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ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から強者を叩き潰す  作者: あきお
第1章 奴隷、地上へ

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第37話 久しぶりですねぇ

※本作にはTS要素があります。

「……アレックス様、ガレスさん、ご迷惑をおかけしました。」



俺とカイル、ガレスの三人は、あれから即移動を開始。

初日にキャンプをした跡地へ向けて歩いていた。


「いや、カイルが無事でよかったよ」


「まだ力も入らんだろう。しばらく休め」


多少回復はしたものの、カイルはまだ全身に力が入らないため、ガレスが背負って運んでいる。

ちなみに荷物も担いでくれている。


「――さて」


ガレスは、隣を歩く俺に声をかけ、


「説明してもらうぞ」



……やはり忘れてはいないか。



『妾を見せれば良かろう』


「そりゃそうだけど……」


確かにバルフェリアの言う通りではあるが、その後にガレスがどんな反応を示すのか、全く想像がつかない。


「……そのブツブツ喋っているのも、独り言ではなく、“何か”と話しているのか」


「げ」


バレてる。

一流の冒険者ってのはみんな感がいいんだろうか?


「お前は観察をする目を持っているが、自分が観察をされる想定が抜けている」


……やはり、俺は分かりやす過ぎるらしい。

覚悟を決めて、バッグから柄を取り出した。


「それは?」


「……なあ、急によく分からないものを取り出したんだぞ?警戒しないでいいのか?」


「お前から殺気を感じない。警戒の必要はない」


「……そうか」


確かに傷つける気はひとつもない。

でも褒められてるのか貶されてるのか、よくわかんねえだろ、その言い方。


「あと、それがお前の素か?」


「……あ」


いつの間にか、女言葉を忘れていた。

俺は咳払いでお茶を濁し、話を進める。


「こいつを使って、見せたいものがある」


俺は気を取り直し、柄を右手で握りしめる。

そしてバルフェリアに魔力を通すことを促す。


「頼んだ」


『あいわかった。行くぞ』


右手に魔力が集中するのを感じる。

そして、柄がジワリと熱を帯び――


ボンッ!


柄を中心に煙が立ち込める。

それでもガレスは、微動だにしない。

感覚が麻痺してるのか、それとも神経が図太いのか……。


「ガレスよ、お初にお目にかかる」


柄はミニバルフェリアに姿を変えていた。

その姿を見たガレスに、僅かに緊張が走る。


「……あなたは?」


「妾の名はバルフェリア――」


その名を聞いた瞬間、ガレスは大きく飛び退き、長槍をこちらに向けて構える。


「バルフェリア、だと!?」


「如何にも」


バルフェリアの返事を聞いたガレスの表情は、より険しくなった。

今にも飛びかかってきそうな殺気だ。


「ちょちょちょ、ちょっと待ってくれよ!急に何だよ!」


「お前は知らんのか、あのダンジョンの名を」


そう言えば、聞いたことがなかった。

そもそも他人との接触も禁じられていたんだ。

知るわけがない。


「バルフェリアダンジョン。それがダンジョンの名だ」


バルフェリアの名を冠したダンジョン。

そりゃあ、バルフェリアが封印されていたんだし、そんな名前でもおかしくない。

だが、それだけでここまで警戒されるものか?


