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ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から強者を叩き潰す  作者: あきお
第1章 奴隷、地上へ

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第44話 前を向いて

※本作にはTS要素があります。

――アレックスが冒険者になる前日。


オークリッジのレギュラス教会。




「……どうして、貴方がここに?」


レオンが太った中年男に話しかける。


「帰ったか。おかえり」


「質問の答えになってませんよぉ?」


レオンはこの男が嫌いだ。

この男はレギュラス様のためではなく、自分の利益のためにレギュラス様に取り入っている。


聡明なレギュラス様が、そのことに気付いていない訳がない。

にも関わらず、この男を“使徒”として重用しているのは、どうしても理解できない。


「お前、神託を守らなかったらしいな?」


「……は?」


なぜこの男が知っている?

この教会の司祭にも、他言無用と釘を刺していた。

暗部連中の口は元より固い。


レギュラス様に認められている、我々使徒には忠実に従うのが、レギュラス教会の筈だ。


「誰から聞いたのか知りませんが、そんな事実はありませんよぉ」


「ほぉ。お前の言う事を信用するなら、聖女様が嘘を吐いてるって事だなあ?」


「何?」


何故、聖女様がそこで出てくる?

俺の疑問を掻き消すかのように、教会の奥から足音が響く。


足音に振り返ると、説教台の前に、聖女が屹立していた。

聖女の正装に身を包んだ彼女は、どこか神々しさを感じさせる。

聖女の証となる指輪が、柔らかな光を反射する。


この女が元奴隷とは、到底信じられない。


「久しぶりですね、レオン」


「何故、あなたがここに……?」


「レギュラス様より神託を頂きましたので。非常に重要な内容だったため、直接足を運ばせてもらいました。それに――」


そう言い放つ聖女の視線が、レオンを鋭く突き刺した。

太った男は神託を知っているのか、泰然として余裕の表情を浮かべている。


「何故でしょう?あなたには神託が届かない気がしましたので」


レオンの体温が一段下がる。

確かにレギュラス様より賜った“聖裁”がなければ、神託を受信することはできない。

もうバレてしまっているのか?


それでも、聖女だけならともかく、太った男がいる前で弱みを見せるわけには行かない。


「それは、どのような神託でしょうか?」


「……レオンを罰せよ、と」


聖女は動じる事なくレオンに告げる。

レオンとしては、罰自体、覚悟はしている。


しかし――


「恐れながら、私がどのような罪を犯したと?」


レオンはカマをかけた。


行動があまりに早すぎる。

本当に神託なのだろうか?

