第25話 喝采の広場と、崩れ落ちる嘘
城壁都市ビーカルの中央広場は、朝から熱気に包まれていた。薬草不足による深刻な物価高騰と回復薬の品不足。市民、商人、錬金術師たちが集まり、広場は立錐の余地もないほどの人だかりとなっていた。
「おい、元凶はどいつだ!」「さっさと裁け!」
怒号に近い声が飛び交う中、ソウタはステージ裏で膝を震わせていた。
「やっぱり無理だよぉ……こんな大勢の前に出るなんて」
「何を言っておる。お主は堂々としておればよい。……それに、お主が必死に採取してきた薬草のおかげで、街がどれほど救われていたか。彼らはそれを知りに来たのじゃよ」
コエザの力強い言葉と、カモリナが握りしめる手の温もりが、わずかにソウタの恐怖を和らげた。
「皆のもの、静まれぇ!」
役人の声が響くと、広場がしんと静まり返った。
「我が都市の物流を支えてきた立役者、採取士のソウタ殿と相棒のリャンゾウを紹介する!」
その瞬間、観衆から割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。
「ソウター!」「リャンゾウちゃん最高!」
ソウタは呆然として固まった。自分がただ黙々と採取していただけの毎日に、これほどの応援があったとは夢にも思わなかったのだ。
ステージに押し出されたソウタを見て、観衆に紛れていた冒険者たちは言葉を失った。
「おい、あの『草毟り』が……こんなに人気があるのか?」
「馬鹿な……俺たちが見ていた景色と、何か違うのか?」
その隣で、ギルド長コヤマザの厳しい視線にさらされていた受付嬢カマルカは、顔面蒼白だった。
「ギルド長……『草毟り』があれほど人気だなんて、聞いていません……」
「カマルカ、言葉を慎みなさい。彼を『草毟り』と呼ぶことは、今やギルドの品位を疑われる行為なのだよ」
その一言で、カマルカは自分の立場が完全に詰んでいることを悟った。昨日まで自分が先導して追い詰めていた相手は、実は街の救世主だったのだ。
そして、衛兵に引き立てられ、手枷をはめられた『狂鬼』の五人がステージの中央へと引きずり出された。
「さて、ソウタ殿を襲ったと主張する『狂鬼』、そしてソウタ殿の言い分を聴こう。まずは『真実の箍』を装着してもらう」
ギルド長が掲げた金色の輪。それを見た瞬間、カイズたちの顔から血の気が消え去った。
「は、はぁ!? あんたたち、本当に襲われたの!?」
カマルカがヒステリックに詰め寄る。彼女もまた、自分が加担した「冤罪」の大きさを悟り、恐怖でガタガタと震え始めた。
「ち、違う! 俺たちは……!」
言い訳をしようとするカイズだが、コエザが冷ややかな微笑を浮かべてそれを見下ろす。
「さあ、弁明の時じゃよ。何一つ嘘は許されぬ、真実のみが語られる裁判の始まりじゃ」
広場の空気は最高潮に達した。今、ソウタの静かな日常を壊そうとした愚か者たちの、すべてが剥がれ落ちようとしていた。




