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ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から強者を叩き潰す  作者: あきお
第1章 奴隷、地上へ

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第32話 監視官ガレス

※本作にはTS要素があります。

「俺が監視官のガレスだ」



まだ人通りの少ない早朝。


街の北門の前に、俺とカイルが向かうと、ひとりの屈強な男が俺たちを待ち構えていた。

背は高く、体も筋肉で厚みがある。

体中に刻まれた傷跡が、歴戦の戦士であることを容易に想像させた。


「私はアレクサンドラ。アレックスと呼んでください。こちらは、ポーターのカイル」


「……カイルです。よろしくお願い致します」


カイルの視線は、どこか落ち着かない。

立っているだけで威圧感が漂う男の前だ、無理もない。

単に冒険者にはいい思い出がないから、かも知れないが。


「荷物持ちが必要とはな。軟弱なことだ」


ガレスはそう断じ、俺たちをジロジロと観察する。

まるで“お前らにはこの依頼は無理だ”とでも言いたげな表情だ。


「何せ、まだ仮なもので。ご指導、よろしくお願いします」


俺の言葉にガレスは“フン”と鼻を鳴らす。

……こちらを明らかに下に見ている。



――――――



話は少し遡り、前日。


「では、これが支度金です」


俺が依頼を受諾すると、オスカーは支度金をポンと渡してくれた。

その金額は、今まで手に取ったことのない額で、結構びびる。

支度金を受け取った俺は、諸々の準備を整えるために、各店を回る事にした。


俺たちは手始めに、衣料品店で服を見繕う。

まともな衣服を着ていなければ、方々で舐められてしまうからだ。

俺は自分のセンスに自信がないので、店員に揃えてもらおうと思ったが、


「それなら、僕に任せてくれませんか」


とカイルが言うので、任せてみる事にした。


――するとどうだろうか。 


あんなにみすぼらしい格好だった俺が、まるでいいとこのお嬢様の様だ。


「いかがですか?」


カイルも、もちろん着替え済みだ。

従者として申し分のない格好でにこりと微笑むその顔は、非常に爽やかである。

くっ、笑顔がまぶしい!


これだけ見違えたんだ。

大層な金額になるだろうと思っていたが、実際はかなり安く済んだ。

これはカイルの見立てのおかげだった。

それでも、俺が払ったことのない金額だったけど。


長袖を選んだから、カイルの腕輪も隠せて何よりだ。

あ、もちろんスカートじゃないからな?

