第24話 断罪の夜、そして新たな始まり
都市の夜闇を縫うようにして、背後を気にしながら歩く『狂鬼』の五人。彼らの逃走劇は、予想よりも遥かに早く幕を閉じた。
「……こんな荷物を持ってどこへ行くのじゃ? 夜逃げか?」
行く手を遮るように現れたのは、少女の姿をした賢者、コエザだった。その声音は冷たく、街灯の光さえも凍りつかせるような威圧感を放っている。
「けっ、ただの小娘が! 錬金術ギルドの回し者か何か知らねえが、殺されたくなかったらそこを退け!」
リーダーのカイズは、恐怖を隠すためにあえて怒号を上げ、剣を抜いた。周囲の四人も同調して武器を構える。だが、それは彼らにとって最後にして最大の悪手だった。
「これで言い訳はできんぞ。小娘一人を五人がかりで殺害しようとした事実は、誰にも覆せぬのじゃ」
カイズが渾身の力で振り下ろした剣は、コエザの周囲に展開された目に見えない障壁に阻まれ、甲高い金属音とともに弾かれた。
「ちっ、障壁か!」
その瞬間、背後から無数の足音が響く。
「現行犯逮捕です。コエザ様、完璧な囮のご協力、感謝いたします」
暗闇から現れたのは、都市の治安を守る重装備の衛兵たちだった。カイズたちが振り返る暇もなく、衛兵たちの習熟した連携により、五人は次々と刺股で拘束されていく。
「ちくしょう! 離せ! 俺たちは……俺たちはただの冒険者だ!」
「もう駄目だ……あぁ、死にたくねえ……!」
哀れな命乞いを繰り返す彼らを、冷ややかな目で見下ろす影が二つ。コエザの隣には、複雑な表情を浮かべたカモリナが立っていた。
「こんなことだと思ったわ。ソウタくんが、ただの冒険者に手を出すような子じゃないことくらい、ずっと分かっていたもの」
「これで明日の公開裁判は盤石じゃな。ソウタを『草毟り』と蔑み、その尊厳を傷つけた連中の末路、しかと見届けてやろうぞ」
カモリナは溜息をつき、遠ざかる衛兵たちの背中を見つめた。
「……冒険者ギルドの面目丸潰れね。でも、自業自得よ」
その夜、『狂鬼』の五人は冷たい牢屋の壁に背を預け、明日に控える国宝『真実の箍』による断罪を想像して、震えながら夜を明かした。
一方、コエザの屋敷で静かに眠るソウタは、何も知らずに穏やかな夢を見ていた。
彼が明日目覚めたとき、街の空気は一変している。嫉妬と悪意に彩られた「草毟り」という蔑称は消え去り、彼は自らの実力と功績で、都市の英雄へと昇り詰めていくことになるのだから。




