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ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から強者を叩き潰す  作者: あきお
第1章 奴隷、地上へ

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第2話 巨大狼の餌

※本作にはTS要素があります。

狼と目が合った瞬間、理解した。



奴は今、俺を“獲物”として見ている。


すぐに襲いかかって来ないのは、単なる気まぐれとしか思えない。


全長5メートルはある巨大な狼を前に、体中がガタガタと震え出す。

脚が竦み、歯も噛み合わない。


暴力ってやつを具現化したら、きっとあんな形に違いない。



「でかすぎだろ……」



俺は、恐怖で震える体を両手で抱きしめ、なんとか抑えつける。

なるべく奴を刺激しないよう、引き攣った笑顔を貼り付けながら、俺はゆっくり後ずさっていく。

その間も狼の口からは、地の底から響いてくるような唸り声が漏れ出ている。


「だ、大丈夫……何もしない。っていうか、飛ばされてきただけなんだよ……見逃してくれないか……?」


言葉なんて通じるとは思えない。

だが、何か喋っていないと恐怖でどうにかなりそうだ。

全身から噴き出る冷や汗が止まらない。


睨み続ける狼を前に、俺はジリジリと、秘宝の方へゆっくり下がっていく。

……あわよくば、このまま宝石を手に入れて、何事もなく脱出したい。


というか、何もしなければ喰われて死ぬだけだ。


「ハァ、ハァ……」


なるべく音を立てないように、息も浅めに、下がり続ける。

狼は今にも飛び掛かってきそうな低い構えで唸り続けているが、幸い動きはない。


これはひょっとして……いけるんじゃないだろうか?


あの宝石を手に入れて、このダンジョンからの脱出。

奴隷の腕輪が右腕に健在だが……きっと何とかなる。

この秘宝、黒い宝石を売り払った金で、奴隷契約だって解除できるに違いない。


これだけ厳重に保管された宝石なんだ。

高く売れるに決まってる!


俺は、最短最速で宝石をゲットするため、チラリと目線を宝石に移す。


「あと、三メートル……!」


手を伸ばせば届きそうな、でもまだ届かないもどかしい距離。

俺の意識が、巨狼から宝石へと移る。

そしてほんの一瞬だけだが、巨狼への警戒が――



完全に消えた。




グオアアアアアアアァッ!!!



警戒が解けた途端に、狼が巨大な雄叫びを上げる。

今なら分かる。

こいつは、獲物が油断をする瞬間を待っていたのだ。


震える大気。

圧倒的な殺気と、死の匂いが部屋中に充満していく。


俺の全身に戦慄が走る。

目の前の恐怖から逃げ出すように、俺は宝石へと駆け出した。


――三メートルならすぐだ。


宝石を取ったら台座を壁にして、また狼が落ち着くまで何とかやり過ごせればいい。

ここから脱出して、自由を得るんだ!


「こんなところで死んで――」



ガブリッ



何が起こったのか、分からなかった。


宝石を手にしようと伸ばしていた、俺の右腕が一瞬で消えた。

あとほんの数センチで宝石に届いたであろう指先も含め、俺の視界から全てが綺麗に消えた。


何故消えたのか?



……嫌だ。



見たくない。

見ると認めてしまうから。

見ると決定してしまうから。


だが、背後からは何かをくちゃくちゃと咀嚼するような音が聞こえる。



――見ないわけには行かない。



俺は、恐る恐る、後ろを振り返る。


すると目の前に、腕をくわえた、巨大な狼の姿が見えた。


腕に残る細かい傷跡もある。

二の腕に鈍く輝く、奴隷の腕輪もある。

奴がくわえているそれは、紛れもなく俺の右腕だ。


俺とは比べものにもならない速度で、巨大な狼は右腕を食いちぎったのだ。



「ぐあああああああああっっっ!!!」



俺の断末魔の絶叫が玄室に響く。


痛みは遅れてやってきた。

傷口から噴き出る鮮血。


宝石を濡らすほどなのだから、まるで噴水のように溢れている事だろう。


俺は、肩口からごっそりと食いちぎられ、床を無様にのたうち回る。

声にならない声で叫びながら。


永遠とも思える激痛の中、自分の声も床の感触も、だんだんと遠くなってくる。

ぼやけた視界の端に、巨大狼が見えた。

くちゃくちゃと美味そうに俺の右腕を咀嚼している。



――何だってこんな事になってしまったんだろう。



何を間違って、奴隷になってしまったのか。

この状況、もはやそんな事を考えても意味がない。

失われていく体温を感じながら、後は無様に死を待つだけ。


十五年の人生に今、幕が降りるんだ。

ようやく、この惨めな人生から解放されるんだ。



――その時。



ドクン



何処からか、鼓動が聞こえる。

自分の心音かと思った。

だが、大量に血を失い、むしろ心臓は止まろうとしている。

こんなにはっきり聞こえるものだろうか?


ドクン


また聞こえた。

うるさいぐらいに、はっきりと。

何故か、この音が引っかかる。

俺は薄れる意識の中、つい音の発生源を探してしまう。


「あ……れか……?」


何とか視界に捉えた、音の出どころ。

そこには、俺の血を浴びた黒い宝石があった。


宝石は俺の血を飲み込むように吸い込み、さらに鼓動を強く発する。



ドクンッ!!



瞬間、宝石は飛び上がり、一瞬のうちに俺の傷口へと潜り込んだ!



異物がズブリと音を立て、体内に侵入する。

何かが肉を掻き分けるが、痛みは感じない。

俺の血を吸い込むような、俺と何かが混ざるような、奇妙な感覚。


直後、俺の口が、俺の意思とは関係なく動き出す。



「待ちわびたぞ、この時を」

『この身体――妾が、貰い受ける!』


口が勝手に喋ったあと、女の声が頭の中に響き渡る。

直後――



ついに俺は、意識を手放した。

読んでいただきありがとうございます。

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