二十話 廃れた村じゃやることなんて[ピー]しかない
ま、あの、すみませんでした。
色々きつかったもんで、それに小説なんて読んでたら時間もないし。
中学時代が懐かしい………。
いや、自己弁護してすみません。
これからもお手数かけると思うんですけど、寛大な心でお待ちいただけたらこれ幸いです。
ヴェイング大陸バルケイト配下村シュユル。
この村はヴェイング大陸ではある意味有名な村であった。
その理由はリョーカが村に着いたと同時に明らかになった。
「なんじゃこれ……」
「ヒドイ………。どうなってるのこれ」
「この村は、バルケイトの配下の中では、悪い方向に有名な村。要するに、帝都に、奴隷として働かされている」
なるほどつまりはここは配下、バルケイトの植民地なのだとリョーカはすぐに理解した。
話を聞いたからじゃない。村に入ったすぐに見えた、鞭で叩かれながら用水路をつくっている多くの男に今村の中に姿が見えないながらも、向こうの方から聞こえてくる甲高い女の声。
バルケイトはここを完全に植民地化している。
「なんでこんな事になったんだ」
「ここは、特徴がなにも無い。だから、村の人も税を払えなくて、前村長の時にこうなった」
「へぇ、大変だねぇ。仕方ないことだとは思うがな」
ミリーは村の中を案内し始めた。
一応宿はあるけど、バルケイトのものに比べたら小さいとしか言いようがない。それ以外には役所と数軒の木で作られた家しかなく、この村のすたれ具合がよく分かった。
リョーカはなるほどと思った。
この村は位置的に冒険者が滞在するには丁度良い場所にある。ギルドの依頼ボードを見た時に気付いたのだが、バルケイトの依頼にはこの森に関する依頼がたくさんあった。
そのほとんどが魔物討伐であったためにこの森は魔物の主な出現ポイント、魔物が寄りやすい自然的な要因があると予測できる。
そんな魔物が大量に出現するところには冒険者が良く来るが、逆に冒険者しかよらないというデメリットがある、というよりデメリットしかない。
必然的にこのような状況になる。
「しかしだなぁ、なんで村人はここから出ていかないんだ?」
「さぁ。前に、村長に聞いてみたけど、言ってくれなかった。村人も。でも、村人は知らないようすだったけど、村長は隠してる感じ、だった」
「手伝ってあげようかなー」
「止めとけ。俺たちのたびの目的は魔物襲撃の原因究明、そして解決だ。こんなのに手を貸してたら埒が明かない」
「でもでも、可哀想だよ。無理矢理こんなことさせられるなんて」
「それが国の、ないしは世界の暗部だ。自然の摂理とでも言っておこうか」
(俺だって、その自然の摂理の被害者だから分からないでもないけど、今は助けてあげられない……)
リョーカは村人の姿と、昔の自分の姿を重ねてみた。
すぐに顔を逸らし、ミリーに案内を再開するように言う。
「ちわーす。部屋取りたいんですけどー」
宿を見つけて、入ると同時にリョーカはそう言った。
内装はボロボロで安心して眠れるものじゃないがしかし、ミリーの話では宿はここしかないらしいので今日はここに泊まるしかない。
カウンターにはやせ細って、フラフラとしながら立っている女性が居た。
「いらっしゃいませ」
「あーどうも。部屋取りたいんだけど、ひとつ」
「「「ひとつ?」」」
リューシア、ミリー、アリシアが三者三様の反応で俺の言った言葉に異論を唱える。
「私は良いんだけど、ふたりが生理て………いやなんでもないよ全然!」
はいリューシア、人を傷つけるようなことを言ってはいけません。
「変態……」
短く重い言葉ありがとうございます。
「そんな、恩人でも一晩同じ部屋に居るなんて、そんなの無理です。やはり私もメスの端くれ、貴方が襲ってこないか心配ですよ」
今まで黙ってたくせにいきなり饒舌になりやがって。文句言うなら助けんぞ。
「ひとつでよろしいのですか?」
「ああいいっすよ。こいつらは無視してください」
「では1MCをお支払いただきます」
