表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ブラッシュアップ版】 モブキャラ異世界転生記~モブキャラに転生しちゃったけど従魔の力で何とかなりそうです~  作者: ボルトコボルト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/53

第49話 迫る悪意と、辺境への宣告

 ヤイムラ王国。小国ゆえに周辺諸国との緊張が絶えないこの国において、ソウタたちの住むビーカル領は、ある種の「特異点」となっていた。


 ヤコイケ印の回復薬が国軍に正式採用されたことで、戦線は拡大の一途を辿り、それに比例するようにビーカル領とヤコイケ都市は空前の好景気に沸いていた。だが、光が強ければ影もまた濃くなる。


 隣領を治めるリーキヤ・ドバ公爵にとって、それは看過できない事態だった。

「冒険者上がりの成金めが……! ダンジョンの素材独占だけでは飽き足らず、回復薬まで荒稼ぎしおって……」


 歪んだ顔で舌打ちをする公爵の傍らで、側近のメアサ・ダアが冷たい笑みを浮かべる。

「公爵閣下、ビーカルはどこの派閥にも属さぬ平民上がりの田舎領主。やりようはいくらでもございます。我らでその領地、丸ごと収奪してしまいましょう。イッヒッヒ」


「ふむ……何か良い手があるのか?」

「ええ、とっておきの罠がございます」

 二人の醜悪な笑い声が、領主館に響いた。


   ◇◇


 数ヶ月後、ソウタとコエザはビーカル伯爵の居城に呼び出されていた。


 伯爵の表情は険しく、会議室の空気は氷のように冷え切っていた。


「伯爵、火急の用事とは如何なることか」

 コエザの問いに、伯爵は力なく肩を落とした。


「……リーキヤ公爵に嵌められた。国王より『転封』の命が下った」

「転封?」


 ソウタは首を傾げる。貴族の政争に疎い彼には、その言葉の重みがすぐには理解できなかった。

「領地替えだ。今のビーカル領を明け渡し、別の土地へ移れという命令だよ」


「そんな馬鹿な! 私たちがここまで発展させたこの街を、今さら捨てるなどと!」

 ソウタは戦慄した。積み上げた畑、完成した都市機能、そこに住む人々。すべてが他人の手に渡るというのか。


「形の上では『ダンジョン運営と回復薬開発の功績に対する褒美』だが、裏があるのは明白だ」


「で、転封先はどこなのですか」

「……スギンビだ」

 その名を聞いた瞬間、コエザが険しい顔で眉をひそめた。


「辺境中の辺境ではないか。ダンジョンのノウハウを活かして王国を守護せよ、だと? 防衛費と維持費で赤字になるのが目に見えているわ」

 伯爵は自嘲気味に笑う。


「国王は本気で俺を評価してくれているんだ。だからこそ始末に負えん。辺境伯という新しい爵位まで付けて、な」


「辺境伯……侯爵と伯爵の中間程度の、王国初の爵位ですか」


「そうだ。断れば王命への背信。俺は、この愛着あるビーカルを失うことになる」

 そして、その空いた席に座るのは、当然のごとくリーキヤ公爵だった。


 ソウタは溜息を隠せなかった。

(……貴族って、本当に面倒くさいな)


 必死に努力して築き上げた成果が、大物貴族の嫉妬と政争で簡単にひっくり返される。そんな理不尽を目の当たりにし、ソウタの胸には静かな怒りと、それ以上に深い「貴族社会への嫌悪」が渦巻いていた。


「スギンビ、か。……コエザさん、辺境ってどんな場所なんですか?」

 ソウタは冷静に問うた。もはや驚きは薄い。


 もし力ずくで奪われるのなら、その辺境とやらで、またゼロから作り直すまでだ。今度は、誰にも邪魔されない場所で。


 ソウタの採取士としての血が、新たな「開拓」への覚悟を静かに燃やし始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