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【完結】婚約破棄まで24時間! ~すれ違いまくる夜会、その舞台裏~  作者: ミズアサギ
20時

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二つの指輪

 

「やはり、消しておけばよかった」


 皆、ギョッとしてヨハンナを見た。ヨハンナは、据わった目でクララだけを真っ直ぐに見つめる。その視線を受けて、クララがエレオノーラに向き直った。


「ローゼンベルク侯爵令嬢。本当にごめんなさい!」


 クララは、エレオノーラに心から謝罪した。エレオノーラは無表情で、ただクララを見ていた。


「レオンハルト殿下のこと、本当に取ろうなんて思っていなかったんです。お父様に言われて仕方なく……ヤーコプと別れさせられたので、自暴自棄になっていたのかもしれません」


 エレオノーラは、微動だにせず聞いている。


「私、本当にヤーコプのことが大好きで。何なら初めて好きになった人で。もちろん、レオンハルト殿下のことは王族としては尊敬しています。ですが、男としてどうかと聞かれると答えに困ると言いますか、どうでもいいと言いますか……」


 必死に謝罪の言葉を並べるクララの口は止まらない。レオンハルトの表情は曇り、ヤーコプの頬は紅く染まっていく。


「私、青より断然ブラウンが好きで。それに、レオンハルト殿下とダンスを踊ると必ず、腕にブツブツができて痒くなるんです。何でだろう?」


 思い出して痒くなったのか、クララが右腕の内側を擦った。


「殿下、ふられちゃいましたね」


 ルーカスが楽しそうに言う。レオンハルトはルーカスを睨みつけながら、自分の左腕の肘を掻いた。


「お互い様だ」


 その言葉に、今度はクララが目を見開いた。が、すぐに口元に笑みが浮かんだ。クララはもう一度、エレオノーラを見た。


「許して欲しいとは申しません。どうぞ、いかようにも処分してください」

「どうか俺にも、クララと同じ罰を与えてください」


 ヤーコプもエレオノーラに懇願した。


「お嬢様。二人の処分は私が」


 ヨハンナが言うと、ヤーコプがヨハンナに食ってかかった。


「っていうか、あなたは何者なんだ?! ナイフは持ち歩く、人を不審者扱いする。それに、言っていることがすべて物騒だ!」


 ヨハンナが、ゴミを見るような目をしてヤーコプを見下す。ルーカスがすかさずヨハンナの隣に座ると、嬉しそうに肩を並べた。


「俺の最愛の人。今日、プロポーズするって言っていただろう?」

「おう……まさか、この人だったのか!」


 盛り上がる二人の様子に、クララがヤーコプの肘を突いた。


「ねぇ、この騎士様と知り合いだったの?」

「ああ。偽者かなって思ったけど、本当の騎士っぽいし意外といい人だよ。その侍女も信じられないけど本物っぽいし」


 そこで何かを思い出したのか、ヤーコプはクララの両肩を抱いてソファに座らせると、その前に跪く。そして、ポケットからリングケースを取り出した。


「俺も!」


 それを見たルーカスも、同じようにヨハンナの前に跪くとリングケースを差し出した。


「結婚してください」

「結婚しよう」


 二人は、ほぼ同時にリングケースをパカッと開いた。


「……?!」


 クララはヤーコプに差し出された指輪を嬉しそうに見ていたが、ヨハンナに差し出された指輪を見ると絶句した。

 その様子を見て、ルーカスが持つリングを見たヤーコプも絶句する。

 二人の異変に気づいたルーカスも、指輪を見比べて言葉を失った。


 しばらくして、ヨハンナが冷静に言い放った。


「二つともペリドットのグリーンの指輪。まったく同じものに見えますね」


「そんな! 俺はクララの瞳の色に合わせて買ったのに!」

「俺だってヨハンナの色の指輪を売ってくれって、角の宝石屋の親父に!」

「そうだ、あの角の宝石屋の親父!」

「くそっ! 角の宝石屋の親父めっ!」


 ヤーコプはクララのグリーンの瞳を、ルーカスはヨハンナのモスグリーンの瞳を見て叫び合い、そして肩を落とした。

 

「最後の一点って言ってたのに」

「……俺も」



 

「気の毒だな」


 四人を見ていたレオンハルトが、思わずエレオノーラに話し掛けた。が、エレオノーラはレオンハルトを見もしない。レオンハルトはばつが悪そうな顔をして、みぞおちを押さえた。

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