答え合わせ
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しばらく指輪で騒いでいた四人だったが、レオンハルトとエレオノーラに漂う不穏な雰囲気に気がつくと、黙ってソファに座り直した。
困ったような顔をしていたレオンハルトが、重い口を開いた。
「エレオノーラ。この婚約破棄には事情があったんだ」
エレオノーラはまだレオンハルトを見ない。ただ、じっと視線を落としたままだ。そんなエレオノーラを見て、レオンハルトはみぞおちを擦った。が、やがてゆっくりと話し出した。
「クララ・ローゼ男爵令嬢が、目的を持って近づいてきたことは最初からわかっていた」
クララがハッとする。
「私を利用して、王太子を失脚させようとする動きは何年も前からあった。その都度、計画はことごとく潰したが。ただ、いつまで経っても黒幕がわからない」
レオンハルトはクララを見た。
「そんな時に不自然に近づいてきた男爵令嬢。男爵家には爵位を手放すほどの借金がある。これは裏がある、兄上たちはそう判断した」
クララの顔が強ばった。レオンハルトは再びエレオノーラを見た。
「今日、私が婚約破棄のための夜会を開く……そんな噂を聞いたら、ローゼ男爵が動くだろうと目論んだ。ただ、エレオノーラには伝えるべきだった。しかし、計画を知ればエレオノーラは、私を心配して自然に振る舞えないだろう」
エレオノーラが初めてレオンハルトを見た。
「黒幕からすればエレオノーラは邪魔だ。エレオノーラへの危険を少しでも減らすために、この計画は信用できるごく一部の側近にしか話せなかった」
苦しそうに話すレオンハルトを、エレオノーラはじっと見つめた。
「信用できる側近……。やだなぁ、殿下。俺に知らせるの忘れていますよ」
「いや、合っている」
即答され、今度はルーカスが苦しそうな顔をした。
「それに、エレオノーラには勝手に暴走してしまう侍女がいる。とても話せなかった」
ヨハンナがレオンハルトに殺気を向けた。
「ね。やっぱりおかしいんだよ、あの騎士と侍女」
ヤーコプがクララに小声で囁いた。
「事情があったとは言え、エレオノーラの心を酷く傷つけた。私も苦しかったが、エレオノーラの苦悩はそれ以上だっただろう。すっかり痩せてしまって……」
レオンハルトがまたみぞおちを擦った。
その時、控え室の扉がノックされると、宰相が足早に入室した。
「報告します」
宰相はクララの顔を見ると一瞬顔を歪めた。が、報告を続ける。
「ローゼ男爵家の執事の尾行により、先ほどローゼ男爵の居場所を確認。拘束しました」
クララは覚悟していたのだろう。表情一つ変えず、ただ黙って聞いている。
「男爵が白状した相手の名前と、夜会中に確保した不審者の名前も一致いたしました」
レオンハルトがホッと息を吐いた。宰相は、レオンハルトの後方に視線をやると呆れたように言い放つ。
「ところで王太子殿下。一体、いつまでこちらに?」
宰相の言葉に、全員がハッと振り返った。執務机には、アルベルトがニヤニヤしながら座っていた。
「兄上! さっき宰相と出て行かれたのではなかったのですか?!」
「途中で帰るには惜しい内容だった。レオンハルト、続けろ」
「いや、無理ですよ!」
「王太子殿下、これからの対応がございます。ご退室を」
「弟の恋愛の方が面白い。見ろ、あの顔を」
アルベルトが悪びれずに言う。レオンハルトは振り返り、ルーカスを恨めしそうに見た。
「お前の位置からは、ずっと兄上が見えていただろう?」
「ばっちり!」
後ろからは、アルベルトの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
レオンハルトは虚空を見つめた。




