第67話 玉座の終焉、新しき支配の夜明け
国王の執務室に、血に染まった兵士が駆け込んできた。
「陛下! コトウハ公爵が謀反を起こし、王城は既に制圧下です! お逃げください!」
「なにっ、謀反だと!?」
国王とリーキヤ公爵が驚愕に目を見開いたその瞬間、兵士の背中を無慈悲な切っ先が貫いた。兵士は声もなく崩れ落ちる。
その背後から現れたのは、重装甲に身を包んだ騎士たちと、静かな怒りを宿したコトウハ公爵、ビーカル辺境伯、そして錬金術師コエザの三名だった。
「ビーカルううううう!! 貴様、何をする!」
リーキヤが叫ぶが、ビーカルはその視界にすら入れていない様子で、真っ直ぐに国王へと歩み寄った。
「陛下、宣戦布告は届いたはず。約束通り、命を頂戴しに参りました」
「ビーカル、貴様……長年尽くした恩を仇で返すというのか!」
国王の憤怒に対し、ビーカルは冷徹に言い放つ。
「恩? どの口がそれを言うのです。領地を奪い、辺境へ追いやった罰を『恩』と呼ぶのか? 回復薬の無償提供を強要し、挙句には使者を襲わせた貴殿らに、何の恩義がある?」
「領地を与えてやっただろう! 感謝こそすれ反逆など……」
ビーカルは鼻で笑った。
「陛下、ご自身が何をしたのかすら理解されていないのですか。何もない荒野へ追いやり、援助もなしに開拓させること。それは『罰』以外の何物でもない。陛下がリーキヤの戯れ言を鵜呑みにした結果、この国は内側から腐り落ちたのです」
呆れ果てたコトウハ公爵が割って入る。
「おいおい、ビーカル。もしかして本当に知らなかったのか? 援助無しで開拓させるのが罰だと平民でさえ知っていることだぞ。……まさか本当に馬鹿だったとはな」
「り、リーキヤ! こやつらの言っていることは真か!」
国王が焦って問い質すが、リーキヤは青ざめて言葉に詰まる。
「バカな、陛下! これは奴らの作り話に……」
「煩い! 引っ込んでいろ!」
コトウハが怒号と共に大剣を振るい、その腹でリーキヤを壁まで吹き飛ばした。
「ぐふぅッ……!」
「リーキヤに唆され、回復薬を絶たせた責任は陛下にある。兵士たちの命を無駄に散らした罪、その報いを受ける時が来たのだ」
コトウハの剣が鈍い光を放ち、国王へと向けられる。
「馬鹿に王は相応しくない。俺が王家の親族として、この国を立て直す。……せめて痛みを感じぬよう、一撃で終わらせてやるのが最後の慈悲だ」
「ひぃ、やめ……!」
ズシャッという乾いた音が響き、国王の首が床に転がった。
玉座に最も近かった二人の男の末路。コトウハは剣を収めると、ビーカルへ合図を送る。
「リーキヤは任せる」
「ああ」
這いつくばり、命乞いをするリーキヤ公爵の前で、ビーカルはゆっくりと剣を構えた。
「さあ、リーキヤ。首を洗って待っていたか?」
「い、命だけは! 金はいくらでも……頼む! やめろおおお!」
グシャリという音と共に、王国の害悪であった男は、その野望と共に消え去った。
静まり返った執務室で、二人は王城の制圧を完了させた。王国の支配権は、今この瞬間、王都の貴族から辺境の獅子たちへと、血の代償と共に移り変わったのである。




