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シャイニーガーディアンズ

例の拡声する棒状の物に、今度はレイア姐さんが近づき、武棟祭のルールを説明する。


姐さんが進行役なのか。


意外だ。


「ご機嫌よう参加諸君!本学園における催し物の中でも、特に人気のある春嵐武棟祭だ。お互いが今の実力を丈を存分に発揮し、高め合えば良い!


本年度の新入生が所属する棟『Petunia(ペチュニア)


本年度2学年生が所属する棟『Adonis』(アドニス)


本年度3学年生が所属する棟『Adiantum(アジアンタム)


本年度4学年生が所属する棟『Statice(スターチス)


以上!我が学園四棟から成る武棟祭を開始する!」


姐さんが表情を引き締め、その凛々しい声が闘技場全体に行き渡る。


先程まで大声を上げて騒いでいた観客も、その鬼気迫ると言っても過言ではない声質に、闘技場全体が姐さん1人に飲まれたかの様だ。


「各棟約20名前後の者達が参加しているが、先ずは予選を行う!なぁ~にとてもシンプルで、簡単な予選だ」


そう言う姐さんの顔は明らかに、楽しそうにしていた。


「これより配られる特殊な『水袋』がある。制限時間は銅鑼の音3回分!開始の合図で1回、2回目で約半分、そして時間制限である3回目の銅鑼が鳴った時に水袋を割られずにいた者が予選通過だ!」


そしてぞろぞろと四ヶ所ある出入り口から係りの者達が、水袋を持って現れる。


各棟の参加者達に、其々1個ずつ手渡される。


受け取った生徒達は、各々がその見慣れない手のひらよりも少し大きい水袋をしげしげと見ていた。


かく言う俺も、水袋の感触とその袋に刻まれた白い紋様を見ていた。


(なるほど…。刃引きした武器以外にも、少し力を加えると簡単に壊れそうだな)


「今の私の説明に『割られなければ良いだけ』と思った愚か者がいてるだろう!」


姐さんの声に俺の前方にいる生徒達の数人がビクっと肩を震わせた。


「ふん。そんな軟弱な考えでは予選など通過する事は出来んぞ?便利な世の中だ。その紋様は本年度の武棟祭様に作られた物でな。他者が持つ水袋を一定数破壊すると刻まれた紋様の色が変化する。どう言う原理かは私にはわからんが、そうらしい。ここまで言えばわかるな?1人最低でも4つ破壊しなければ紋様の色が変わる事は無いぞ?例え壊されず生き残っても、紋様の色が変化していなければ失格だ!」


姐さんの説明を聞いた生徒達から驚きと、どよめきが起こっている。


そして、俺もその中の1人で驚いていた。


「紋様って凄いなぁ…。何にでも応用が出来そうな感じだな…」


「いや、ディオっち今この場所でそこに驚くのかよ…」


呆れるロブロイの言葉を尻目に、改めて水袋を隅々まで見つめた。


これを守りながら、この場にいる生徒の水袋を4つ破壊するのが予選か。確かにシンプルでわかりやすい。


「さぁ!私の前口上はもう良いだろう?ご覧頂いている観客の方々をせいぜい楽しませるんだな。各棟の生徒諸君!検討を祈るぞ?銅鑼の準備を!!」


その言葉を皮切りに各棟の生徒総勢80人前後が一斉に闘技場に散らばり各々の剣や杖等の武器を構える。


若干、中にはもたついて慌てている生徒もいてるが、まぁさっき控え室で見かけた参加賞目的の生徒だろうな。


苦笑いしつつ、俺は左手に水袋を持ちながら、ロブロイと距離を取る様に離れた。


どうせ祭りだと言うのなら、その祭りに参加する友人と多くの時間を楽しみたいと思うのは仕方ない事だとは思わないか?


ロブロイもそんな俺の行動を知ってか、鼻で笑いながら俺を流し見る。


ダミアンの姿もあったが、彼は微動だにせずに、その場で佇んでいる。自信の表れなのか。


右手に水袋を持っているが、ダミアンは左利きなのか?


左手に細剣を握っている。


他の連中と言えば、多くは左手に大事に水袋を携えているが、中には口で咥えている者。


なんとか服に押し込んで目立たせない様にしようとする者がいたのだが、パンッ!と弾けてその生徒は水浸しになった。


銅鑼の音が鳴る前に脱落してどうすんの…。


茫然自失とする生徒にお構いなしに銅鑼の音が闘技場に鳴り響いた。


「開始ぃぃ!!」


銅鑼の音とレイア姐さんの開始を告げる合図で、各生徒が散開する。


既に闘技場のあちらこちらで、金属音の擦れ違う剣戟音を響かせては闘技場を観戦する人達を大いに盛り上げていた。


「だぁぁぁぁぁ!」


1人の生徒がショートソードを右手に構えて、突き立て迫って来る。


ひょいっと躱し、足を引っ掛けてみる。


ズシャァァ…!


と盛大に地面に口ずけを交わす生徒は、咄嗟に持っていた水袋を守っていたが無残にも弾け壊れていた。


(ああやって、転倒させて破壊した場合は加算されるのだろうか?)


