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ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から強者を叩き潰す  作者: あきお
第1章 奴隷、地上へ

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第31話 命を担保に

※本作にはTS要素があります。

「――という事で、私たちは今、持ち合わせがないんです」


俺はオスカーに、事実と嘘を織り混ぜて、掻い摘んで説明をした。

バルフェリアのことや、ダンジョン最奥からの脱出の話は控えてさせてもらった。

流石に怪しすぎるし、女になったとかバルフェリアとか、ポーションどころか俺が研究対象になりかねない。


「なるほど。それで……ええと」


「アレク、サンドラです」


俺は、本名であるアレクサンダーをもじった偽名を使うことにした。


「アレクサンドラさんたちは、ダンジョンの罠で装備も手持ちのお金も失ってしまったと」


「はい。ですから、装備品の準備に宿代なども含めた、支度金のようなものを頂けると助かります」


ダンジョンなら割とあり得る話、だと思う。

どうにか信じてもらえるといいが……。


「分かりました。いいでしょう」


俺の心配などよそに、納得したのか、オスカーはあっさりと俺の説明を受け入れてくれた。


「え、いいんですか?」


「え?信じて欲しくないんですか?」


オスカーはイタズラっぽい笑みを浮かべて聞き返してくる。

どう思ってるか知らないが、この話をこれ以上深掘るのはやめておこう。


「いえ、ありがとうございます!」


「では、支度金は用意させて頂きます。あと宿についてですが……うちの空き部屋を使ってもらって構いませんよ」


これは願ってもない申し出だ。

正直、宿を借りるにしてもこのままだと怪しまれる可能性は否めない。

その手間を省けるなら、省きたいのが本音だ。


「ありがたいですが……本当に?」


「その分、あなた達にお渡しする金額も減りますし。あと、僕の方からもひとつお願いしてもいいですか?」


「何でしょう?」


「あなたの奴隷のどなたでも構いません。部屋を貸し出す間、雑用をお願いしたいんです。見ての通り、ちょっと散らかってまして」


……ちょっと?

