表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から強者を叩き潰す  作者: あきお
第二章 オークリッジの街で

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/61

第51話 屈辱の握手

※本作にはTS要素があります。

「奴隷を捕まえろ、じゃと?」



バルフェリアは目を細めてダルコに問う。



「ええ」



ダルコはバルフェリアの静かな圧に怯む事なく笑顔で答える。



「……続けるがいい」


「ありがとうございます。……いやね、先日仕入れたばかりの奴隷が、あろうことか逃げ出しましてね。そいつを捕まえて欲しいんですよ」


「……なぜその程度の依頼を妾に出すのじゃ?その辺の冒険者たちで対応できる案件じゃろう」


「ええ、そうなんですがねぇ。だが、奴隷商が商品に逃げられたなどと周囲に知られれば、俺の名前に傷がついてしまう訳ですよ」



仕入れたばかり、商品。

ダルコの口から吐かれる言葉からは、この国での奴隷の立場というものを、改めて思い知らされる。



「なるほど、そこで冒険者になったばかりの妾たちに目を付けたという事か」


「んで、使えるかどうかのテストとして、俺がアンタらに差し向けられたって訳よ」



ダンケルが横から言葉を挟む。



「それだけではないですけどね。……レギュラス様がお会いしたいと言うほどの方、ちょっと見たかったんですよ」


「解せんな。奴隷を探すだけにしては、過剰な力ではないか?」


「……奴隷は奴隷でもちょっと特殊でね。早めに確保をしておきたいんですよ」



そう口にするダルコの目からは笑みが消えていた。



「万が一にも、他のものに奪われるわけにはいかない」


「何故じゃ」


「特殊なスキルを持ってるんですよ。……残念ながら、これ以上は」



この先は言えない。

ダルコは口に指をあて、おどけたジェスチャーでそう伝えてくる。



「あなたも、アレクサンドラとやらも、本当は受けたくないんでしょう?よく分かります。

……しかし、あなた方が動かなければ彼女がどうなってしまうか」



まるで演劇のように、大袈裟な動きと抑揚でダルコは嘆き出す。



「主人のいない奴隷など、物以下の存在です!犯され、殺されても、誰も意にも止めない!

そんな悲劇は、何としてでも避けなければなりません!!」


「本音は、何傷がつくのを恐れておるだけじゃろう」


「分かります?」



ダルコは破顔して、人の懐に潜り込むような笑顔をバルフェリアに向ける。

が、バルフェリアは眉ひとつ動かない。



「ひとつ聞いて良いか?」


「ええ、どうぞ」


「この国での、逃げ出した奴隷の扱いは?」


「先ほど言った通りです、物以下。どんな目にあっても仕方ない」



ダンジョン奴隷があんな扱いだったんだ。

主人がいない奴隷なんて、当然そんな扱いになってしまうだろう。

その扱いに、胸が苦しくなる。



「……アレックス。聞こえておるな?何にせよ、妾たちは受けるしかないようじゃぞ」


『ああ……そうだな……』



壊されるかもなんて聞かされて、放っておける訳がない。

ダルコの依頼に乗るのは癪だ。

この手で殺してやりたい男の言うことを聞くしかないこの状況に、歯噛みする。



「分かった。では、受けさせてもらおう」


「おお、よかった!あなたを奴隷にするのは骨が折れそうですから助かりましたよ!」


「……アレックスよ、そろそろ落ち着いたか?」


『……こいつは許さない。でも、今は確保して助けるのが先だ』



俺が冷静になれるまで、バルフェリアは待っていてくれたんだ。

それも含めて、飲み込もう。

今は我慢の時だ。



「よし。……ダルコよ、これよりアレックスに身体を戻す」


「いいですけど……また襲われたりは無しでお願いしますよ?」


「安心せい、もう大丈夫じゃ。これまでの話はアレックスも全て聞いておる」



バルフェリアはそう言うと魔力を流し、指輪を通して俺とバルフェリアの意識の位置が反転する。

そして、俺の意識は自分自身へと戻ってきた。



「バルフェリア……ありがとう」


『良い』


「ふむ?今はアレクサンドラ、なのかな?」


「……ああ」



やはり心がざわめく。

気を抜けば殺意に取り込まれそうだ。

しかし、今ここで暴れるわけにはいかない……落ち着け。



「確認したい。奴隷を連れ戻したとして――殺したりしないか?」


「はっは!そんなもったいない事をするものか。利益にならん」


「……そうか」



ダルコは右手を俺へと差し出してきた。



「……何ですか?」


「握手だよ、握手。お互いにいい関係でいたいじゃないか?」



依頼は飲み込むが、こいつと握手?

