第31話 運命の鑑定、そして新たな家族
翌朝、ソウタとナナミが朝食を囲んでいると、慣れた様子で執事のヒンカネがコエザを案内してきた。
「よぉ、ソウタ! 今日は奴隷商に行くのじゃろ」
コエザは当然のように空いている椅子に座り、メイドのリエが運んできた朝食を当たり前のように食べ始める。ソウタにとっては今や見慣れた光景だ。
採取士ギルドでジメイと合流した一行は、都市の端にある古びた、重苦しい雰囲気の建物へと向かった。
「ソウタ男爵様、本日はお越しいただきありがとうございます」
奴隷商の主が出迎える。建物内はカビの匂いと古い木の軋む音が混じり合い、ソウタは(幽霊でも出そうだな……)と心の中で苦笑した。
商談室に通され、ジメイが用件を簡潔に伝えると、すぐに奴隷たちの選抜が始まった。連れてこられたのは、まだあどけなさが残る五人の少年少女たちだ。ソウタは鑑定のゴーグルを装着し、一人ずつ視線を走らせる。
その時、一人の少女に視線が釘付けになった。
(この子は……モモカ?)
ソウタは驚いた。彼女は将来、勇者の仲間に加わることになる「探索者」の資質を持つ少女だった。隠密や隠蔽に長け、やがて忍者や暗殺者として大成するはずの運命。
(今、俺が買わなければ、彼女は過酷な運命を辿ることになる……。採取士としての素養も高い。これは、絶対に買いだ)
ソウタは五人に向かって穏やかに語りかけた。
「君たちには、薬草の採取をメインに働いてもらいたいんだ。問題はないかな?」
四人は即座に「はい!」と答えたが、一人だけ、一人の少年が口ごもった。
「……俺は、将来冒険者になりたいんだ」
配下の男が叱責しようとしたのをソウタが手で制し、その少年を真っ直ぐに見つめた。
「これは領主様肝煎りの重要な仕事だ。途中で辞められるのは困る。……君の夢は尊重するが、このギルドには合わないかもしれないな」
ソウタは少年の将来を思い、あえて彼を指名から外した。後の未来で、彼が盗賊団の手に落ちることになるとは知る由もない。
「ジメイさん、モモカ……その子を含む四人を購入する」
「承知いたしました」
手続きはスムーズに進み、ソウタは契約を交わした。モモカを含む三人の少女と、一人の少年。彼らはソウタの瞳に宿る誠実さを感じ取ったのか、どこか安堵した表情を浮かべていた。
屋敷への帰り道、ソウタはモモカの背中を見つめながら(この子たちの未来、俺が守ってやるんだ)と静かに決意する。彼にとっての採取士ギルドは、単なる組織ではなく、大切な「居場所」になりつつあった。
男爵の屋敷には、昨日よりもさらに賑やかな風が吹き込もうとしていた。ソウタの採取士生活は、本当の意味でここから家族と共に歩み始めるのである。