等と呑気に構えていたら、いつの間にかあっという間に囲まれていた。


誰がどの棟の連中なのか、普段なら生徒服の詰襟部分のピンの色でわかるが今は其々戦闘スタイルだ。

誰がとかいちいち気にしていられない。


俺の知る人物はロブロイとダミアンくらいで、他の棟の生徒の事までは知る由もない。


目の前に表れ、俺を囲む生徒達。このまま間合いを詰めて魔法なり魔術なりで一気に片を付ける気なのかと身構えたのだが、俺の予想とは斜め方向の行動に出た。


「マリーベル姫非公式愛好会(ファンクラブ)太陽の微笑を見守る会(シャイニーガーディアンズ)』会長!カール・グスタフ!アドニス所属一般生!」


「同じく!『太陽の微笑を見守る会(シャイニーガーディアンズ)』副長!ニコラ・ジンス!!アドニス所属一般生!」


「続きます!『太陽の微笑を見守る会(シャイニーガーディアンズ)』活動書記!クイック・ル・ワイパー!アジアンタム所属特別生!!」


『我ら!学園の女神を守護する三賢人(トレース・サーガ)!!太陽の微笑を見守る会(シャイニーガーディアンズ)!!私怨によって堂々参上!!』


目の前に現れた3人の見事までの調和のとれた口上と、その堂々たる決めポーズに呆気に取られてしまった。


俺は必死で事態の成行きを整理しようとする。


「アドニス所属限定生!ディオニュース・カルヴァドスぅぅぅ!よくも我らの女神を独り占めしてくれたな!この場を大いに借りてその所業!後悔させてやる!」


会長と名乗る魔法使いであろうスタイルの眼鏡をかけた生徒が一気呵成にまくし立て、杖を俺に向けて敵意を剥き出す。


「会長!我らの力を今こそ集結させて、憎っき此奴に裁きの審判を!」


副会長と名乗った軽戦士風の男が槍を頭上でブンブンと豪快に回し、腕に絡ませて決めポーズをして咆哮する。


「うむ!同士のお二方!我ら三賢人の恐ろしさを特と味わせてやりましょうぞ!」


え~と、なんだっけ。


初期?書記?


あぁ、そうだ活動書記とか言ってた人。


変わった名前だなぁ。


左手に水袋を持っているけど、両手でハープの様な小さな弦鳴楽器を持っているから非常に持ち辛そうだ。


「会長!副会長!活動書記!僕達の無念を!我らの女神を取り戻して下さい!!」


「会長!会長!会長!」


歓声に紛れて、明らかにこの3人を応援する声が耳に入った。


入ったのだけれども、応援している生徒も、今対峙しているこの3人にしても俺は恨まれる事なんてしてない筈だ。


何かの勘違いではないのか?


そう思った俺は一応釈明しようと前に出た。


「な、なぁ?何かの勘違いか人違いじゃないのか?俺は別にあんた達に恨まれる様な事はしてないと思うんだが…?」


顔を赤色から青色に変えて、ブルブルと震えだす3人。大丈夫なのだろうか?


「はいぃぃ!?死刑執行確定!!」


「此奴に女神の天罰を与えるのDeath!!」


「んほぉぉぉ!?知らぬ存ぜぬ無知の罪なぁりぃぃぃ!!」


「辛酸甘苦に耐えたこの一ヶ月!我らの悲願は達成したれりぃぃぃぃ!往くぞぉぉ!同士よぉぉ!!」


『オォォォ!!』


一際甲高い奇声を上げた自称会長の声と共に、3人の声が重なり一斉に襲い掛かって来る。


瞬時に頭を切り替え、身構える!


先手は槍使いか?あいつの槍の間合いと喧嘩をしてはいけない。


俺のロングソードの模擬刀では分が悪い。


槍使いが牽制している間に、魔法使いとハープ使いが何かの呪文や技を使ってくる筈だ。切り替えた思考で、一通りの攻撃されるであろう行動を想定する。


(さぁ…!来いよ!)


片手で構えるロングソードは、今の俺なら造作もなく扱える。


気合を入れて迎え撃つ!


『ちょいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』


「うぉっ!?ちょっっ!なんだあんた達はっ!?」


俺が想定した攻撃のそれでは無く、3人は水袋でも無く文字通り俺の頭を的確に狙い、直接『殴りかかって』来た。


杖で、槍で、ハープで。


「あんた達、全然水袋狙ってないだろぉ!?思い切り俺を狙っているじゃないか!?」


俺が3人に向けて抗議する。


しかし3人はさも当然と言わんばかりに口を揃える。


『当たり前だ!』


もう全く意味がわからなくなった。


相変わらず三位一体の『打撃』攻撃を器用に続けて来る。もの凄く敵意に満ちた攻撃を躱しながら、過去の経験を振り返る。今まで戦った奴らも、変則的な攻撃をする奴も当然いた。


気付けば斬られていると言うとんでもない奴もいた。


遠距離攻撃が得意と言わんばかりに魔法を頻繁に使用するから接近して仕留めようとすれば、俺と大差無い程に接近戦に長けていた妖魔族もいた。


そんな彼らとの死闘を思い出していたのだが…。


槍使いはまだ理解出来るとしても、残り2人は変則的過ぎるだろ!


特に楽器!楽器で殴打するって、どんな攻撃だよ!

頭が痛くなってくるな。


もうさっさと終わらせて、進めよう…。


『覚悟ぉぉぉぉぉ!』


その掛け声と共に、飛び出す3人が確認出来たのは反転する景色と聞こえる破裂音。


そして自分達の身体が瞬時に濡れていく不快感。


自身の手に握られていた水袋は跡形も無く、全て破裂していた。


飛びかかり奴の頭上目掛けて、手にした武器を渾身の一撃で振り下ろした筈だ。


なのにどうして今自分達の目には雲一つ無い青空を眺めているのだ。


理解出来ない。理解出来ない。理解…でき…。


「あ、水袋の色が変わった。なんださっき転倒した奴も加算されるのな」


我らの恨み節等、全く意に介せず呑気に話す声により、全てを理解した。

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