……この女の独断先行もあり得なくはない。


「レギュラス様の神託を反故にし、あまつさえ“聖裁”を失った、その罪を罰します」


だが、聖女は全てを知っていた。


「レオン!お前“聖裁”を失ったってマジかよ!命より大事だってうそぶいてたくせに、ダッセェな!」


「よってレオン、あなたの奴隷商としての地位を剥奪します」


「なっ、待ってください!私はレギュラス様のために……!」


レオンは突然、狼狽え出した。

彼にとって、レギュラスの所有物である奴隷の管理は非常に誇らしい仕事だ。


その権利を剥奪されると言うことは、レギュラスに“お前はいらない”と突き放される。

レオンにとっては、それほどの大問題だ。


「レギュラス様のため?違うでしょう。あなた自身の満足のためでしょう」


「いや、それは……」


「レギュラス様の求めを無視して、対象を殺害しようとした挙句、返り討ちに合い“聖裁”を失った。それが力あるものの姿と言えますか?」


「言えませんなあ」


太った男が聖女に同調する。


「レギュラス様の慈悲で、新たな“神器”はお渡しします。わざわざこうして出向くのも面倒ですから。

そしてあなたはこれから、巡回説教師として町々を回りなさい」


「待ってください!使徒がその様な職務に就くなど、聞いたことがありません!」


「ならばあなたが前例になりなさい。確かにあなたの力は素晴らしいですが、それが元でレギュラス様に従えないのであれば、意味がありません。

教義を説教して街を回り、改めて教義と忠誠を、その身に染み込ませるのです。よろしいですね?」


「……」


こんな女に好き勝手言われて、レオンのプライドはズタズタだ。

血が滲むほどに強く握り込まれた拳が、レオンの屈辱をよく現している。


「私の言葉はレギュラス様の言葉です!さあ、返事を!」


「分かり……ました…………」


「お前が管理していた奴隷のことなら安心しろ。俺が面倒を見てやるからよ」



――――――



無事、冒険者となった俺はカイルと共に、街中をゆっくりと歩いている。

オスカーはと言えば、


「樹皮は確かに頂きました!それと、今から薬の買取り金を用意しますから、僕は先に行きますね!では、また後で!」


そう言うと、俺の返事も聞かずにさっさと走り去ってしまった。


だから、俺たちは散歩も兼ねて、オスカー宅へゆっくりと向かっている。

露天で甘いパンを買い、食べながら軽い観光気分で街中を歩く。


「ん〜〜〜!甘味も久しぶりじゃあ!」


「ならよかったよ」


晴れて身分を手に入れた俺は、街中でも怯える事なく、堂々とミニバルフェリアと会話を交わす。

今なら誰かに詰められる事もないし、バルフェリアも自分のペースで食事をしたいだろう。


チラ見をしてくる奴らはいるが、それはまあ、仕方ない。


しかし、こうやって街でゆっくり過ごしたみて、

そこで気になることがひとつ――


「すごく綺麗な街だな、ここって」


「……ここだけではありません。きっと他の街も、そう感じると思います」


「へー……でも、なんで綺麗って感じるんだろ?」


マナーの悪い冒険者もいるし、ゴミだって落ちている。

だが、それでも何故か綺麗に見えた。


「それは恐らく、路上生活者などが居ないからだと思います」


「へえ、そうなんだ?」


「ええ、生活困窮者はレギュラス教に保護されますから」


保護だと?

俺も言われたことがある言葉。

その言葉を聞いて、俺の足が止まる。


「保護って、もしかして……」


「……ええ、アレックスの想像通りです」


つまり、保護とは奴隷に落ちる事を意味する。


「それって、親が亡くなった子たちも?」


「はい。もしかしたらルカやミリアは、そうして奴隷になったのかもしれません」


「なるほどな。それがレギュラスのやり方か」


「バルフェリア」


バルフェリアの怒りが右手を通して伝わってくる。

ドロリとした、重たい熱を。


「この社会では一度弱者となれば、這い上がるチャンスはほとんど無いじゃろうな。

もちろん、弱者から搾り取るためのこの形なのじゃろうが、全てを奴隷とするのは、何かしらの意図を感じる」


「意図?」


「うむ。その意図を先ずは知らねば。そしてそのために、奴との約束を守らねばの」


確か、レオンから聞かされた。

“一ヶ月後に王都で会おう”と。

あれから四日だから、あと二十六日か。


「カイルよ、ここから王都となるとどの程度かかる?」


「そうですね……急げば一週間。余裕を持てば十日といったところでしょうか」


「アレックスよ」


バルフェリアは真剣に俺に言う。


「あと二週間で、できる限り強くなれ。王都では何があるか分からんぞ」


「分かってる。俺も、保護なんて言葉で子どもを騙す社会は、許せないから」


強くなる。

俺もバルフェリアも、各々の目的のために。


ここは強者が弱者を飲み込む国家だ。

なら、そこは国の在り方に合わせてやる。



改めて強く心に誓い、決意に満ちた足取りで、前を向いて歩き出した。

これにてアレックスが冒険者になるまでのお話、第一章完結です!


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

アレックスとバルフェリアの物語はまだ始まったばかりです。


第二章は4月より開始予定です。

引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。


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