王太子と第二王子
レオンハルトはいつも通り、夜明けと共に起床して軽く剣を振った。
一見、いつも通りの朝。
レオンハルトの側近たちはどこか緊張した面持ちで、言葉少なく自分の仕事に就いていた。
朝食を終えたレオンハルトは、兄である王太子の元に向かった。最近訪れる機会が増えたためか、王太子の近衛たちもさっと通路を空けてくれる。
レオンハルトは兄の近衛たちに手を挙げると、颯爽と兄の執務室へと向かった。
その執務室では、兄アルベルトと側近たちが既に仕事を始めていた。
「兄上、お早いですね」
レオンハルトは自分がゆっくりし過ぎたと猛省した。が、アルベルトはレオンハルトに笑顔を見せる。
「おはよう、レオンハルト。偶然、皆いつもより早くに集まっただけだ」
それを聞いて、レオンハルトは少し安心した。アルベルトが続ける。
「それに今日はお前にとって大切な夜会がある」
アルベルトが「夜会」と言った瞬間、レオンハルトは空気が張りつめるのを感じた。
アルベルトは側近たちに執務室を出るように言いつけた。
執務室にはアルベルトとレオンハルトの二人だけが残った。
幼い頃はよく似た兄弟と言われたが、大人になった今、二人が似ているところはゴールドの髪と青い瞳ぐらいだ。レオンハルトに比べると人の良さそうな顔をしたアルベルトが、珍しく険しい顔つきになる。
「準備は出来たか」
レオンハルトはみぞおちを押さえながら、短く答えた。
「はい」
アルベルトはそんなレオンハルトの様子をしばらく見ていたが、やがてため息を一つ吐くと、自らお茶を淹れだした。
湯気の立つ小さめのティーカップがレオンハルトの前に置かれる。湯気からは独特の香りが漂う。レオンハルトは嫌な顔をした。
「またですか?」
「まただ。飲め」
「苦い割には効きませんよ」
「知っている。気休めだ」
レオンハルトは諦めてティーカップを受け取った。苦いような甘いようなそのお茶は、正直口に合わない。レオンハルトの歪んだ顔を見てアルベルトが苦笑いした。
「昨日は寝られたか」
アルベルトの問いに、今度はレオンハルトが苦笑いをした。
「まあ、そうだよな」
二人は苦笑いしながら視線を落とす。
執務室の扉が開いたのは、それから一時間後だった。
レオンハルトが出て行った執務室のテーブルには、半分飲み残した冷えた薬茶が置かれている。アルベルトはそれを一瞥すると、再び膨大な書類にペンを走らせた。




