表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から強者を叩き潰す  作者: あきお
第1章 奴隷、地上へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/59

第26話 恨みを越えて

※本作にはTS要素があります。

剣士が宝箱を開けた瞬間、眩い光が辺りを包み込む。

俺はたまらず目を瞑ってしまう。



「「「うわああああああ!!!」」」



冒険者三人の悲鳴がこだまする。

一体、何が起こった!?


強い光は目の前から全てをかき消す。

結果を視認するには、光が収まるまで待つしかない。



しばらくして、まぶた越しに光が少しずつ弱まっていくのを感じる。


あいつらは生きているのか、死んでいるのか。

急いで様子を確認するため、俺は目を開こうとするが、まだ光の影響は強く、はっきりとは見えない。


――生きているのか、死んでいるのか。


微かに、胸がチクリとした。

あいつらは確かにクズだ。

だが、俺は本当に死んで欲しいと思っていたのか?


確かに、あのクズどもには恨みがある。

それでも、同じ土俵に乗ってしまってよかったのかどうか。

そんなことを今さら思っても仕方がない。


起こったことを、ありのまま受け止めよう。

逡巡している間に、光は収まる。


するとそこには――



装備という装備、全てを外された三人がいた。



防具も、服も。

下着も。


要するに、三人とも生まれたままの姿――全裸でその場に立ち尽くしている。


「プッ……ハハハハハ!」


たまらず俺は、大声で腹の底から笑った。

奴隷たちも釣られて笑いだした。


クズ冒険者三人は、茫然自失と言った様子で、何が起こったのか理解が追いついていない。



俺の中から憑き物がスッと落ちるのを感じた。



もはや俺にとっても、奴隷たちにとっても、コイツらは恐怖の対象なんかじゃない。


――ただの、惨めな全裸のおっさん三人組だ。



――――――



「さて」


ひと息ついて、三人と向かい合う。


ちなみに、宝箱の中身は指輪だった。

バルフェリア曰く、“魔力の流れを変えられる指輪”だそうだ。


とりあえず、おっさんどもの裸は別の意味で目の毒だったので、サッサと服を着てもらった。


『お主……妾に何というものを見せるんじゃ……』


バルフェリアはげんなりとして、元気がない。

だが、あれは罠のせいであって、断じて俺のせいではない!