店内、パッと見は小綺麗に見えるが、よく見るとうっすらと埃が積もってる箇所がある。

バックヤードからも、ガラクタのようなものがちらりとのぞいていて、お世辞にも綺麗とは言えない。


俺は三人を見比べる。

そもそもルカとミリアは、外に帯同させるには若すぎると思っていた。

今後どうするかは考えるとして、ここにいる間は雑用をしてもらってもいいかも知れない。


「……分かりました。ただし、条件があります」


「条件?」


「ええ、奴隷だからといって、不当に痛めつけたり貶めたりしない、と約束してください」


オスカーは、話が分かる奴だ。

だが、だからと言って奴隷にどんな感情を持っているのかは分からない。

奴隷に人権を認めてない国だからこそ、この約束は譲れない。

絶対条件だ。


「そんな事ですか。安心してください、僕は奴隷をいじめる趣味はありませんから」


またしても、あっさりと受け入れてくれた。

オスカーって、この国ではかなりの変わり者なのかも知れない。


「では決まりですね。時間も惜しいですし、今から早速冒険者ギルドに行きましょう」


「じゃあ、ルカとミリア。二人はここに残って雑用をお願い。

カイルは荷物持ちとして一緒に来てもらっていい?」


三人はそれぞれ文句を言うことなく頷き、返事を返す。

人目のあるところでは、主人と奴隷の立場を貫くと決めた。

みんなで決めた、俺たちのルールだ。


「じゃあ行きますよ。雑用のお二人は、掃除と食事の用意をお願いしますね」


そう言うとオスカーは、早々に外出の準備をはじめた。



――――――



冒険者ギルド。


俺、カイル、オスカーの三人はその建物の前に着いた。

ここまでバルフェリアはずっと黙ってくれている。

バレると面倒と、考えてくれてもいるんだろうが……マジですまない。


「ええと……この格好で入っていいんですかね?」


俺の格好はと言えば、まだボロのままである。


「別にいいでしょう。僕も早く済ませたいので、申し訳ないですが、服や装備は依頼受諾のあとで整えて下さい」


オスカーは気に求めていない様子で冒険者ギルドの入り口を潜る。

お金を払ってもらう立場である以上、ここは従うしかないか。

俺は頷き、先を歩くオスカーについて行く。


ギルドの中は広々としている。

しかし、にも関わらず室内が狭く感じるぐらいには、多くの冒険者たちでごった返して、賑わっていた。

テーブルを囲んで酒を飲んでいるものたちや、掲示板の前で依頼について話すものたちなど、さまざまだ。


「さ、こっちです」


オスカーは先導して、スルスルと合間を縫ってカウンターへと進んで行く。

俺たちはオスカーを追って冒険者の間を抜けていくが、俺たちとすれ違う冒険者は、ジロジロと好奇の視線をこちらに向ける。


「……」


俺とカイルはその視線を無視し、そそくさとオスカーの後についていく。


「どうも、こんにちは」


「あら、オスカーさん。また材料のご依頼ですか?」


オスカーは、カウンターで受付嬢らしき女性に声をかけた。

“また”ということは、頻繁に依頼を出しているのだろう。


「ええ。今回の依頼は、彼女らに直接出そうと思いまして」


「……彼女たちは?冒険者なんですか?」


「いえ、まだ。ですので、仮冒険者証を出して欲しいんです。安心して下さい、実力は保証しますから」


受付嬢は目を丸くしながら、オスカーの話を聞いていた。


そりゃそうだ。

聞いてみれば冒険者でもない、ボロ服を着た小柄な女と奴隷が一名。

実力の程は不明。

はっきり言えば、弱そうにしか見えない。

そいつの実力を保証するとか言うんだ、疑いもするだろう。


「はあ、オスカーさんがそう言うなら……では、依頼書を作成しますので、こちらに内容の記載をお願いします」


受付嬢はオスカーに記入をうながすと、別の準備か、カウンターの裏へと消える。


「あ、そうそうアレクサンドラさん」


「アレックスでいいですよ」


「そうですか?では、アレックスさん。もしあなたが死んでしまったり、期日内に帰ってくることがなければ、あのポーションは僕がもらってもいいですか?」


急にぶっ込んできやがった。

確かに俺が死んだら、あのポーションを売る意味もなくなる。

ただ、俺にとって意味がなくなるだけで、カイルたち三人にとっては財産に等しい。

それをオスカーに譲渡するのは――


『構わぬ。アレックスよ、受けろ』


俺がどうするか迷っていると、バルフェリアの声が頭に響いてきた。


『お主は死なさん。ま、もしお主が死んだとしても妾は生きておる。つまりどうあれ必ず帰ってくるわけじゃ』


そうだ。

もし俺が死んでも、その時はバルフェリアがこの身体の持ち主になるだけだ。

……死ぬ気はないけど。

だがそう思うと、迷いが一気に晴れた。


「それで構いません。必ず戻ってきますけど」


「フフ、期待してます」


オスカーが依頼書の記入を終えたようだ。

それとほぼ同時に受付嬢が戻り、依頼書の内容を確認する。


「……え、オスカーさん?本当にこの内容でお間違いないですか?」


「ええ、間違いないですよ?」


「……少々お待ちください。マスター!」


受付嬢が奥に向かって大きな声で呼ぶと、がっしりした体格の、真面目そうな壮年の男性が奥からやってきた。


「マスター。これを」


依頼書の内容を、マスターと呼ばれた男性が改めて確認する。


「オスカーさん。この内容は、冒険者でもない女性ひとりが受けるには荷が重いと思いますよ?」


「そんなことありませんよ。実力は折り紙付きです」


オスカーは余裕の笑みを崩さずにそう答える。

しかし受付で止められるなんて、どんな内容の依頼を書いたんだ?


「ふーむ……。では、百歩譲って、監視官をつけてもよろしいですか?」


「それはそっちが問題なければ、僕は構いませんよ」


マスターはオスカーの返答に頷く。

そしてこちらに向き直り、


「今回の依頼だが、きみとその奴隷だけで受けるのは危険だと判断した。その為、君たちがまともに達成できるのかを監視する冒険者をつけさせてもらう」


なるほど、やっぱり怪しいよな、俺。


「だが、監視のみではなく、きみたちに危険が及んだ場合、助ける役目も担っているので安心して欲しい」


あ、そうなのか。

結構優しかったりするんだな。



「それで依頼の内容だが。

ここから三日ほど森を西に進んだ場所で採取できる、スプリガンの樹皮を取ってきて欲しい。とある」


素材の採取か。

なら問題なくできそうだ。

……監視官とやらをつけるまでもないと思うが。



「――本来ならCランク以上の冒険者に依頼する内容だ。ちなみに、パーティが全滅をしたケースもある」


一瞬、何を言われたのか、理解できなかった。

そんなもの、まだ冒険者未満とも言える俺に振るような依頼じゃない。


オスカーは、俺の生死なんて眼中にもないんだろう。

さも当然であるかのように、笑顔を顔に貼り付けている。

俺はオスカーの心中を測れない。



――こいつはとんだ食わせ物だ。

読んでいただきありがとうございます。

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