表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から強者を叩き潰す  作者: あきお
第二章 オークリッジの街で

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/59

第54話 奴隷市場にて

※本作にはTS要素があります。

ダルコとの交渉の翌日。


俺とバルフェリア、カイルの三人は、奴隷市場前に来ていた。


北門とは逆、南門の近くに大きく展開されたその市場。

広大な敷地にところ狭しと立ち並ぶ、テントと檻。

奴隷と、奴隷を物色する多くの人たちとで、恐ろしいほどに賑わっている。



「これだけの人出があるのか……」



商品として鎖に繋がれた奴隷の首には、札が掛けられている。

札には名前とスキルが書かれており、人々はその札と容姿を参考に奴隷を物色していた。


――気持ちが悪い。


まるで物を見るかのような、人々の目。


スキルを見ては舌打ちをする客。

少しでもまともそうな主人に買ってもらおうと、必死にアピールをする奴隷。

必死に抵抗する奴隷を痛めつける男。



『……唾棄すべき場所じゃな、ここは』


「同感だ」



極めて冷静に振る舞うバルフェリアだが、粘度の高いドロリとした怒りが渦巻いているのを感じる。

その理由は、極めてシンプルだ。


――ここには、人の尊厳が存在しない。


この国、レギュラス神聖王国。

ここでは奴隷がもの以下だと言うことを、嫌と言うほど思い知らされる。


この中に、俺と同じように騙されて奴隷になった人は……どれだけいるのだろうか?

犯罪者の自業自得ならいざ知らず、商材を手に入れるための人攫いなど、許せるわけがない。



「アレックス様、大丈夫ですか?」


「え?」



カイルの声に、我に返る。

気づけば俺の両手は、ギュッと握りしめられていた。

どうやら、俺も力が入ってしまっていたようだ。



「ありがとう、カイル。……依頼のために、少しは落ち着かないといけないよね」


「ええ。今はまだ、我慢です」


『……そうじゃな。して、ダルコの店はどこかのう?』



――俺たちはダルコの店を探して、奴隷市場を彷徨い歩く。


歩きながらも、俺の目はティアとマルクの姿を探してしまう。

依頼をこなすには余計な思考だと言うことは……わかっている。

でも、それでも諦められるわけがない。



「アレックス様!」


「ん?」


「あの名札……」



カイルが指差した先に見える名札。

そこには――“ティア”と。



「ティア姉!?」



咄嗟に、その先にいる奴隷に目を向ける。



「な……何でしょうか」



そこにいる奴隷の女性は……赤髪で、顔も違う。

そして何より、全身にまとう空気が、ティア姉とは似ても似つかない。


この人は――別人だ。



「すみません。人違いでした」


「あ、ちょっと、私を買ってくれませんか?何でもしますから!」



すがるような目で女性は懇願してくる。

それこそ、必死に。


……助けられるなら助けたい。

だけど、今の俺たちには、そんな力も時間もない。



「……ごめんなさい」



頭を下げると、俺は逃げるように足早に立ち去った。

共感してしまうことも、憎まれてしまうことも、怖かった。

だが、確実にあの女性は傷つけているだろう。


――でも、今は仕方がないじゃないか。

俺は自分に強く言い聞かせ、心に突き刺さる痛みから目を逸らす。


一方、進むごとに、バルフェリアの怒りがじわじわと蓄積されていく。

無念、後悔、失意……封印されてしまったことでの自身への失意が、膨れ上がっているのだろう。


さらに奴隷市場の現状。

バルフェリアに歯噛みさせるには、充分すぎる環境だ。



「――お嬢さんたち、お目当ての奴隷でも?」



そうしていると、俺たちに向かって呼びかける男が一人。

振り返るとそこにいたのは……ダンケルだった。



「……ダンケル」



ダルコの護衛であるダンケル。

まだ実力の底は見えないが、ダルコが護衛に選ぶくらいだ。

油断ができない相手なのは間違いない。



「おいおい、そんな警戒すんなって」


「何でここに?」


「決まってるだろ。エスコートしてやれってダルコの旦那に言われてよ。

……案の定、困ってるようだしな」



奴隷商たちを毛嫌いして、俺たちが声をかけ辛くしているであろう事も、どうやら想定内だったようだ。



「そんな顔すんなよ。少なくとも、今は敵じゃないんだからよ」


「……それもそうだな」


「そうそう、仲良くしようぜ。じゃ、案内すっから着いてきな」



ダンケルの進行方向の人波が、自然と割れていく。

商人たちも客たちも、見知った顔なのだろうか。



「どうも、ダンケルさん」



人々が軽く挨拶をしながら、ダンケルのために道を開ける。



――ダンケルの案内から程なくして、ダルコの店の前に到着した。


さすがと言うべきだろうか、他の店とは規模が違う。

百人はいるんじゃないかと思われる奴隷の数。

それを管理するスタッフの人数も、十人はくだらない。


遠巻きに見ている客も、皆いい身なりをしている。

そのため、中でも高級店であることを想起させる。



「旦那は、このオークリッジでもトップクラスの商人だからな。

できる事なら、仲良くしといた方がいいぜ?」


「まあ、考えとくよ」


「ま、いいわ。で?ここに来てどうするつもりなんだ」


「いつ気づいたのか、当事者から話を聞きたいんだ。当日の担当者はいるかな?」



ダンケルは「はいよ」とひとこと言うと、スタッフたちに声をかける。

仲がよさそうに軽く談笑をし、一人のスタッフを連れて戻ってきた。



「どうも、あなた方が依頼を受領された冒険者ですか?」


「ええ、ダルコ……様から依頼を受けまして。アレクサンドラと言います」


「アレクサンドラさん、よろしくお願いします。私はゲートルです。

お話は――あちらでもよろしいですか?」



ゲートルと名乗る、紳士的な壮年の男性は、裏の方を一瞥し、移動を促す。

素早く視線を動かし、誰かに聞かれていないか周囲を確認して。



『やはり、周囲にバレるとまずいようじゃな』



話を聞くために、裏へと向かうゲートルの後についていく。



「……ん?」



視線を感じた。

振り向くと、そこには気の強そうな、青髪の奴隷の女性。

睨むでも哀願するでもなく、ただジッとこちらを見つめている。



「おい何してんだ?ゲートルが行っちまうぞ?」


「ああ、ごめん。行こう」



あの女性の視線は気になるが、まずは話を聞くのが先決だ。


そうして俺たちは、ゲートルの後を追うのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければブクマ・評価・感想いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