表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から強者を叩き潰す  作者: あきお
第1章 奴隷、地上へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/59

第34話 油断の代償

※本作にはTS要素があります。

俺は息を殺し、スプリガンとの距離を詰めた。


その距離、およそ二十メートル。

これ以上近づくと、俺の存在がバレ兼ねない。


「さて、と」


スプリガンの弱点は何処だろうか?

全身が厚い樹皮に覆われているように見えるが、問題なく矢は突き刺さってくれるのだろうか?


しかし――


『お主は硬そうな魔物に縁があるのう』


「……奇遇だな」


俺が思っていたことを、バルフェリアが代弁してくれた。

スライムもゲル部分には斬撃が効かなかったし、ほんと攻撃が通りにくいやつばっかりだ。


「なあ、スプリガンって弱点は?」


『甘えるでない。ちゃんと頭を使って観察せんか。お主の武器を磨くのじゃ』


ぐう。

最近は何かと手助けをしてくれたが、甘くはないようだ。

気を取り直してスプリガンを観察する。


――木に擬態をしているのか、ほとんど動かない。


太い枝に見えるのは腕、二又に割れて見える幹は足。

そして上部の、僅かに樹皮が剥がれて見える場所が三箇所。

恐らく、目と口だ。


「あそこが一番脆そうだな……よし」


俺は弓を引き絞り、スプリガンの目へと照準を合わせる。


――スゥ。

ゆっくり息を吸い、止める。

焦りはない。


ヒュッ


引き絞った弦から手を離し、矢が射出される。

目を狙ったが、そうそう上手くはいかない。

その少し下、人間で言えば頬辺りに突き刺さる。


「〜〜〜〜〜!!」


音にならない音を上げ、突然の出来事にスプリガンはたたらを踏む。


その隙を逃さない。

俺は迷いなくスプリガンとの距離を一気に詰める。


「コイツでどうだっ!」


右手で短剣を逆手に持ち、奴の左目へと思い切り突き立てた!


――やはり、樹皮のない部分が弱点だったか。

スプリガンは声を発することもなく、静かにその場へ倒れ込んだ。


「よし」


『よし、では無いわ。あの距離で狙った場所に当てられないようでは、まだまだじゃ』


「仕方ないだろ!弓矢なんてはじめてだし、スキルも無いんだからよ」


『そこは努力でまかなえると、お主はもう知っておるじゃろう!ダンジョンと同様、油断せず精進せよ』


……それは確かに。

この依頼が終わったら、ちゃんと弓の練習をするか。


「ま、とりあえず二人を呼ぶか」


俺は大きく手を振り合図をする。

ガレスがこちらに合図を返して、二人は俺のところまで移動してきた。


「これがBランク相当ですか?随分余裕だっ…でしたよ?」


あぶねえ。

バルフェリアとのやり取りのつもりのまま、口を動かすところだった。


「それは不意打ちが出来たからだ。正面からやりあえば、コイツは厄介だぞ。……しかし、今の身のこなしは見事だった」


「あ、ありがとうございます」


おお、素直に褒めてくれた。

カイルに嫌な態度を取ることもないし、ガレスって、そこにあるものを素直に評価できる男なのかもしれない。

さすが、監視官に指名されるだけのことはある。


「アレックス様。あとは樹皮を持ち帰るだけですね」


「そうね。早く剥いじゃいましょう」


俺は短剣をスプリガンの樹皮の隙間に刺しこむ。

が、硬くてなかなか刺さりきらない。

バルフェリアの魔力を使えれば早いんだが、この短剣は魔力回路なんて備わっていない安物だ。


「貸せ」


もたついている俺にしびれを切らしたのか。

ガレスは俺から短剣を取り上げて、樹皮の隙間へ短剣を突き刺した。

俺の時とは違い、軽々と刺さった短剣を手際良く動かし、あっという間に樹皮を切り取っていく。


「……すごいな」


体格は全く違うものの、ここまでの手際の良さは相当なものだ。

恐らく、ガレスのスキルによるものだろう。


『羨ましいか?』


「そりゃあ……でも、俺は俺で頑張るよ」


確かに、俺に有用なスキルがあればもっと違った。

と言うか、奴隷にもなっていなかっただろう。

でも無いものねだりをしても仕方がないし、無かったからこそ、バルフェリアにも逢えたんだ。


「次はちゃんと、対象のスキル持ちと一緒に来るんだな」


「はい」


俺はガレスから、スプリガンの樹皮を受け取りながら答え、それをカイルの背負うバックパックにしまい込んだ。


「剥ぎ取りはガレスさんにしてもらったけど、これで合格でいいんでしょうか?」


「まあ、そうだな。お前はBランクのスカウトとして、充分な力を持っている」


「よかったです。じゃあ、帰りましょうか」



ドサッ



何かが倒れる音がする。

音の方向を見ると、そこにはカイルが倒れていた。

青白い顔で、虚ろな目をしている。

ただ事ではないと、ひと目で分かる有様だ。


「!?カイル!」


俺とガレスは、急いでカイルに駆け寄る。

幸い外傷は無く、息もある。

しかし、全身から力が抜けたかのように、動くことすらままならない。


「……スプリガンだ!」


まだスプリガンが残っている?


「どういうことですか!?」


「人の精気を奪うのがスプリガンの魔法だ!」


俺は急いで周囲を見回す。

木々の間に一、二……多数のスプリガンが確認できる。

一体倒して油断していたんだ。

俺たちはいつの間にか、スプリガンに囲まれていた。


「複数のスプリガンに囲まれています!」


「こんな浅い場所にスプリガンが群れを成しているだと!?」


どうする?

どうすればこの状況を打破できる?

カイルを見捨てるわけにもいかないが、俺の腕力では難しい。


『アレックス、お主が囮になるしかあるまい。ガレスの退路を作るのじゃ!』


――そうだ。

ガレスにカイルを運んでもらうしかない。

バルフェリアの一言で覚悟が決まった。


「ガレスさん!カイルを連れて退いてください!私が道をつくります!」


「だが、お前は――」


「大丈夫ですから!」


俺は、退路を塞いでいるスプリガンに矢を放つ。


ヒュンッ!


その矢にスプリガンが怯み、小さな隙ができた。


「今です!」


俺の合図で、カイルを担いでガレスが飛び出す。

スプリガンもタダでは逃すつもりはないらしく、ガレスへ手を向ける。


『魔法を放つ気じゃぞ!止めよ!』


「おう!」


ガレスに向けた手に向けて、俺は間髪入れずに更に矢を放つ!


ガッ!


放った矢がスプリガンの手を弾く。

スプリガンはガレスを捉え切ることができず、ガレスとカイルは、包囲を無事に突破することに成功した。


「必ず戻る!それまで死ぬなよ!」


ガレスはその言葉だけを残して、そのまま来た道へと走り去った。

その姿を見届けたあと、スプリガンたちは一斉に俺へと敵意を向ける。


「さあて、どうやって生き伸びようかな……?」

読んでいただきありがとうございます。

よければブクマ・評価・感想いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