脂肪で厚みの出たブヨっとしたその手。

こいつの精神性を合わせて、気持ちが悪い。



『アレックス』



――分かってる。

今は我慢だ。


俺は無言で右手を差し出す。



「これからよろしくな!」



ダルコは俺の手をガッチリと握った。


ゾワリと背筋に怖気が走る。

ダルコの得体の知れない強さが、腕を通じて伝わってくる。



「私も……念のためひとつ聞いていいですか?」


「ああ、いいぞ?」


「“使徒”が私たちと協力をしてもいいんですか?」


「おいおい、勘違いするな。レオンの件はあいつの暴走だ。

元々、お前たちはレギュラス様に招待を受けていただろう?」



ダルコはあくまで敵対しない、と言っているが……真意は見えない。


もしかしたら時がくれば、こいつともやり合う必要があるかも知れない。

実際、この依頼が終わったらこいつは許さない。



「……で、その奴隷の特徴は?」


「おお、そうだった。モニカ!」


「はい」



ダルコは手を離すと、モニカを呼びつける。

モニカはデスク上の資料をローテーブルへと運び、広げ、



「奴隷の名前はエリス。つい二日ほど前に逃げ出しました」


「レオンの奴隷を引き継いでいるときにな。一気に数が増えたもんだから、把握できなくなった一瞬の隙に、いつの間にかいなくなっちまってよ」


「レオンの?」


「言っただろ?あいつの暴走だって。その罰みたいなもんさ」



レオンがどうなったのかは気になるが、そこを深掘っても仕方がない。



「その奴隷がいなくなっている事に、どうやって気付いたんですか?」


「リストの確認だな。名前と特徴をリスト化してるんだ」



――リスト。

それを見せてもらえれば、“あいつら”を見つけられるかもしれない。



「……そのリストを見せてもらうのは?」


「はっはっは!冗談だろう?俺たちの大事な商材情報だ、見せるわけにはいかんよ」



ダルコは余裕のある表情を見せているが、目の奥は一切笑っていない。

この男にとって、情報とは武器だ。

どうあれ、見せる気は無いだろう。



「ですが、情報は少しでも多い方が……」


「あとは外見情報だけで充分だろ?違うか?」


「いえ……それで大丈夫です」



依頼者にそう言われては、従うしかない。


レオンにダルコ。

なぜ使徒が奴隷商をしているのか。

二人も奴隷商ならば、これは偶然じゃない。


なんとか情報を引き出せればと思ったが、俺の考えは読まれているようだ。

これだけ用心深いのなら、これ以上はやめておくのが無難だろう。



「……分かりました、外見は?」


「白銀の髪の女だ。綺麗な髪色の美人だから、すぐに見つかると思ったんだが……」



白銀。

だが、エリスという名前。

“あいつ”とは違うのか……。



「それで、二日経っても見つからないと?」


「そうだ。だから斥候としても充分な力があるというお前に依頼をしたんだ」



……なるほど。

ある程度の実力があり、斥候としての能力もあり、冒険者との繋がりが薄い俺だからこそ、依頼をした訳か。


ようやく腑に落ちた。



「それで、期限はいつまで?」


「一週間だ。それまでに見つけてくれ。もちろん生かしてだ、いいな?」



奴隷商のために、逃げ出した奴隷を探すなんて、まっぴらごめんだ。

だが受けなければ俺も、カイルたちも立場が危うくなる。


エリスという奴隷もそうだ。

主人がいない逃亡奴隷なんて、変な奴に見つかりでもしたらどうなるか分かったものではない。



こうして俺は、ダルコの依頼を受ける事となった。

読んでいただきありがとうございます。

よければブクマ・評価・感想いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