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【完結】婚約破棄まで24時間! ~すれ違いまくる夜会、その舞台裏~  作者: ミズアサギ
20時

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婚約破棄とプロポーズ


「では、私たちは失礼いたします」


 立ち上がったエレオノーラが、レオンハルトとアルベルトに対して礼の姿勢を取ると、ヨハンナとクララ、ヤーコプもそれに倣った。

 出口まで案内すると立ち上がったルーカスが、レオンハルトの顔を心配そうに横目で見る。レオンハルトは青ざめたままで動かない。仕方なく、ルーカスがエレオノーラたちを扉まで連れて行こうとした。その時。


「もう婚約者ではないが、そのままでいい。話を聞いてくれないか」


 レオンハルトの生気のない声がした。エレオノーラは立ち止まると、首だけ動かしてレオンハルトを見た。


「本当は、この婚約は私が無理を通したんだ」

 

 エレオノーラは動かない。


「幼い頃、偶然エレオノーラを見かけた。初恋だった。あの日から今まで、ずっと気持ちは変わらない」


 ルーカスとヤーコプがハッとした表情で、レオンハルトを見た。


「やっと婚約が叶ったのに」

「殿下、諦めるのはまだ早いですよ」

 ルーカスの心の中の声援は、なぜか唇から出ていた。


「こんなことで離れたくない」

「まあ、気持ちはわからんでもない」

 アルベルトの心の声も、その喉を突き抜けた。


「何でこんなことになったんだ」

「何ででしょうね」

 ヤーコプの心の声も、皆の耳に届く。

 

「いくらでも謝る。だから、側にいて欲しい」

「あまり心が揺さぶられませんね」

 宰相が、ため息混じりに呟いた。


「初めて、『ネリー』と愛称で呼べた時、嬉しすぎて丸二日も眠れなかったのを思い出す」

「うわぁ……」

 ヨハンナとクララが、気味悪そうな顔をした。


 レオンハルトはふらふらとエレオノーラの側まで来ると、エレオノーラの前に立ち、その白い手を取った。エレオノーラの薬指には、レオンハルトが初めて贈った指輪が嵌められたままだった。


「今のお言葉、とても光栄です。しかし私は侯爵家を継ぐと決めました。この気持ちだけは、この先変わることはないでしょう」


 エレオノーラは少し苦しげな表情を浮かべて、まるで諭すようにレオンハルトに答えた。

 レオンハルトは俯いてしまう。しかし、宝物を扱うように包んだエレオノーラの手だけは、いつまで経っても離そうとしなかった。

 


 そんな二人の元に、アルベルトがゆっくりと歩いて来る。そして険しい顔をレオンハルトに向けた。


「今回の騒動の原因だが、昔からお前には付け入る隙が多すぎた。それに限る」

「申し訳ございません」

「お前は、王子の器ではない」


 アルベルトの言葉にレオンハルトの顔が強ばる。その言葉の重さに、一同は動けなくなった。アルベルトは長い時間、厳しい眼差しをレオンハルトに向けていたが、やがてふっと表情を緩めた。


「だから臣籍降下しろ、レオンハルト」


 レオンハルトの唇が震える。エレオノーラも目を見張った。そんな二人を交互に見てから、アルベルトはさらに続けた。


「どこぞの侯爵家にでも婿入りしろって言っているんだよ」

「え?」

「心当りなんて、大ありだろう?」

「!」


 蒼白だったレオンハルトの顔にパッと赤味が差した。アルベルトはエレオノーラを見る。まるで弟を頼むというように。エレオノーラは肯いた。

 レオンハルトはエレオノーラの瞳を見据えた。エレオノーラの手を両手で包んだまま。


「改めて言おう。私と結婚して欲しい」


 クララがキャッと可愛らしい悲鳴を上げた。ヨハンナの口からチッと音がする。


「いいえ、殿下」

 

 エレオノーラは、静かに首を横に振った。

 

「侯爵家に婿入りして下さるのでしたら、私から申し上げます」


 そして、エレオノーラは繋がれた手をほどかずにその膝を折る。


「レオンハルト様。私と結婚してください」


 キャーッと、ルーカスとヤーコプから悲鳴が上がる。レオンハルトの目に涙が浮かんだ。


「……はい」


 掠れた声で答えたレオンハルトは、エレオノーラを立たせると力強く抱き締めた。


「逆だな」

「逆ですね」

「お嬢様、素敵です」

「俺もして欲しい!」


 一体、何時から緊張が続いたのだろう。一気にその緊張から解放された控え室には、生暖かい空気が漂った。

 しかしその空気はすぐに、扉を乱暴に開ける音に消されてしまう。


「あなたっ! こんなところにいたのですかっ」


 そこには怒りで顔を真っ赤にした、王太子妃カタリナの姿があった。

 それまでニヤニヤしていたアルベルトの額に、一気に汗が噴き出した。

 


 

次回、本編最終話です。

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