「くく、妾の名を付けておったとは。レギュラスめ。して、ガレスよ。貴様らには妾はどのように伝わっておるのじゃ?」


「――かつて、神に刃向かった大罪人がいた。その大罪人は神の裁きを受け、自らと同じ名のダンジョンの、奥深くへと封印された。

そしてもし、その封印が解かれた時には、大いなる災いが降りかかるだろう、と」



大罪人。



確かにバルフェリアは、得体の知れない奴ではある。

だが、悪い奴ではないってのが、一緒に過ごしてきた俺の感想だ。


……まだ見ていない一面があるのかも知れないが。


「なるほどな。で?神とやらの名はレギュラスで間違いないか?」


「……その通りだ」


ガレスの返事を受けたバルフェリアは、突然大声で笑いはじめた。


「ハーッハッハッハッハッハッ!!」


「おい!何だよ!」


「ハッハ、これが笑わずにいられるか!ハハハハ!」


心の底からおかしいんだろう。

バルフェリアの高笑いはしばらく止まることはなかった。

俺と、毒気を抜かれたガレスは、笑いが収まるまで呆然とその場に立ち尽くしていた。



――――――



マナヴェインの森の入り口。

そこに、レオンとフードの男が立っていた。


「……この森に、奴らがいるんですかぁ?」


「間違いないかと。冒険者ギルドからの確かな情報です」


「さすがは暗部。情報収集には長けていますねぇ」


レオンは満面の笑みでフードの男の仕事を讃える。


「そのような……勿体無いお言葉。私の仕事は、ターゲットに“罰”を与えることですから」


「ふふ、頼りにしてますよぉ?……それでは、“罰”を与えに行きましょうかぁ」


「お待ちください。ただ、監視官も一緒の筈です」


引き留めたフードの男に対して、レオンの視線の温度が急速に下がる。


「神に不敬を働く輩に与するものには、“罰”がくだるのも仕方ないんです。」


「ですが……」


「いいですか?あくまでも与するなら、です。安心してください」


レオンはフードの男にそう耳打ちをすると、返事を待つことなく、森の中へと足を踏み入れる。


「さあ、行きますよ……異端者退治です」


そして、今にも射殺さんほどの殺意を持って、森の奥を睨みつけた。



――――――



「――で、今に至るってとこだ」


「うむ。概ね説明通りじゃ」


俺はガレスとカイルに、これまでの経緯をこと細かに説明した。


ダンジョン奴隷だった事。

バルフェリアとの出会い。

ダンジョン脱出の軌跡。


そして、バルフェリアの目的。


「まさか、そんな事が……」


「……にわかには信じ難いが」


「見た目と同じで、頭の中身も堅いのう」


……余計なひと言は慎んでくれ、バルフェリアさんよ。

ガレスの顔つきが、また険しくなってしまったじゃないか。


「私は、バルフェリア様の名前を聞いたときから、もしかしてとは思っていましたが……あまりに無謀ではありませんか!?」


対して、カイルは狼狽えている。


「言ってしまえば、この国に叛旗を翻すのと同義ですよ!だって……」


「何度でも言おう。妾は、レギュラスを打ち倒す」


バルフェリアはさも当然、とでも言いたげにさらりと返す。


「あなた達に救われた身ですし、私も奴隷の身である以上……その……レギュラス教は正直……」


カイルの声は徐々にトーンダウンし、最後は何を言っているのか聞こえなかった。


無理もない。

俺はともかく、ガレスの目もある。

はっきり言えないのも仕方がないだろう。


「妾はな、レギュラスのやつが創り上げたこの国が気に入らんのよ」


俺とカイルの言葉を代弁するかの様に、バルフェリアは、はっきりと言ってのける。


「妾を騙し討ちにして、ダンジョンに封じた。

挙げ句、そんな姑息な男が三百年後には神を名乗るなど、タチの悪い冗談じゃ」


「……」


国教であり、国の神に対してここまでの事を言っているのに、ガレスは反論もなく、ただ黙って聞いている。


「っていうか、監視官の前でここまで言っちゃっていいのかよ?」


「構わぬ。遅かれ早かれと言うやつじゃ。それに、スプリガンの魔力吸収からの自壊を見られたのじゃ。誤魔化す方が怪しく映るわ」


「それは、まあ」


うん確かに。

だが、こんなとんでも話を間に受けてくれるものだろうか?


ちょっと話を変えておこう。


「で、俺の当面の目標は、冒険者になって金を手に入れて、自由を得る事なんだ」


カイルをチラリと見る。

その目には、はっきりと困惑が見て取れる。

……本当はカイルとも一緒がいいんだが。


だが一般的な視点で見れば、俺とバルフェリアは、恐らくテロリストに該当するだろう。

そんな危険人物とこれからも一緒に、ってのは躊躇しても仕方がない。


「ひとつ聞きたい」


ガレスが急に口を開いた。


「アレックス。お前の言う自由とは何だ?」


「え、俺?」


バルフェリアではなく、俺への質問だった。


「そうだ」


ガレスの目は真剣そのものだ。

バルフェリアではなく、俺の思想を聞きたい。

そんな目をしていた。


「そう、だな……」


俺は考えをまとめながら、ゆっくりと話し始めた。


「俺の住んでた村はさ、この国の……どこにあるかも分からないような田舎にあったんだ。

そこはのどかで、何にもないけど、みんなが対等でいられる村だった」


そう、あそこには奴隷なんてものは無かった。


「いま思うと、奴隷制に嫌気が差した人たちが集まってできた村だったんじゃないかな、って思うんだよ。

だって、俺は物語の中でしか奴隷なんて知らなかった」



だから俺は――



「だから俺は、みんなが対等に笑っていられる場所を作りたい。他者に力で押さえつけられることのない場所を。

……それが自由だって、俺は思う」


「……そのためなら、国にも逆らうと?」


「本当はさ、俺はもう死んでるようなもんなんだ。

バルフェリアに繋いでもらった命だから、こいつに報いたいし、嫌なことは嫌だって、言いたいんだよ」


何だか照れ臭くて、顔を逸らしてしまう。

ちょっと格好つけすぎてしまったような……。


「でも、監視官の前でこんなこと言っちゃって……俺、どうなりますかね?」


「急にへりくだるな、阿呆」


「だってさ、ちょっとカッコつけすぎたかなって……」


「阿呆じゃのう。その信念を恥じることはない。二人の目を見よ」


バルフェリアに促され、二人に顔を向ける。

二人の目の奥に、何かが宿った。

そんな輝きが見えた気がする。


「……お前の処分は、追って伝える。とにかく、スプリガンの樹皮の採取。これ自体は達成でいいだろう」


「え?」


「あんな浅い場所でスプリガンが多数出現することは想定外だ。よって、俺の手助けによる減点は無いものとする。一対一の技量は不意打ちを含め申し分ない」


……ガレスはいつになく饒舌だ。


「……それって?」


「ああ、無事戻れたら合格でいいだろう」


ガレスにも思うところがあったのだろう。

俺たちのことを見て見ぬふりをしてくれる、ってことでいいんだよな?


「あ、ありがとうございます!」


俺は喜びのあまり、思わずガレスに抱きついた。


「……年頃の娘がそんな事を軽々しくするな」


「すいません、思わず……」


「アレックス様、私はまだ怖いです。ですが……」


「いいよ。無理しないで。どうしたいか決めた時に、また教えてくれよ」


カイルは俺の目を見ながら、無言で頷く。


……さて、そうと決まればいつまでもここにいるのは勿体ない。

早く帰って、依頼を達成しよう!


「よし、じゃあそろそろ――」


その時。


「おや?久しぶりですねぇ?」



悍ましい声が、聞こえた。



読んでいただきありがとうございます。

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