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【ブラッシュアップ版】 モブキャラ異世界転生記~モブキャラに転生しちゃったけど従魔の力で何とかなりそうです~  作者: ボルトコボルト


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第58話 愚かな王の勅命、破滅へのカウントダウン

「はぁ……」

 謁見の間の冷え切った空気の中で、コトウハ将軍は心底呆れ果てていた。国王は相変わらず他人任せで、目の前の危機すら理解できていない。側近のリーキヤ公爵の言葉を鵜呑みにし、国力そのものだったビーカルを転封させ、自ら軍の心臓を止めたのもこの男だ。


 コトウハ将軍は国王を冷ややかなジト目で一瞥する。

「兎に角、我が軍は壊滅的だ。継続して戦うことは不可能……いや、この状況では戦う意味すら見当たらん。儂は領地へ戻る。あとは勝手に人選するがいい」


「何だと、コトウハ! 貴様、逃げるのか!?」

 将軍は国王の喚き声を無視し、一言も発せずに謁見の間を後にした。背中が「もう知らん」と語っていた。


 将軍が抜けた王国は、即座に崩壊の坂道を転がり落ちた。敗戦に次ぐ敗戦で領土の半分を失い、さらにコトウハ将軍の代わりとして送り込まれた無能な将軍は、兵を率いて出陣したものの、敵国の餌食となり無惨な死を遂げた。


   ◇◇


「うぬぬ……どんげかせんといかん(何とかせねばならん)な……」

 王城の奥深く、追い詰められた国王とリーキヤ公爵の無益な対話が続く。


「敵国の侵攻は何とか止めているが、兵も財も底をつきかけている。……何か、一発逆転の策はないのか」


「……ビーカル辺境伯に兵を出させましょう」

 リーキヤ公爵が薄ら笑いを浮かべる。その意図は明白だ。勝てば自分の手柄、負ければビーカルのせいにして抹殺できる。どっちに転んでも彼に損はない。


「ビーカルか。……だが、奴らに出陣を命じる根拠はあるのか?」

 控えていた文官が恐る恐る口を開く。


「……辺境伯殿は、転封の条件として3年間の兵役免除を受けているはずですが……」


「そんな事はどうでも良い! 国が滅びそうなのだぞ! それに、ビーカルが出ればヤコイケ印の回復薬も付いてくるだろう?」


 国王の目は、卑しい欲望に満ちて輝いていた。

「こ、ここでビーカルに反乱でも起こされたら、この国は本当に──」


「貴様っ! この国難に、忠誠を誓ったビーカルが反乱など起こすわけがあるか!」


 国王は、自分が奪い取った領地への恨みを想像することすらできない。ビーカル辺境伯がどれほど苦労して治めた領地を奪い、辺境へ追いやったのか――その非道を棚に上げ、傲慢にも恩を売るつもりだ。


「よし! ビーカルに回復薬を持参し、速やかに兵を出せと勅命を下せ! 恩義を感じている奴らが拒むわけがなかろう!」


 国王のあまりの無知に、文官たちは戦慄した。この命令こそが、王国が自ら破滅の引き金を引く合図となることを、彼らは理解していたからだ。


「しめしめ……」

 リーキヤ公爵は、狂い始めた王国の歯車を眺めながら、不敵に笑う。


 王国の運命などどうでもいい。ただ、ビーカルがこの戦場に引きずり出されれば、彼の計画は最終段階へ進む。


 こうして、理不尽極まる「出陣命令」が辺境のスギンビへと放たれた。それは、溜まりに溜まった恨みの火種に、ガソリンを注ぐようなものだった。

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