表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から強者を叩き潰す  作者: あきお
第1章 奴隷、地上へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/60

第23話 ふたつの再会

※本作にはTS要素があります。

――夢を見ていた。


俺が生まれ、育った村。

空気がうまくて、穏やかで、優しい場所だった。

川の氾濫や作物の不作など、トラブルが起きたらみんなで力を合わせて、前向きに立ち向かっていた。


両親も、村人たちも、みんな優しかった。

俺の実家はしがない農家で、芋やキャベツの栽培を営んでいた。

両親は二人とも明るく、ポジティブで、俺は大好きだった。

大好きなみんなと、ずっとここで生きていくものだと思ってた。


しかし、俺が十四歳になったある日、村が炎に包まれた。

山火事だ、と誰かが言った。

……誰が言ったかは、覚えていない。


深夜に発生したその火事は、大勢の犠牲者を出した。

俺の両親も、犠牲となった。


俺はその時、両親と一緒に炎に包まれた家に閉じ込められた。

死ぬかと思った。

しかし親父はそんな中で、俺だけを二階から投げ落としたんだ。

俺はそれで、一命を取り留めた。


翌朝には鎮火したが、俺も含めて数名だけしか助からなかった。


そして三日後。

まだ墓穴も掘れていなかったその日。

噂を聞きつけた奴隷商が焼け跡となった村に立ち寄り、俺は奴隷商に捕まったんだ。


その日、俺の平穏な日々は終わりを告げた。

そこからは過酷な日々の連続だった。

この国が、奴隷を虐げることを容認していることすら、俺は知らなかった。


だけど今は――

何だか、楽しく話せる相手がいる。

そんな気がするんだ。


『貴様を』


――誰かが話かけてくる。


『貴様を、死なせはせん』



――――――


迫り来るアイアンゴーレムを前に、アレックスの意識は途切れた。


――幸い、アレックスはまだ死んではいない。

奴の命の灯火を感じる。


『のう、アレックスよ』


妾はポツリと語りはじめる。


『実はな、貴様がここまで来れるとは思っておらんかったんじゃ』


あれだけ矮小な小物だったのだ。

まさか生き残るとは。

だが、それ故に愛おしい。


『弱者が強者に頼り切ることなく成長を目指す。それこそが美しい、人の在り方じゃ』


そんな貴様は――



『お主は、ここで死んではならん!』



妾は身体に魔力を巡らせる。

アレックスの意識がない時に限り、身体にダメージを与えることなく魔力を漲らせることができる。

そして、そうすることで、一時的に身体の支配権を得る!



「まったく。やってくれたのう……デク人形が」



妾はゆっくり立ち上がる。

満身創痍の身体に妾の魔力が浸透する。

その魔力は、みるみるうちに傷を癒していく。


「のう、レギュラス――聞こえておるのじゃろう?」


妾は、アイアンゴーレムの向こうにいるであろう人物に声をかける。

どうせ返答は返ってこないだろうがな。


だが、レギュラスのことだ。

きっと聞いているはずじゃ。


「久しぶりじゃのう?こうして封印から逃れるまで、実に三百年か。長かったぞ」


既に眼前まで近づいていたアイアンゴーレムは、妾の言葉を無視して、何度も何度も、執拗に殴りつけてくる。

そんな攻撃全てを、左手でそっと撫でるようにいなす。


「貴様が推し進めた奴隷制。妾は許せなかった。

今でも到底許すことは出来ん。弱者を食い物にする強者など、馬鹿げておる!」


強者は弱者を守り、弱者はその庇護に報いる。

それが正しい在り方だと、妾は信じておる。


「だがどうだ?貴様が愛した奴隷という存在が、貴様が憎んだ妾を救ったぞ!」


「排除、バルフェリア、排除」


「デク人形は黙らんか!!!」


アイアンゴーレムの顔面を、矢のような勢いで蹴り抜く。

蹴り飛ばされた顔面は、はるか後方でボールのように弾み、転がる。

デク人形の戯言は、一瞬で聞こえなくなった。


「良いか、弱者を舐めるでないぞ。弱者には強者が持ち得ない強さがある。妾がそれを、こやつと証明してやるわ。首を洗って待っておれ!」


妾は、アイアンゴーレムに刺さりっぱなしの短剣の柄を握りしめた。


「のう、レギュラス。貴様と会える日を、楽しみにしておるぞ」


話は終わりだ。

握りしめた柄に魔力を集中させ――


「爆ぜろ!」


ボンッ!!!


膨大な魔力に耐えられなかったアイアンゴーレムは、

瞬時に爆ぜ、無惨にも散り散りとなった。

そこにはもう、アイアンゴーレムだったものの形跡すらない。


「さて、アレックス。これからお主には艱難辛苦が襲い来るやも知れん。妾と共にあれば、奴が必ず追ってくる。

そして妾も、レギュラスと決着をつけずには居られん。そのために、強くなってくれ。アレックス――」



――――――



「あれ……」


――確か俺は……アイアンゴーレムに殺されかけて……。



「ッアイアンゴーレム!!」



俺は飛び起きて、素早く周囲を見渡す。

が、アイアンゴーレムの姿は、影も形もない。


「……どうなってるんだ?」


『妾が倒したぞ』


「バルフェリアが?……え、どうやって?」


『言うておらんかったか?貴様の意識がない時には、妾がこの身体を操作できてのう』


「初耳だけど!?」


まあとりあえず、生き延びたことには違いない。

……本当は自分の力で倒したかったが。


『なんじゃ?不満そうじゃの』


おっと……お見通しか。


「いや、できることなら自分の力で倒したかったなと」


『フフ、その向上心を忘れるなよ。実際、惜しかったではないか』


これは……褒めてくれてる?