明らかに三人は不満の表情をしていたが、俺はそれをガン無視し、財布から金を出した。
(しかし高いなぁ。これも仕方ないとは思うけど………)
前に港で宿を借りた時は俺とリューシアで3000Cだったはず。
それが四人で1MC(一万円?)とは、この村が金銭的に困っていることがうかがえる。
「はい確かに。部屋は二階の201号室です、ごゆっくり」
一礼して従業員は奥に消えていった。
「でもなんでこの村に来たんですか?」
部屋に入った直ぐにアリシアが聞いてきた。
俺だってこんなイベントはスキップして先に進みたいが、残念ながらそれはゲームだけの特権。
しかしこの村に寄ることは必要だったのだ。この村自体が必要だった訳では無く、あくまで旅の途中で泊まるという意味でだが。
「………俺は今起きている魔物襲撃と妖精族の捕獲 (かもしれない)は関係があると思っているんだ」
「つまりは?」
「つまりは、妖精族の集落を襲って妖精族を連れて行ったのは人間。その人間がバルケイト直属の人間、あるいは部隊なんじゃないか。そして魔物襲撃はバルケイトが原因なんじゃないか、ということだ」
「はっきり言ってほしいです」
「分かったよ。
俺はバルケイトに来る前魔物の集団に襲われたんだ。その時魔物を率いていた魔族が言っていた。『「我らはあのお方を助け出したいだけなのだ』と。
つまりは、バルケイトを拠点にしている組織、あるいはバルケイトそのものが『あの方』ってやつをなんらかの目的の為に捕まえて、その目的のためには妖精族がどうしても必要だった。だからお前を利用して集落を襲い、半分もの妖精族を連れ去った。そして魔物は魔族に率いられ『あの方』を救うために動き出した。
今考えてる中で一番有力なのはこれだな」
ただ俺の予測の範疇をでないからあまり話したくはなかったが。
しかしミリーは顎に手を当てて考える。
「確かに。その可能性は、あるかもしれない。でも、この国は昔、勇者のお膝元として、有名だった。その証拠に―――――」
「ちょちょ、待て。ここが勇者のお膝元、ってことは勇者はこの国出身とかか?」
「違う。勇者の出身は異世界―――と言われている」
「なっ!」
俺はその言葉に驚くしかなかった。おそらくは傍から見たら途轍もなく情けない顔をしていることだろうがそんなこと考える余裕すらなかった。
勇者が俺と同じで異世界出身。だったら地球人だったのか? それとも世界はいくつもあってそのひとつから、とかいうパターンか?
どっちにしても、あのババアに話が出来た。ことが終わったら押しかけてやろう。
「召喚の儀、というのがされて、召喚されたみたい」
「召喚の儀………」
ならババアが俺を召喚した時も同じような儀式をしたのだろうか。
「そしてその儀式で、なにかが起きた、とおばあちゃんが言っていた」
「なにか………」
「おばあちゃんは勇者のたびに、途中から加わったから、よく知らないって。でも、その時は世界が騒いでたって」
「勇者の召喚で世界中が騒ぐほどのなにかがあった………」
そのなにかとは、今は関係ない。というより別に必要のない情報である。
「その時に勇者がひとりで国を立て直した、とバルケイトの伝説には載っていた」
「伝説って……」
「”異世界転生なう”って本」
ラノベかっ! と突っ込みたくなった。無性に。切実に。
だがミリーが真面目に話しているだけに、笑ったり突っ込んだりするのはおかしい、というより失礼だ。
しかし勇者はどこの時代から来たのだろうか。
なう、という言い回しは俺の世界の現代の若者が創り出したものだ。
それにネーミングセンスさえ五百年前のものでない。これでは本当にラノベになってしまう。
だが真面目に捉えたら、もし世界がいくつもあって、その世界から勇者が来たとしよう。ならその世界は地球の文化を五百年早く生み出したことになる。
それは凄いことだ。もしかしたらネットとかもあったかもしれん。
なら現在、勇者の世界は今の地球の五百年先の文化を持っている、ということなのか?
