第27話 断罪の果て、そして日常への帰還
広場に緊張が走る中、商人ギルド長ニーオヤが立ち上がり、カイズを冷徹な眼差しで睨みつけた。
「『狂鬼』の暴走が、どれだけの経済損失を生んだか理解しているのか。ソウタ殿の採取が止まったことで、都市の物流は停滞し、商人たちは多大な損害を被ったのだ」
錬金術ギルド長ヒンマルもこれに同意し、回復薬の枯渇がいかに街を危機に陥れたかを淡々と語る。広場の冒険者たちは、自分たちが信奉していたものが、いかに浅はかな嫉妬に基づく妄想であったかを突きつけられ、沈黙せざるを得ない。
その時、領主であるビーカル伯爵が悠然とステージに上がった。気さくな振る舞いとは裏腹に、その鋭い眼光は広場全体を支配する威圧感を放っていた。
「『狂鬼』の罪は重い。だが、死刑は早計だ。貴様らは終身鉱山奴隷として、その身を粉にして働き、商人ギルドと錬金術ギルドへの損害を一生かけて償え」
死を覚悟していた『狂鬼』のメンバーは、その言葉に一瞬だけ安堵の色を見せたが、続く言葉に顔面蒼白となった。
「なお、損害額は貴様らだけでは到底足りん。カマルカ、お前もだ。そして、真相も確かめずにソウタ殿を追い詰めた全ての冒険者に、高額の罰金を科す」
「そんな! 私も騙されたんです! 罰金なんて酷い!」
カマルカの絶叫が広場に響くが、ビーカル伯爵は冷淡に切り捨てた。
「冒険者ギルドという公的な立場で、裏付けも取らず弱者を糾弾した責任は極めて重い。都市の損失は貴様らの無知と嫉妬が生んだものだ。罰金で済むことを感謝せよ」
伯爵の言葉に、反論しようとしていた冒険者たちも戦慄し、その場に膝をついた。それは、権力者による絶対的な判決だった。
静寂が広場を支配する中、コエザは小さくソウタに囁いた。
「……終わったようじゃのう。さて、ソウタ、お主には領主から特別褒賞が出るそうじゃぞ」
驚くソウタの元へ、ビーカル伯爵が歩み寄る。
「ソウタ殿、いや、これからはこの都市の最重要人物として敬意を表そう。君の採取の腕と、その誠実さがこの都市を救った。今後はギルドを通さずとも、我が城が直接、君の薬草を買い上げよう」
観衆から、先ほどまでとは比較にならないほどの拍手が巻き起こる。それは嫉妬ではなく、心からの称賛だった。
こうして、ソウタを巡る騒動は幕を閉じた。
『草毟り』という蔑称は消え、彼には「街の賢き守り人」という新たな名が与えられた。ソウタは戸惑いながらも、隣で得意げに尻尾を振るリャンゾウの頭を撫でる。
平和な採取の日々が、より確固たる地位と共に戻ってくる。ソウタの静かな冒険者生活は、ここから新たな章へと進んでいくのであった。




