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ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から強者を叩き潰す  作者: あきお
第二章 オークリッジの街で

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第56話 青髪の観察者

※本作にはTS要素があります。

「――奴隷と話をしたい?好きにしろよ」



俺たちはダンケルからそんな太鼓判をもらい、バックヤードから表に戻った。

あの二人の不快な、睨みを効かせる蛇のような気配が無くなっただけで、肩が軽くなる思いだ。


まずはリストのことは忘れて、聞き込みに徹しよう。



「さて、どこから行こうか」


「それはもうヴェロニカから、ですよね」



――ヴェロニカ。

エリスと一番仲がよかった奴隷。

ここから話を聞くのが手っ取り早いのは間違いない。



「ええと……」



俺たちは、あの青い髪の奴隷を探して、ダルコの売り場を探して回る。


あの時の視線は何だったのだろうか?

警戒なのか、それとも言いたいことでもあったのか。


何にせよ、エリスのことも含めて本人に聞くしかない。



「おったぞ。あそこじゃ」



バルフェリアの視線の先には、複数の女奴隷たち。

その中の一人青い髪の奴隷が、来訪時と同じく、こちらにジッと視線を送ってくる。


鋭いつり目に凛々しい顔立ち。

群青とも言える、たなびく長い青髪は、後頭部で一本に束ねている。



「隠れるわけでも無いようだし……どうやら、言いたいことがあると思っていいのかな?」


「さてな。何にせよ、聞くのが早かろう」



こうしている間にも、ヴェロニカと思われる女性はずっとこちらを見ている。


俺たちはゆっくりと、青髪の奴隷の方へと歩みを進める。

その間、こちらからも視線を送るが、目を逸らすことはなかった。

何を考えているのか、その目からは……未だ読み取れない。



「――あなたが、ヴェロニカさん?」


「はい。お待ちしてました」



目の前にたどり着いた俺の質問に、堂々とした態度で青髪の奴隷……ヴェロニカは答えた。

しかし……待っていたとはどう言うことだ?



「待っていたって?」


「あなたたちが来ることは、分かっていましたから」



もしかして……スキルか?

俺は思わず、近場に刺さっている立札を見やる。

そこに書いてあるヴェロニカのスキルは――



「変装と、隠密……」


「予知、などの類では無いようじゃな」


「別に予知などなくても、簡単にわかりますよ。

エリスが失踪し、従業員の目が鋭くなり、冒険者のような方が来た。

仲が良かった私のところに来るのは当然でしょう?」



紐解けば、理由は単純だった。

起こった事件とそれに関わることを考えれば、当然だ。

この態度と余裕、全部知っているのかもしれない。


それならそれで、なぜ報告をしないのかは疑問に残る。

俺たちみたいに奴隷商が嫌いで、エリスを逃してやりたいって話なら仕方ないが。



「確かに、自明じゃな。」


「まあ、今はそれはいいよ。ヴェロニカさん、率直に聞きたいんだけど。

エリスは今、どこにいるかわかる?」


「……残念ですが、それは分かりません」



おいおい、ここまで超自信満々な態度だったのに、知らないのかよ!

思わせぶりだった態度は何なんだ!



「――ですが、目的は分かります」


「……そうか……」



目的。

それが知れれば、行き先が絞れる。

直接の居場所がわからないなら、目的が見えればどこに行くのか見えてくる。



「なら話が早い。その目的を教えてもらっても?」


「いいですよ。条件を飲んで頂けるなら」


「は?」



何だ何だ?

ダルコの奴隷市場には曲者しかいないのか?

ゲートル、ダンケルはもちろん……まさか奴隷すら一筋縄では行かないのか?



「……とりあえず、条件とやらを教えてもらえる?」


「これから話すことを、ダルコたちには内密にして欲しいんです」



……問題外だ。


ダルコの奴隷を探す、という依頼を受けている以上、情報を共有しないわけにはいかないだろう。

だが、無茶な条件を提示したヴェロニカ自身の表情は少しも変わらない。

どうして、そんな顔のままでいられるのか。



「悪いが、それは無理――」


「アレックス様、お待ちください」



ヴェロニカの提案を蹴る寸前、カイルが俺の言葉を遮った。

突然のことに、俺は言葉を失う。



「ヴェロニカ、少々こちらで話し合ってもいいですか?」


「ええ、お好きなように」


「……ええと?」



カイルは俺に一歩近づき、声量をワンランク落として語りかけてくる。



「条件を飲みましょう」


「え!?でもそれじゃ、依頼を反故にする事に――」


「大丈夫です。なりませんよ」



カイルは断言しきる。



「僕たちは彼女から聞く、エリスの目的をダルコたちに伝えなければいいだけです。

ヴェロニカが内密にして欲しいと言ったのは、それだけのはずです。

……そうですよね?ヴェロニカさん」


「はい」



ええ?


意味がわからない。

何故それをダルコに言ってはいけないのか?

そして秘密にするのはそれだけでいい?


……全くもって理解できない。



「カイル、どう言うこと?」


「彼女は、“これから言うことを”と前置きしました。

つまり裏を返せば、それ以外は好きにしても構わない、と言うことです」


「……なんで?」


「それは何とも……ですが、少なくとも彼女はそれを望んでいます」



俺はチラリとヴェロニカに視線を伸ばすと、はたと目があう。

何故だろうか?その目に嘘はないと感じさせる何かがある。



「それで、これから話すことを内密にしていただけますか?」


「……確認させて欲しい。それを内密にしたら――

エリスを確保しても、ダルコに引き渡しても構わないと?」


「構いません」


「……分かりました」



正直、腑には落ちない。

だが本人がそれでいいと言う。

……ちょっと気持ち悪いのは確かだが、いつまでも手をこまねいているわけにもいかない。


俺も俺の目的を達成しないといけないのだ。



「ありがとうございます」



ヴェロニカは深々と頭を下げる。

そして改めてこちらを見据えて――



「エリスは、父親を探すために、逃げ出したのです」


「父親を?」


「はい。彼女は、父親と一緒にオークリッジに来たと言っていました。

ですがいつの間にかはぐれてしまい、奴隷商に拐われ、奴隷になったらしいです」


「……それだけじゃあ、情報が足りない。どこで拐われたのか、わかる?」



ヴェロニカは迷っているようだ。

無言で俯いている。

俺たちはヴェロニカのその姿を見守る。


俺が何を言ったところで、自分の考えを曲げるタイプじゃ無いだろう。

なら、本人に納得してもらうしかない。



「……私も細かくは知りませんが、」



ヴェロニカは顔を上げると俺を見据える。



「――とある宿屋で、と」


「それが何処かは分からない?」


「……残念ですが」



そう言うとヴェロニカはかぶりを振った。

これ以上は知らないと、彼女の態度が語っている。


“宿屋”か。

分かったのはこれだけだが、足がかりにはなる。

一握の希望だ。



「ありがとう。このことはダルコに秘密にしておくよ。それでいい?」


「はい。よろしくお願いします」


「ふむ。行き先が決まったようじゃの」



オークリッジ中の宿屋を当たって、その足取りや事件の影を追う。

まずはそこからだ。

読んでいただきありがとうございます。

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