あれではまともに動ける気がしない。


ルカとミリアには悪いが、この依頼が終わるまで二人には我慢してもらおう。



そして、次に向かったのは武器屋だ。

そこでは、


『アレックスよ、お主の武器は短剣と弓がオススメじゃ』


「え。弓矢なんて一度も使ったことないんだけど……」


『ダンジョンで思うたが、お主は器用で目も良い。だが経験が足らぬ。故に、遠距離で近づくことなく魔物を仕留められる武器の方が良い』


バルフェリアからこんな提案を受けた。

まあ一理あるか。


『弓も経験さえ積めば、じき慣れるじゃろう。結局使わなければ覚えもせん。短剣は保険じゃ』


バルフェリアの言うことはもっともだ。

と言うわけで、俺は今の小柄さでも取り扱えるショートボウと矢、それに矢筒と短剣を買い揃えた。

あ、カイルの護身用の短剣も。


「カイル。悪いんだけどさ、大きな荷物は持ってもらっても構わないかな?」


「はい、もちろんです」


雑貨屋では大きめのバックパックにランタンなど、長期の行動に必要になるであろう必需品を取り揃えた。


最後に食料品店でパン、干し肉、ナッツなどを購入。


『また干し肉か……うまいが、少々飽きてきたぞ』


「そこは我慢してくれ」


――こうして、事前準備は無事終わった。

気付けば支度金も残りわずか。

これ、前金をもらってなければ普通に詰んでたな。


「アレックス!お帰りなさい!」


すっかり日も暮れ薬屋に戻ると、ルカが満面の笑みで出迎えてくれた。

……その顔には“不安だった”と書いてある。

見捨てたりはしないさ。


「あ!いいなー新しい服!……バルフェリアちゃんも、お帰りなさい」


服を羨ましがりつつ、ミリアがこっそりとバルフェリアに挨拶をしてくれる。

バルフェリアの満更じゃなさそうな感覚で、右腕がなんだかむず痒い。


「おや、二人ともお戻りですか。」


奥からオスカーが顔を出す。


「よく似合ってますよ。いやあ、この奴隷たちは優秀ですね。店がすっかり見違えましたよ」


「……ルカとミリアですね」


「?ええ。ですから、あなたの奴隷ですよね」


……奴隷と言う言葉はやはり引っかかるが、今はまだ仕方ない。

しかしオスカーの言う通り、俺たちが出る前と比べると、店内はすっかり片付いて綺麗なものだ。


『む?なんかいい匂いがするのう!?』


確かに、温かい、いい匂いが漂っている。


「俺、料理得意でさ。シチュー作ったんだ!」


「先に食べたかったのに、お二人が戻るまで待ちたいと言って聞かなかったんですよ。おかげですっかりお腹が空いちゃいました」


「じゃあ、ご飯にしましょうか」


そうして、みんなで食べたルカのシチューは本当にうまかった。

久しぶりの温かい食事ってのもあるが、腕がいいんだろう。

お世辞抜きにめちゃめちゃうまかった。

うまさに悶えるバルフェリアの声は、騒音として頭に響きっぱなしだったが、それもなんだか楽しかった。


「そうそう、明日は早朝から森には向かってもらいますから、早めに休んで下さいね」


「はい、わかりました」


オスカーからの忠告を素直に聞き、早めに部屋へと戻り、寝床につく。


そこそこの広さの部屋に、ベッドが三台。

俺とカイルはそれぞれ一人で。

ルカとミリアはペアでベッドに入る。


柔らかいベッドはありがたい。


が、今までと環境が違いすぎて、俺はなかなか寝付けない。

三人は、肉体的にも精神的にも限界だったんだろう。

ベッドに入ると、すぐに泥のように寝入ってしまった。


『眠れんのか?』


「……ああ、まあね」


慣れないベッドだから、ってだけじゃない。

頭を掠めるのは、あの冒険者たちの死。

確かに許せない奴らだった。

でも、あんな殺され方をしていいはずがない。


それを実行したあの奴隷商。


あろうことか、バルフェリアの一撃を受け止めた。

確かに全力は出せていないだろう。

しかし、それでもだ。


「なあ、バルフェリア」


俺は小声で話しかける。


『なんじゃ?』


「あの奴隷商だけど――」


『うむ……あやつからは、レギュラスの魔力を感じた』


やはり。

尋常でない、普通の人間ではあり得ない力。

あれは魔人の力の一部だったのだろう。


「あいつが、レギュラス?」


『それはない。魔力は感じたが、奴自身はレギュラスではない。』


「じゃあ、関係者?」


『どうじゃろうな。まだなんとも言えぬが――』


俺が思っていたことをバルフェリアが代弁する。



『――また、近いうちに会うことになるじゃろう』



――――――



「いいか。俺はあくまで監視官だ。お前たちが、依頼を無事に達成できるかを見せてもらうだけだ。手助けはしない」


どうやら先達からの“ご指導”は頂けないらしい。


「――だが、お前たちの命が危険だと判断した場合には、手を貸そう」


お?なかなか優しい?


「ありがとうございます。それは心強いです」


「勘違いするな。俺が手を貸さなければならないと言うことは、お前たちの依頼が失敗することを意味する」


「そうなんですか?」


「当たり前だ。依頼を達成できん奴を、冒険者にするわけにはいかん」


それはまずい。

失敗イコール、ポーションを売らない上に、オスカーに無償で渡すことになる。

……もし支度金の返還まで求められたら、目も当てられない。


「そうならないよう、善処します」


「そうしろ。スプリガンの生息地は、森に入って三日ほどのところにある。地図とコンパスは渡すから、お前たちが先導しろ」


……俺、地図とか読めないんだけど。

どうしよう。


「あの、僕が見ましょうか?」


カイルが、おずおずと挙手してそう告げた。

見るとガレスも“やれやれ”といった様子で肩をすくめている。

地図とコンパスをカイルに渡すと、


「アレックス。表情に出過ぎるので、もう少し気をつけてください」


カイルは俺に、小声で耳打ちしてきた。

……そんなに分かりやすいかなあ?


「ピクニック気分か?……いいから行くぞ」


ため息混じりのガレスの言葉を皮切りに、俺たちは北門をくぐり、街を出る。


「……これが冒険者としての、第一歩なんだ」


弱いもののままではいたくない。

そういう意味では、これが本当の第一歩。



――そしてこの冒険から、俺と“奴”との因縁が、始まったのだ。

読んでいただきありがとうございます。

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