……俺だって見たくなかったよ、あんなおっさんどもの裸なんて。


ま、それはともかく。

気を取り直して、


「運がよかったな」


俺は三人へと言葉を続ける。


「お前たちなんてどうなってもいい、ってのは事実だし、今でもそう思ってる。

だけど……罠が掛かってるかもしれない宝箱を無理やり開けさせる行為。それは、ずっと不快な気分だった」


だから俺は、恨みを飲み込む。


一瞬の逡巡ののち――


「生きててくれて、よかったよ」


そう思った。

もしもこいつらのうち一人でも罠で死んでいたなら、きっと後悔していただろう。


「お前……とんだ甘ちゃんだな」


「いや?やるなら罠なんかじゃなくて、自分の手でとどめを刺す方がマシだと気づいただけだ」


「ひっ」


おっさんどもは小さな悲鳴とともに後ずさる。

が、


「……やらねぇよ」


俺は、さっきので溜飲が下がってしまった。

死の恐怖を感じ、自分たちがどれだけ理不尽なことをしていたのか。

それを体験してもらえただけで充分だ。


……だが、問題はここからだ。


「だけどそれは、俺に限ればの話だ。悪いが、あの三人が許すかどうかは別問題だよ」


そう言って俺は、ダンジョン奴隷の三人を見た。


「……俺たち?」


俺の視線に、三人は顔を見合わせる。


残りは三人だけ……随分減ったな。

俺がテレポーターで跳ばされるまで、俺も含めて八人いた。

つまり、四人が犠牲になったに違いない。


それを思えば、やはり不快感で反吐が出そうになる。

……それでも、決めるのは俺じゃない方がいいと思った。


「そうだ」


俺は頷き、言葉を続ける。


「お前たちは、どうしたい?」


俺はバルフェリアという相棒を得て、このダンジョンで生き残れるだけの力を手に入れた。

これはある意味、おっさんどものおかげとも言えた。

だから、一番の被害者はこいつらだ。


ダンジョン奴隷たちは、思い思いの表情を見せた。

青年は冒険者たちを真剣にジッと見つめ、少女の視線は不安そうに中空を彷徨い、少年は眉間にシワを寄せて難しい顔をしている。


「……」


青年は、少年たちに決意満ちた目線を向けて、目配せをする。

顔を見合わせて奴隷たちは、程なくして頷きあった。

恐らく、“青年に任せる”ということだろう。


「……俺たちは」


クズ冒険者たちはというと、終始無言。

この一連の出来事に、思うところがあったのかもしれない。

今は一切騒ぐこともなく、おとなしいものだ。


「俺たちも……もう、いいです」


青年は、そう答えた。

青年の言葉に、少年たちも頷いて見せる。


剣士は意外そうに、


「おい……いいのかよ?」


思わず、そんな言葉を投げかける。


「確かに、今でも許せないし、死んでほしいとも思ってる。だけどそれ以上に……同じになりたくないんです」


青年は目に決意を宿し、告げる。


「だから、いつか俺が力を付けたら……今度は、正面から勝負して下さい」


奴隷の青年と剣士は、しばらく目で語り合う。


「……。スキルなしがどの面で……。お前ら全員、気持ち悪いんだよ!いいか、生かしたことを後悔するなよ!」


剣士はそう吐き捨てるものの、どこか晴れやかな目をしていた。


「おい、やめろよ!死にたくねえって!」


「助かった……」


魔法使いと戦士も、死と同等の恐怖を感じたからか、それとも自分たちの行為を省みたからか。

意外なほどに表情が変わっている。

俺たちを虐げてやろうという、下卑た視線はもう感じない。


「じゃあ、もういいだろ?こいつらの奴隷契約を解除してやってくれよ」


「は?」


俺の提案に剣士は目を丸くする。


「俺は見ての通り……色々あって、もう腕輪はない。

だけどあの三人の腕輪も外して欲しい。あいつらはある意味、命の恩人だろ?」


「そうしたいのは山々だが……残念ながら無理だ」


「は!?」


まさか恩義を感じることも、反省することもないのか、こいつら?


「ああ、勘違いするな!今は無理なんだよ。奴隷商に頼まねえと」


「何でだよ!契約してるのはお前らだろ!」


「違う!俺たちはあくまで、奴隷を借りてるだけなんだ!」


……そうなのか?

嘘かもしれない。

だが、嘘をついている目にも見えない。


「力づくで外せないのか?」


「そんなことができるなら、こいつが腕輪を無理やり外してる」


『確かに、あの腕輪には魔力回路が組まれておる。魔力そのものは微弱じゃが、なかなかに複雑じゃ。力づくは危険だと思うぞ』


「お前じゃ無理なのか?」


こっそりとバルフェリアに問う。


『……残念じゃが、他者の魔力が腕輪に付与されている状態じゃ。魔力を通した本人以外が解除するのは容易でないぞ。それに言うたじゃろ?繊細な魔力操作は苦手じゃと』


……確かに言ってたな。


『少しでも魔力操作を誤ると――』


「誤ると?」


『最悪、腕がとぶかもしれん』


……駄目か。

なら、素直に奴隷商に外してもらうしかなさそうだ。


「俺たちは、奴隷商から奴隷をレンタルしてるだから、解除の仕方も知らねえ。仮にできても、それがバレたら命の保証がない」


「なるほどな……。なら、ひとつ頼みがある」


「……何だよ」

 

剣士が露骨に顔を歪める。

そこまで嫌そうにするなよ。


「せめてここを出るまで、一緒に同行してくれないか?」


「は!?勝手に行けばいいだろ!?」


「奴隷商に会うのも、お前らがいた方がスムーズだろうし。それに……」


「……それに?」


俺はバッグを開けて見せた。

中身は……短剣(柄のみ)、さっき回収した指輪、水筒(空)、石畳の破片が残り数個に、途中で拾ったポーションがひとつ。


「もう、飯も水も無くてさ」


「ハッ……ハハハハハ!」


剣士の馬鹿笑いが響く。


「……勝手にしろよ。半ば命令だろ」


魔法使いと戦士は何か言いたげだが、何も言わない。

リーダーの決定に従うと、苦笑いを見せるのだった。



――――――



それから俺たちは、俺・奴隷三人・冒険者三人の計七人で、ダンジョンの出口を目指して登っていった。


俺がスカウトとして先導し、戦闘は冒険者に、奴隷たちは荷物持ちとして。

俺たちは奇妙な協力関係の中、進み続ける。


――そして道中、三度の睡眠を経て。



「……ついに、帰ってきた」



一層。


今、俺の目の前の通路の先には、ダンジョンの出口が広がっている。

出口からここまで、外の風が吹き込んできている気がした。

読んでいただきありがとうございます。

よければブクマ・評価・感想いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