なんか照れ臭い。


そう言えば、左腕のことを忘れていた。

アイアンゴーレムに殴られてグシャグシャだったはずだが……何だろう、痛くない。

というか、見ると傷ひとつない。


「……俺の左腕、折れてたよな?」


『妾の魔力を浸透させたら治ったぞ』


「え、マジ?便利だな」


もしかして、俺ほぼ不死身なのでは?

死んだら身体をもらう、なんてバルフェリアは言ってたけど、こうして助けてくれたわけだし!

ツンデレめ!


『阿呆!代わる間も無く殺されればそこまでじゃし、肉体の回復は相応に魔力を消費するのじゃ!強くなり、死なぬように心がけよ!』


「え?なんで?心も読めるようになったの?」


『たわけ。今の顔を見れば、何を考えてるかぐらい分かるわ』


あれ?ちょっと待て。


「バルフェリア、お前……俺に死んで欲しいんじゃなかったか?」


『何を言う。そんなことを言った覚えはない』


え?そうだっけ?


『……何を惚けておる』


なんだかんだ、遠回しに心配してくれてるんだよな、こいつ。


「あらためて、ありがとうな」


『うむ』



なんか、いい感じだ。

バルフェリアとの間に何やら絆のような、暖かいものを感じる。


「よし!じゃあ――」


その時、右手の手のひらに違和感を感じた。

何かを握り込んでいる。


手を開いてみると、俺は短剣の柄によく似た、棒状のものを握っていた。

しかし、刃がないので短剣とは別物だろう。



「なあ、そういや短剣は?」


アイアンゴーレムに突き刺したままだったはずだ。

だが、アイアンゴーレムの姿はない。


『……』


おい。

なんで無反応なんだよ!


「なあ、短剣は?」


『……それじゃ』


「は?」


『右手に握っとった、それじゃ』


ん?

確かに短剣によく似てるけど??

刃があったであろう部分に隙間があるなあ???


「……刃は?」


『魔力を流し込んだら、消滅してしもうたわ』


なるほど?

でもこいつ、めちゃくちゃに強いわけだし、短剣を使わなくてもアイアンゴーレムを倒すのは、わけなかったのでは?


『だが、柄は残っとるじゃろ?新たな刀身を用意すれば、また魔力を持つ短剣として利用できる。安心せい!』


……まあ、こいつにも色々あったんだろう。

また命を救われたのも事実だ。


「じゃあ、柄だけでも取っとくか。再利用できるんなら悪くないか」


俺は握っていた柄を、そのままバッグに仕舞い込む。そして上層に向かうために、扉へと振りかえる。


と、そこには――


「おお!宝箱」


『道中、全く出なかったからのう。これもお主の悪運のせいかのう?』


「ほっとけ!今出てんだからいいだろ!」


『フフ。まあ、それで良いわ』


もしかしたら、死にかけた俺に対する、このダンジョンがくれたご褒美なのかもしれない。


俺はテキパキと手際よく、ピッキングツールを取り出す。

そして宝箱の前に座り、様子を探る。

我ながら、だいぶ慣れた動きだ。


……うん、鍵は掛かっている。

罠は……どうだろう。


「よし。まずは、さっさと鍵から開けるか」


軽く言いつつ、もちろん慎重に解錠に挑む。

ゆっくりと、だが手際よく。


カチリ


「よし、開いた」


『手慣れたもんじゃの』


「……確かに」


『カカカ、何で貴様が驚いとるんじゃ!』


自分でもびっくりするぐらい、スムーズに解錠ができた。


――道中も、戦闘も、解錠も。

スキルなんて無くても、必死に向き合っていれば何とかなるもんなんだな……。


「じゃ、次は罠がないかどうか――」



カツ、カツ、カツ、カツ



その時、上層へと繋がる扉の向こうから、微かに足音のようなものが響いてくる。

複数いる。

魔物のような重量感はない足音だ。


……もしかして、ここまで降りてきた冒険者だろうか?

もしそうなら、これで生きて地上に戻れる!

食料も尽きていたし、少しでも分けてもらえるとありがたい!


そんなことを考えていたら、ゆっくりと扉が開かれた。

俺は逸る気持ちを抑えきれず、その人たちに声をかける。


「あの――」


……が、言葉が続かない。


『……どうした?』


冒険者たちを見た途端、俺の言葉は喉奥に張り付いてしまい、音にならない。


「おい、あんた何もんだ?何でこんなところにいる!」


俺が一番、会いたくない奴ら。


「綺麗な顔してるが……あの格好、ダンジョン奴隷じゃねえか?」


俺を使い潰した奴ら。


「いやぁ、でも奴隷の腕輪してないぜ?」



そいつらこそ、俺が最奥に跳ぶ原因を作った、クズ冒険者たちだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければブクマ・評価・感想いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