでも良いんだよ。
アリシアに対して余計な気遣いは要らん。はっきり言ってもらう」
ミリーは目を伏せ、考える。
リョーカは答えを待っているが、目はアリシアを見ている。
リューシアと楽しそうに水遊びをしているアリシア。しかしその小さい身に闇を宿したのは最近のこと。それは今でこそその姿からは感じられないが、心の底は分からない。
「………人間からの命令で、情報を流して、家族も人質に取られてる。そのことがある限り、疑いは晴れない……………」
「上出来、俺も同じ意見だ。まだ人間の支配下にあるかもしれない。まぁ、あれは演技だとは思いたくはないがな。もしそうだったら、胸糞わりぃ………」
一気にふたりの間には暗い雰囲気に包まれる。
村に着いてほぼ乱心状態になったアリシアを思い出しながらそう言ったリョーカは腕を組んで俯いている。
あの心の乱れ、あの言動が全て嘘だった時には、下手をしたら自分から手を出してしまいそうだと。その時が来そうな今を思うと、過去のトラウマを抉られる。
特に今はそんなそぶりを見せていないのは確かなのだが……………。
「もし、もし裏切ったら、どうするつもり?」
リョーカは空を見上げ目を細める。
「その時決める」
三十分ほど休んで、さらに二時間歩いたリョーカは最悪の相手に出会っていた。
「貴方は、私と同族ですか?」
相手はリョーカの見慣れた、一種のスーツを着込んでいて、耳は尖らせている。肌は普通の人間の色だが、八重歯が明らかに長い。
目の前に相対する相手は礼儀正しく礼をしてきていきなりそんな質問をしてきた。
「残念ながら違うな。お前はまともに口が利けるみたいだが人間じゃない――――――――――魔族だな」
「そうですか。貴方が同族であったなら我々の計画も容易に進んだでしょうに。残念です!」
手から闇の塊を打ち出してきた。リョーカはそれを魔力を少し放出して受け止める。
完全に消滅することはなかった黒弾は反射し明後日の方向へ飛んでいったが、その直後大きな爆発音が一行の耳に届く。
「その計画って奴を聞いたいねぇ」
「話せませんよ」
「あらら、残念。〈夜を統べる者〉、もしくは〈血を狩る者〉かな?」
「ざんねんながら違います。私はそんな下級の魔物じゃない。進化を繰り返し、力を蓄え、過去存在したという魔王にさえ匹敵する力を持つとされる|皇帝級(Emperor)の直属十魔のひとり。
|公爵級(Duke)であり、名前を持つことを許された最強の魔族。そしてその名は、カーマルです」
「大層な紹介ありがとよ。長すぎてウトウトしてたぜ」
わざとらしく欠伸をして挑発する。
それには特に気にした様子はなくカーマルは話を進める。
「さて、貴方はなんのためにここに居るのですか?」
「馬鹿な魔族、魔物を止めるためだ」
そう聞こえたのが不思議だったのか、カーマルは顎に手をあて考えるそぶりを見せる。
しかしすぐに合点がいったのか、「なるほど」と呟く。
「そんなことを許したら、私たちの計画がおじゃんになってしまいますねぇ。それは凄く困ります、はい。今日は穏便に挨拶だけ済ませようとしたのですが、それでも許せないことも有ります。貴方のその善意は危険と判断しました。よって―――――」
「排除するってか。やってみろよ」
リョーカはカーマルの言動で不思議に思っていたところがあったのだ。
それは皇帝級という単語。
カーマルの話ではその皇帝級とやらは過去存在した魔王にも迫る力を持っているらしいが、リョーカにとってはそれが疑わしかった。
なぜなら、目の前のカーマルからはそれほどの力を感じれないからだ。魔力も、その辺の人間と比べたら比べるまでもないほどあるが、それでも過去に戦った魔王の魂ほどの力はない。魔王に比べれば米粒にも及ばない。
しかし侮ることはできないだろう。強いというのだから強いのだ。
伝説から伝えられた魔王の噂から、一番強い魔族をそう呼んでいるだけかもしれないが。
それでも、目の前の魔族が戦い慣れしているのは分かる。対してリョーカ自身は別の世界から来たばかりでまともに戦い慣れしていない。
以前に戦ったキメラは、図体が大きかっただけに力押しだけで命中精度など諸々を考えずに勝てた。実際肉弾戦は必要なかったのだ。
しかしカーマルの場合、例えアルテミスを撃っても避けられるかもしれない。いや、まず前提として撃たせてもらえないかもしれない。
魂で力もほとんど減殺していたとはいえ、魔王さえも倒したアルテミスが通用しない可能性が多大にあるにも関わらず、勝てるなどとリョーカは奢ることはない。
ふたりの間はピリピリとした緊張感が満たしていて、他の三人は近づくことも出来ない。
遠慮しているといった方が適切かもしれないが。
「ミリー、リューシアとアリシアを連れて離れてくれ。俺たちの戦いに巻き込まれちまう」
「分かった。でも、生きて帰ってきてねお父さん」
「はいはい、心配すんな」
さんにんが離れていくと同時に、殺気を周りに放った。
木から鳥が飛び立ち、雲さえもリョーカの殺気に反応しているかのように上空には雲が無い。
「さぁ、始めようか。生存戦争っ!」
「勝たせてもらいます、この私がっ!」
ある施設の地下、それも一階や二階程度ではなく無限に続く地下の最下層だ。
そこではホルマリン漬けにされた異形の物体、否生物がずらっと並んでいた。
その前でふたつの影が密会していた。
ひとつは白衣を纏い銀のフレームのメガネを光らせていて、もうひとつは人間が持つには苦労しそうな巨大な戦斧を背中に背負っている。
「どうなのだ、アイツの様子は」
「これまでよりは良好と言っていいだろう。魔法陣とのリンクも日に日に完成している。後は、間に合うかどうかだな」
「早くしろ、足止めも存外苦労している」
「それは戦う側の意見だろ? 科学者には科学者の考えがあるさ。まぁ、あと最低二日はかかると言っておこうか」
「ちっ」
戦斧を持っている方は舌打ちをしただけでそれ以降なにも言わなかった。
しかし白衣を着ている方はニヤニヤとしてホルマリン漬けされた生物を見上げている。
「もうすぐだ、もうすぐ会える。*****」
高笑いが施設の中を反響し、もうひとりは嫌そうな顔をした。
その高笑いは地上に届くことはない。
「『我を闇に誘う加護を与えよ ダークパワー』!」
「『ヨルド アブミル シュロミユル
我は力の権化なり 全てを飲み込み理を崩さん インディバイダル・ブレイク』!」
元魔王と自称最強の魔族の戦いは正午の鐘がなる頃に始まった。
というわけでリョーカの戦いっぷりが久しぶりに見れます。
次回をお楽しみに。
別にここで魔族が出てきたのは、マンネリ化が進んできたからじゃないですよ?
ホントに、ホントに………
〈以前、感想ページで誤字脱字が多いというご指摘をいただきました。機動重要塞さんありがとうございます。
後で自分で読み返してみて私もびっくりするほどありましたので、少しずつ直したいと思います〉