「ちなみに作者は勇者」
「やっぱりねっ!―――――ってはっ!」
しまった。我慢の限界を超えて思わず言ってしまった。
これで俺の異世界への関連性に結びつくとは思えないがしかし、迂闊な言動は慎んだ方が良い。
だって今もミリーは目を開いて驚いてるし、アリシアでさえジトーとした視線を送っている。ミリーだけはなにを言っているのか分からない、といった感じだ。
「あは、あはははは。まあ伝説ってのは総じて伝説じゃないって決まってるからな。勇者が書いたんだろうなーって思っただけだよ」
ミリーとアリシアはため息を吐き、指定された自分のベットに倒れる。
随分と埃がたった。今の村の様子を見たら仕方ないことなのだろうが。
「お兄ちゃん」
「なんだよ………」
「お兄ちゃんって苦労してるんだね」
「え。まさか、リューシア分かってくれたのか?」
歓喜のあまり涙がこぼれそうになる。
俺はリューシアの頭を優しく撫でた。
「さっきから貧乏ゆすりが止まらないよ」
「うんうん。こいつらにはいつもいつも……」
本当はリューシアも含まれているのだが、今回の件で不問にすることにしよう。
思えば今までのリューシアの言動は天然ゆえ、そして乙女ゆえの反応だった。あれくらいで怒るなんて俺もどうかしてた―――――
「欲求不満なんだね。可愛そう」
「はい?」
「女の子三人と一緒の部屋になって、それでも待っているしか出来ないお兄ちゃん。可愛そう……」
「……………」
いや、目を見たら分かる。ボケじゃない。純粋に心配してくれているのが良く分かる。
しかし心配する方向が間違っている。
百八十度方向が違う、といおうとしたら三百六十度違うといった時くらいずれている。
ふとクククと小さな音が聞こえてきたからそっちを見たら、音源はミリーとアリシアだった。
「こらテメェら! なに笑ってやがる! つーか今だから言わせてもらうけどな、ミリー普段は絶対わざとだろ! 俺をからかって面白がってんだろ!」
「なにをwww言っているのかwwwww分からない」
「コラァ! いつも「、」入れてるところに「www」入れてんじゃねぇ!」
部屋ひとつにしたのは間違いだったかと、今更ながら後悔する俺であった。
クラーク。
SSSランクの中でもさらに上の実力を持つ冒険者のひとり。
勿論魔力はエックスライを使えるほどには多い。これだけでも十分超人の域に居るのだが、それだけではない。
その腰に差されている剣は、世界で魔剣と恐れられるものだ。
魔族をもとに作られる魔剣は通常の鍛冶師では打てない。
なぜなら自体に意思があるからだ。
死体の内は魔族は意思を宿さない。しかし魔族と溶け込ませるために剣に魔法を付加すると、魔族の部位はその魔力を吸い取り、辛うじて意思を持てる状態まで回復する。
そしてその意思は、剣をうっている鍛冶師、そして所有者の精神を汚染し、身体を乗っ取る。
一般人なら一瞬で本人の意思は消えてしまうだろう。
だがクラークはその魔剣の意思を封じ込め、魔剣を能力付きの剣として使っている。
それが出来るのも膨大な魔力があるゆえである。
「ここは………」
クラークは【摂理詠み】で闇属性の魔力を辿ってきた。
どうやら闇属性の使えては歩くだけで魔力が漏れるほどに、魔力を扱いきれていない。
それを利用して歩いた道をたどってきたのだ。
大体が風に流されていたが、それでも風は自然の摂理の一部。能力で風を詠み、どこから来たのかを調べたらこの森に辿り着いたわけだ。
クラークが入った森は特になにもない。魔物の発生もあまりないただの森だ。
ただ一つ、ここにはドラゴンの子どもが住む、という噂があるらしい。その証拠に、洞窟がいくつもあるのだ。
「この洞窟………」
そこにかすかだが自然に溶け込んだ闇属性の魔力を感じることができた。
中に入ると特に生活感があるわけでも無い。
ただ地面に剣を差して本格的に詠んでみる。
その瞬間、一瞬だけクラークを恐怖が覆った。
しかし原因は洞窟内部にはない。詠んでいるから場所は分かっている。
クラークはそこに向かった。
到着すると、そこには地面に黒い敷物みたいなものが広がっていた。
クラークはその正体を分かっている。
(間違いない。闇属性魔法! しかしこんな魔法は知らないな。魔族と以前にやり合った時、それに文献にもこんな魔法は………)
クラークは思考を一旦止めた。
今はそんなこと考えても仕方がない。そんなことより、この魔法そのものに意味がある。
「解呪魔法―――聖水」
クラークには水属性と無属性に適性がある。その片方水属性の魔法を使った。
魔法聖水には光属性に酷似した性質がある。呪いを解いたり、傷を癒したり。時には魔族に当てると大ダメージになる。
「これはっ! なんという………」
黒いカーペットが取り除かれると、その下の地面は大きく陥没していた。刃物で斬ったものではない。ましてや穴からは魔力を感じられない。
しかしその程度、クラークの頭の片隅にしか保管されなかった。もっと衝撃的で重要なものが目の前に広がったのだ。
そこには大量の人の死体が遺棄してあった。
(服装から察するに盗賊。しかしこの数の盗賊に襲われて無事、とはな)
これはまだ自分の認識を改めないといけないと思った。
別に敵を軽視していた訳じゃない。だが最低、敵はギルドのAランク以上の実力がある。
魔力だけで考えれば間違いなくSSSランクなのだ。
(一刻も早く捉えねば、世界は混沌に包まれかねん)
敵の実力、そして自分の正義感をさっきよりも強く上書きし、クラークは歩みを進める。




