第33話 採取士ギルドの特権と、新たなダンジョン戦略
ソウタはコエザの言葉を聞きながら、冒険者ギルドという組織への警戒心を新たにした。今まで彼らがソウタを「草毟り」と蔑んできた過去を考えれば、自分たちの運命を彼らの許可に依存させるのは悪手でしかない。
「ポーターと同じ扱いなら……いや、それでは冒険者ギルドの顔色を窺い続けなければならない。採取士ギルドとして、独自に立入許可が出せる体制を作る必要があるね」
ソウタは男爵としての権威と、採取士ギルドが街の経済に与えている利益を天秤にかける。コエザはソウタの意図を察し、小さく頷いた。
「なるほど、領主のお墨付きで『採取士ギルド発行の許可証』を作成し、騎士団と同等の立入資格を認めてもらう……という手か。大胆じゃが、今のソウタなら不可能ではないかもしれん」
「騎士団が任務として入れるなら、採取士も『街の資源採取という任務』で入れるはずだ。……それに、冒険者がモンスターを倒すための場所なら、採取士は『森やダンジョンを維持・管理する場所』として利用するんだ」
コエザは感心したように目を細めた。
「その理屈、伯爵も気に入るじゃろう。資源枯渇を防ぐことは、この街の未来に直結するからのう」
方針は固まった。だが、許可証が発行されるまでの間、ナナミや子供たちを遊ばせておくわけにはいかない。
「それまでは、戦闘訓練を担当してくれているヤフジさんに同行してもらうしかないね」
ヤフジは、かつて冒険者として名を馳せた老練な男であり、今回の騒動の際も冒険者たちの身勝手な振る舞いに辟易していた一人だ。彼なら、ギルドの顔色を窺うような真似はしないだろう。
翌日、採取士ギルドでヤフジに頭を下げるソウタの姿があった。
「ヤフジさん、無理を承知で頼みます。ナナミたちをダンジョンに連れて行ってくれませんか?」
ヤフジは髭を擦りながら、ニヤリと笑った。
「いいぜ、坊主。あのクソ生意気なガキども(冒険者)に、採取士の真の実力を見せつけるのは痛快だからな。それに、あいつらに薬草を採り尽くされては、俺たち古株も面白くない」
準備は整った。
ヤフジを護衛に迎え、ナナミと四人の子供たちは、ついに「ダンジョン」という未知のフィールドへと足を踏み入れることになった。
(冒険者ランクなんて関係ない。僕たちは、僕たちなりのやり方で強くなるんだ)
ソウタの胸には、冒険者ギルドへの依存を脱却し、採取士ギルドを街の絶対的な存在へと押し上げるという野望が芽生え始めていた。
ダンジョンの入り口であるビーカルの門の前。ヤフジの背中を追うナナミたちの瞳には、恐怖よりも期待の色が濃く浮かんでいた。ソウタが見守る中、採取士ギルドの歴史が、また一歩大きく動き出そうとしていた。




