表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から強者を叩き潰す  作者: あきお
第1章 奴隷、地上へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/63

第4話 目が覚めたら女の子でした

※本作にはTS要素があります。

――俺は、夢を見ていた。



「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」


息を切らして、必死に逃げる。

どこかも分からない闇の中で、俺は巨大な獣に追いかけられていた。

右腕は既に、根元から存在しない。


「はぁ、はぁ……」


捕まったら、殺される。

そんな予感とは裏腹に、夢の中特有の浮遊感が邪魔をする。

強く踏み込んでも、一向に前に進まない。


モタモタしている間に、俺はあっという間に獣に追いつかれた。

獣の容赦のない爪の一撃で、俺は糸の切れた操り人形の様に、力なく地面を転げ回る。


「……助けてください」


目が合った獣に、俺は懇願する。

俺の命乞いに、獣はその目をニンマリと、笑うように歪ませた。


「助けてください!」


再びの命乞いに、獣は大きく口を開き、人とも獣とも取れない、折り重なる笑い声を上げる。

生きたいだけなのに、何で笑われなきゃいけないんだ。

……俺が、弱いからなのか?


笑い飽きた獣は、俺を食いちぎるために口を大きく開き、ゆっくりと近づいてくる。


「……死にたくない」


あとは、口を閉じるだけで俺を噛み殺せる。

俺というひとりの命を、食すのだ。

そして口を閉じようとしたその瞬間、突如として現れた人影が、獣を文字通り一蹴した。



バシュウゥゥ……



強烈な飛び蹴りを受けた獣は霧散する。

獣の最後を見届けた人影は、ゆっくりとこちらに振り返る。



綺麗だ――



真っ赤な瞳に長い金髪をなびかせる、美しい女性。

堂々とした態度に抜群のスタイル。

その姿は、どこか人間離れしていると思わせる魅力に満ちている。


俺は無意識に、立ち上がり、その女性に釘付けになる。

俺が見惚れていると、美しい女性は瞳に確固たる意志を携えて、こちらに向かって歩いてきた。


目が離せない。

女性は、手を伸ばせば容易に触れられる、目の前で立ち止まる。


そして、ひと呼吸置いたのち――



バチィン!



俺の左頬を、遠慮なく張り上げた。


『死ぬならちゃんと死なんか! このたわけ!』



「……は?」



―― ―― ――



「う……」


――ここはどこだ?


俺は目を覚まし、辺りを見回した。

見覚えのある台座、石畳。

そして、巨大な狼の死体。



「うわぁ!!」



思い出した。

たしか、罠でここに跳ばされ、黒い宝石を見つけ、巨大狼に襲われて……。


「腕を……喰われた」


眠気は急速に失せ、心臓の鼓動が加速する。

そう、あの痛みが幻覚で無いのなら、俺の右腕はもうそこには無いはずだ。


だが、何故か痛みはない。

もしかしたら、俺はもう死んでいて、それに気づいていないだけなのだろうか?


「あーーーー、くそっ!」


このままでは埒が明かない。

俺は無理やり恐怖を抑え込み、ヤケクソ気味に右腕を見た。


「…………ある」


不思議と、そこにある。

恐る恐る左手で触れると、確かに感触がある。

その感触も本物だ。


しかも、以前のような傷だらけの腕ではなく、つるりと滑らかな、絹のような手触りだ。


ひょっとして、狼に喰われた痛みも恐怖も、このダンジョンの罠が見せた幻覚だったのだろうか……?

かなりリアルではあったが、ダンジョンが見せる幻だ、真実に迫る幻痛が生じても、何らおかしくは無い。


何はともあれ、俺は生きていて、右腕もちゃんと残っている。


「生きてる〜〜〜〜!!!」


俺は大の字で寝転び、大声で生を噛み締める。


あの恐怖の中、生き延びたのだ。

安堵からか、自然と目の奥から涙が溢れてくる。


――だが、ちょっと待て。

何かおかしくなかったか?


「……」


そうだ。

“絹のような手触り”とは???


俺の腕は別段、肌がきれいなわけではない。

実家の農業を手伝ったり、ダンジョン奴隷として働いたり、いわゆる労働者のそれだ。


ハッとして俺は起き上がり、戸惑いを持ちながらも、ゆっくりと右腕に視線を落とす。


傷もなく、ゴツゴツとした無骨な筋肉もない右腕がそこにはあった。

ついでに奴隷の腕輪もない、白い肌。

指先まで透き通る、ため息の出るような美しいフォルム。


……どう見ても女の腕だ。

何でだ?

何で俺に女の腕が生えてるんだ?


「え?え?」


俺はくまなく全身を確認する。

……右腕だけじゃない。

服の上からでもはっきり分かる。


左腕も、脚も。

更にあろうことか、胸には自己主張の強いふくらみすらもある。


「…………え?」


なんだこれ?

これじゃまるで、俺が女になったみたいじゃないか……。


「いやいや、そんな馬鹿な」


俺は自分に言い聞かせるように呟く。

……しかし、俺はここまでに目を背けていたことが、ひとつある。

その現実と、向き合わなければならない時が来てしまった。


「……何だよ、この声は!」


そう。


起きた時から、気付いていたんだ。

だが気付かないふりをしてきた。


そんな筈はないと。


自分の喉から“可愛らしい声”が響いているという現実から。

……そんなもの、認められる訳がない。


「違う、俺は、男だ」


俺は、胸の膨らみを持ち上げて、離す。

その膨らみは、俺の胸部から離れることなく、ポヨンとバウンドする。



「はあ!?本物!?何だよ、何なんだよ!!」



そしてその事実が、容赦なく“この身体は女性である”という現実を俺に突きつける。


「何だこれは?いや、もしかしてこれこそ幻覚か!?」


混乱する頭を必死に落ち着けようと、何とか立ち上がる。

……立ち上がった時の視界が、いつもより低い。


「マジかよ、マジなのかよ!おかしいだろ!?」


頭でもおかしくなってしまったのだろうか?

これが幻覚なら、夢なら覚めてほしい。


「おい!誰か教えてくれよ!」


俺の心からの問いは叫びとなって、部屋中に響き渡る。

そして、虚しくも静寂が訪れる。


……ここには俺しかいないんだ。

答えが返ってくるはずもない。

本当に頭がおかしくなりそうだった。


だが、そんな時――


『ギャーギャーうるさいのう。少しは落ち着かんか!まったく、みっともない男よ……いや、今は女か?』


返事が聞こえた。


鼓膜を揺らすではなく、頭の中に直接響く、女の声が。


高慢そうで、尊大で、しかし疑いようのない“格”を感じさせる美声。



その声は、夢に出てきた女の声にそっくりだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければブクマ・評価・感想いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