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ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から強者を叩き潰す  作者: あきお
第1章 奴隷、地上へ

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第20話 先へ

※本作にはTS要素があります。

「死ぬ気で頑張ったのに……お宝は無しか」



残念ながら、スライムは宝箱を落とさなかった。


『落とすのは“たまに”じゃ。毎回ではありがたみも無いではないか』


理屈は分かる。

分かるけどさあ。


「こっちは死にかけたんだっつーの……」


俺は文句を言いつつも、自信の見える手付きで、滞りなく鉄格子を解錠する。

キイィと金属音を鳴らし、鉄格子が開く。


その先には、上へと伸びる階段がある。

この最下層から抜け出すための階段だ。


「階段って、もしかしてだけど――」


『貴様の想像の通りじゃ。そこには魔力が走っておらんからの』


そう、階段には罠も魔物も出ない。

上層でもそうだった。

ここは唯一、完全に気を抜いていい場所と言っていい。

しかし、出ない理由は魔力が通ってないからなのか。


「これもご褒美、ってこと?」


『そうじゃ。常に気を張りっぱなしもしんどかろう』


バルフェリアのお墨付きを得て、俺から緊張感が奪われていく。

そして安堵と達成感を胸に、一段目の段差に足をかけた。



――――――



階段を登りながら、俺はバルフェリアに問いかける。


「ところで、気になったんだけどさ」


『何じゃ?』


「俺っていま、どんな顔してんの?」


『緊張感のない、緩みきった顔じゃな』


……おい。


「……いや、そうじゃなくて。

自分の顔、容姿がどんなのか見たいんだよ。なんかさ、そんな魔法とかないの?」


安全な場所、周囲に気を張る必要がない環境だ。

ようやく意識が自分自身に向く。

正直、めちゃくちゃ気になる。


何と言うか、スタイルはいいと思うし、髪もサラッサラな長い金髪だ。

それなら、今の自分は顔を含めてどんな外見をしているのか?

気になる、超気になる。


『あるにはあるが……』


これはもしや。


「……かなり痛い?」


『うむ』


まー、そうだよなあ。

俺は露骨に肩を落とす。


『そうしょげるな。その美貌は妾が保証するぞ?』


「いや、自分で確認したいんだが」


などとどうでもいい話をしながら進んでいると、程なくして階段の踊り場に辿り着いた。


“ここで休んでください”と言わんばかりに、充分な広さがある。

壁際には簡素な水場のようなものがあり、細い水流が溜め皿へと注がれている。

明らかに、ここで一息つくのを想定されている作り。


至れり尽くせりじゃないか。

それなら遠慮なく、ゆっくり休ませてもらおう。


「じゃあ、休憩にするか」


『お、何じゃ。飯の時間か?』


「飯も食うけどさ……気を休めたいが強いな」


俺は大きく息を吐いた。

そして腰を下ろし、前回同様、ナッツと干し肉を口にする。

バルフェリアは、またも味覚を楽しんでいる。

目を閉じて、じっくりその味を噛み締めているようだ。


まだ保存食はおおよそ六日分はある。

しかし、たった一層登るだけで一日分を食べ切ってしまった。

急がなければ、脱出前に食料が尽きる。


とはいえ、焦らないことを心掛けたい。

焦りは判断力の低下を伴い、リスクが増大する。

緊急時以外は、なるべく平静でいたいもんだ。


「プハッ」


水筒の水を飲み干して、水場へと近付く。

溜め皿まであるんだ。

飲み水として使えるのは、間違いないだろう。


俺は水流に水筒の口を差し出し、水筒に水を溜めていく。


「あっ」


その間、溜め皿へ流れる水流が止まり、鏡のように俺の顔を映した。

水面に映る顔と、目が合う。


「……美少女だな」


そして似ている。

狼に襲われたあと、夢の中で見た女性に。


真っ赤なルビーのような瞳、通った鼻筋、ぷるりとした唇。

そして、流れるような美しい金髪。


だが、あの女性よりは幼い印象を受ける。


「けど、ちょっと若い?」


『それはそうじゃ』


「お、急に何だよ」


バルフェリアは食事の余韻を楽しみ終わったのか、独り言に急に割り込んできた。


『妾がベースと言ったがの。年齢は、この肉体をベースにしておる』


「じゃあこの顔は、お前が十五歳くらいの時の顔ってこと?」


『左様。美しかろう?』


正直に言えば、その通りだ。

人混みですれ違えば、ほとんどの男は振り返るんじゃないだろうか?

