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ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から強者を叩き潰す  作者: あきお
第1章 奴隷、地上へ

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第38話 使徒レオン

※本作にはTS要素があります。

「おや?久しぶりですねぇ?」



悍ましい声が聞こえてくる。


俺はゆっくりと振り向き、呼びかけてきた奴の顔を確認する。


「お前は……」


やはりだ。

あの奴隷商の男。


「お前なんて呼び方、しないで欲しいですねぇ。アレックスさん」


顔を突き合わせた時間は、およそ五分にも満たない短い時間だったが、忘れることなんてできるわけがない。

こいつの狂信のために、あの三人は犠牲になったのだ。


「……何で俺の名前を」


「ふふ、簡単ですよぉ。伝手があるもんでねぇ」


奴隷商の笑顔がより深く、狂気をまとう。

相変わらずその目は笑っていない。


「……で?」


「で、とは?」


「お前の名前だよ……。俺は残念ながら、伝手がないんでね」


こいつはヤバすぎる。

万全ではないとはいえ、バルフェリアとやり合った男だ。

俺が勝てる見込みは……ほぼゼロだ。


何とか隙を見つけて逃げ出したいところだが……難しいだろう。

こっちには手負いのカイルがいる。

ならば、会話から奴の真意と弱点を探りたい。


「不信心なものに名を名乗るのも癪ですが……。まあ、いいでしょう。フェアじゃないですからねぇ。

私の名はレオン。レオン・ヴァルディス。

レギュラス様の使徒がひとり」


「レオンね……。よろしく、レオン」


俺は何事もなかったかのように、柔らかく挨拶を返す。

しかし、レオンはそんな俺を鼻で笑う。


「ふっ。よろしくも何も、あなたはここで死ぬんですよ?」


「は?レギュラス……様が、首都で俺を待ってるんだろ?その命令を破って――」


「私は気づいたんですよぉ。確かに、神託は絶対です。ですが……事故は仕方ないでしょう?

通りがかりの馬に轢殺されるかも知れない。

食中毒で中毒死するかも知れない。

頭の打ちどころ悪くて急死するかも知れない。

……それと同じです。事故なら、仕方ない」


そう言うとレオンは、鞘からゆっくりと剣を抜き放つ。


駄目だ。

こいつには話が通じない。

このままだと本気で殺される。


「待ってくれ」


そこに、ガレスが割って入る。


「……何ですかぁ?」


「こいつは奴隷じゃない、一般市民だ。……奴隷以外をぞんざいに扱うのは、レギュラス教の教義に反するのでは?」


それは、確かに。

奴隷という文化があるのであれば、奴隷以外の人権が守られていて当然じゃないか?


「……確かに、教義にはこうあります。“奴隷ではない、有用な資質を持つ者の人権は守るべき”だと」


「そうだろう、なら――」


「ですが!……それは、神を信じるものに限りです」


レオンの顔から、笑顔が消える。


「その女は、レギュラス様に刃を向けた。あろうことか、レギュラス様から賜ったこの“聖裁”を殴りつけるなどという暴挙に出たんです」


「馬鹿を言うな。先に手を出してきたのは貴様じゃろうが」


「……?何ですか?その小さいのは」


声をかけられ、レオンはようやくバルフェリアの存在に気付いたようだ。


「……おい、余計なこと言うなよ」


「たわけ!覚悟を決めんか!どうあれ奴はお主を殺すつもりじゃぞ。あの殺気で分かるじゃろう」


……目が合った時から感じていた。

ドロドロとした、執拗で決意に満ちた悍ましい殺気。


「……聞こえていますか?」


「ふん、ならば聞くがいい。妾の名は、バルフェリアじゃ」



――瞬間。

剣閃が走る。


「しまっ……!」



ガキイイイィン!!!



「……何のつもりですか」


「まだ、話は、終わっていないぞ……!」


間一髪、ガレスが手斧でレオンの凶刃から俺を守った。


「ガレス……!」


「もう話すことなどありませんよ!……バルフェリア。その名が真実か虚偽かなど、どうでもいい。

レギュラス様に盾突く愚者の名を語るだけで、万死に値する!」


キィン!


二人はお互いの刃を弾き、距離を取る。


「……教義に、そんなものはないだろう」


「は?……私の、レギュラス様の使徒である、この私の言葉こそが教義だろうが!