俺も間違いなく振り向く。


「でもこれ逆にいえば、男には気をつけないといけない、ってことだよな……」


『女にもな。嫉妬に女性同士のロマンスもあるじゃろう』


「おい、やめてくれよ」


想像して、身震いする。

こりゃダンジョン脱出後は気をつけないとな……。



――――――



俺は一眠りしようと踊り場で横になった。

しかし、なかなか寝付けない。


『どうした?眠らんのか?』


「いや、眠れないっていうか……」


『ふむ。妾で良ければ聞いてやろう』


俺は少し迷う。

これは弱音になるから。

バルフェリアに聞かせる様なものじゃないのは分かってる。


だが、その気持ちとは裏腹に、俺の口はポツリポツリと話しはじめた。


「テレポーターに引っかかってから、色んなことがあり過ぎたなって」


そう、色んなことがあった。


「右手を喰われて死にかけて。

お次は鎧野郎に宝箱、通路の罠にスライム。どれかひとつでも間違えていたら、俺は死んでたはずだ」


『……』


「にも関わらず、俺は生きてる。……前にさ、見たんだよ。自分のスキル」


『ほう?』


「“悪運”って出てた。もしかして、こんな危険な目に遭うのも、このスキルのせいなんじゃないか?って思うんだよ」


『……』


「このスキルさえなければ、奴隷になったことも含めて、こんなことになっていなかったんじゃないかって」


いったい、何を言ってるんだろうか。

こんな話、鼻で笑われて一蹴されるに決まっている。

そう思っていた。


『良いか、アレックス。貴様にとっては不運だったかもしれん。だがな、妾からみれば……貴様は、救いじゃった』


「……救い?」


『左様。貴様が奴隷にならなければ、貴様がテレポーターにかからなければ……妾はまだ、あの魔石の中で独りじゃった』


「……」


『貴様は、妾を永遠の孤独から救ってくれた、恩人よ』


何だよ、慰めてくれてるのか?


『そして貴様はその弱き力でも、頭脳を駆使し、観察し、必死に生き残ろうとしておる』


「……」


『恩人のためじゃ。貴様が生き残る術を、ともに探ってやる。だから弱気になるでない』


「バルフェリア……」


『“悪運”が今をもたらしたのであれば、チャンスと受け止めよ。現に貴様は、あり得ん速度で成長しておる。強者となるためにな』


コイツなりの慰めだろうか。

何か温かいものを、胸中に感じる。


「……ありがとな」


返事はなかった。

だが、不思議と右手にぬくもりを感じた。


起きたら弱気は無しだ。

そう心に誓い、程なくして俺は眠りに落ちた。



――――――



その後、俺たちはさらに上を目指して歩みを進めた。


罠を避け、魔物をやり過ごす。

基本は見つかることなく逃げる。

温存のために極力戦闘を避けながら、ひたすらに上へと向かった。


十八、十七、十六層ーー


確実に、着実に上へと進む。


その間も警戒は怠らない。

そのため観察眼や忍び足、解錠など、生きるための感覚がみるみる研ぎ澄まされていく。


そして、


――中層。

ついに第十層へと辿り着いた。


ここまでに何日掛かったかは分からない。

食料はもうすでに尽きていた。

不安がないと言えば嘘になる。

だが、俺はまだ立っている。


「やっと半分か……」


『よく頑張ったの。ここが正念場じゃぞ』


いつになく強い口調でバルフェリアが言う。


『この十層は“ふるい”なのじゃ。ここより上は、魔物の質も数も、罠も、グッと減る。』


「確かに。奴隷の時はこんなにキツくなかった。ここで半分とはいえ、ある意味ゴールみたいなもんか」


『じゃがこの十層には、下層に近づかせないための、守護者がおる。こやつこそが“ふるい”よ』


「守護者……?」


『左様。倒さなければ扉は解放されぬ。逃げることは叶わぬぞ。そして、狼を除いたどの魔物よりも強いと思え』


逃げることは許されず、今まで戦ったどの魔物よりも強いときた。


……生き残れる可能性は低いかもしれない。

だがここまでもそうだった。

だから、やるだけだ。


「死んだら今度こそ、この身体はお前にやるよ。だけどな、俺は諦めねえぞ。ちゃんと見とけよ」


俺はブルリと大きく震えた後、作り笑顔でそう告げた。


『言うではないか。よかろう、見ていてやる』



その返答は、不敵かつ、穏やかだった。

読んでいただきありがとうございます。

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