……ガレスと言ったか。そこを退け。

今なら、お前はまだ不問にしてやる」


お互いに隙を探り合う。


「違うな、教義に反しているのはお前だ。お前の都合のいいように捻じ曲げている」


「……いいだろう。なら、お前も一緒に罰してやる。二人揃って、その首を街に晒してやるよ!」


二人は一瞬でお互いの距離を詰め、幾度となく刃を重ねる。


――強い。

二人とも、実力が伯仲している。


レオンの強さはバルフェリアとの戦いで知っていたが、まさかガレスがここまで強いとは。

これが、スキルを使いこなしているもの同士の戦いか。


「邪魔をするなあっ!」


「落ち着け!無用な殺人をレギュラス教は是としないだろう!」


鍔迫り合いの中、二人はお互いの主張をぶつけ合う。


「アレックス、今のうちじゃ」


「は?逃げろって言うのか!?」


「阿呆!そうでないわ!……このまま我は姿を変質させる」


バルフェリアの突然の提案。

何をする気だ?


「良いか。お主の得物は今、その弓しかない。そして、その弓だけで戦うのは無理があるじゃろう。

じゃから、妾が貴様の籠手になる」


「籠手に?」


「うむ。そうすることで矢に魔力を宿すことができる。更には弓を引く膂力も上がる」


「できたとして、俺の身体に反動が来ると終わっちまうぞ!?」


前回、バルフェリアがレオンと戦った後の反動はかなりキツく、何とか立っているのが精一杯だった。

あれと同じことが起きれば、その瞬間に戦闘不能。

あっという間に殺されてしまうだろう。


「案ずるな。幸か不幸か、スプリガンに魔力を吸われた直後じゃ。そこまでの魔力は出しきれん。それに――」


「それに?」


「お主に通せる魔力量は、微量ながら増えてきておる。出会った頃のままならば、あのレオンとやり合った後の反動は、あんなものではなかったはずじゃ」


……どうする?

と言っても、実際は選択肢など無いに等しい。

生き残るには、やるしかない。


「……お前は大丈夫なのか?」


「ふ、妾を信じよ」


「……分かった。信じるぞ」


「まかせよ!」


そう答えるとバルフェリアは光輝き、形状を変え、俺の右手に絡みつく!


「ぐっ!」


ドカッ!


それと同時に、俺のすぐ近くの木に、ガレスが吹き飛ばされて強かに背中を打ちつけた。


「ガレス!大丈夫か!」


「ああ。これぐらい、どうと言うことはない」


ガレスは口の端に滲む血を乱暴に拭うと、手斧を構え直す。


「何だその光は?何をしようとしている!」


間髪入れずにレオンは俺に向かって飛びかかる!

やばい。

まだバルフェリアは形になっていない!


ヒュゴッ!


ガレスはカウンターで思い切り手斧を投げつける!


「!!!」


ガイイイィン!!


レオンは咄嗟に防ぐが、自身の推進力と手斧の威力に、後ろへと大きく弾かれる。


「この不敬者どもがあ!!」


レオンの顔にはもう、張り付いた笑顔など微塵もない。

自分の信じるものを汚されたという、憤怒一色だ。


そして、その間にバルフェリアはどうにか変形を完了させ、右手の籠手となった。

その姿は神々しさと、そこに宿る強大な魔力をひしと感じさせる。

幸い、反動の痛みはまだない。


「これなら……!」


やれるかも知れない。

いや、やれる。

そう感じた。


「貴様はどこまで邪魔をするんだ!」


「お前が落ち着くまでだ!」


ガレスのその言葉に、レオンは動きを止めた。


「……もういい。私だけで神罰を与えたかったが、思わぬ邪魔が入ってしまった。

なら、こちらも二人で行かせてもらう!やれ!」


レオンが言い放った直後、ガレスの足元に異質な魔力の流れを感じた。

だが、考えている暇はない!


「ガレス!上に跳べ!」


声に瞬時に反応し、ガレスは上へと跳躍する。

その瞬間、足元の影が質量を持ち、ガレスがいた場所を削り取った。


「これは……!」


「チッ、小娘の相手は任せましたよ」


影の中から現れたフードの男がレオンに声を掛け、ガレスと対峙する。


「そのフード……暗部のものか」


「……」


ガレスの問いに、男は答える事なく無言で返す。

レオンもフードの男も隙がない。

俺とガレスは完全に分断されてしまった。


「さて、これでようやく、神罰を与えられますねえええ!」



その瞳には狂気が宿る。

狂気は凶刃となり、俺へと襲いかかってくる!

読んでいただきありがとうございます。

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