第23話 明かされる真実と、ギルド長の決断
冒険者ギルド長コヤマザ・キビナスの執務室は、重苦しい沈黙に包まれていた。
「『草毟り』の従魔を殺処分せよ。回復薬が入らぬのは奴のせいだ」
カイズたちの傲慢な訴えを聞き終えたコヤマザは、深い溜息をついて眼鏡を拭った。
「カイズ、錬金術ギルドからは『狂鬼』こそがソウタ殿を襲ったと聞いておるぞ」
「……何を言うのですか!? 俺たちが嘘をついていると?」
コヤマザは鼻で笑った。
「知らぬのか。ソウタ殿はここ数年、都市の物流と経済を支える最大の功労者なのだ。商人ギルドも、領主ですら彼の恩恵を認めておる。冒険者たちが嫉妬心から彼を『草毟り』と呼んでいる間に、彼は既に街の影の立役者となっていたのだよ」
その言葉は『狂鬼』の面々に強烈な衝撃を与えた。
「へぇー、そうなんだ……」
受付嬢カマルカが間の抜けた声を出す。彼女にとって、それは全く予想外の事実だった。
「この問題が解決せねば、錬金術ギルドは冒険者への回復薬供給を永久停止するとまで言い切っておる。ソウタ殿が仕事を休めば、この都市の冒険者は全滅だ。……お主ら、無実だというなら、明日の公開裁判で全てを明らかにしよう」
コヤマザは静かに机の上の木箱を開けた。そこには、金色の輝きを放つ輪――国宝の魔道具『真実の箍』が収められていた。
「えっ……まさか、それを?」
カイズの顔から血の気が引く。『真実の箍』を頭にはめれば、嘘は決してつけない。もし強盗未遂が露見すれば、錬金術ギルドの意向通り、彼らの命はない。
「錬金術ギルドが総力を挙げて用意した。強盗が明らかになれば、貴様らに下されるのは『処刑』だ。無実なのだろう? ならば恐れることはあるまい」
「えええええ! た、ただ報酬を少し分捕ろうとしただけで死刑ですかぁ!?」
カカメが叫んだ瞬間、カイズたちが慌ててその口を塞いだ。
「んごっ! んぐぐ……!」
「貴様ら……! まさか最初から嘘をついていたのか?」
カマルカが信じられないものを見る目で彼らを睨みつける。彼女もまた、ソウタを陥れることで保身を図ろうとしていた自分に、深い嫌悪感を覚え始めていた。
「……ま、明日の朝一で公開裁判を行う。逃げ出せば即刻指名手配だ。……下がれ」
追い出されるように執務室を後にした『狂鬼』のメンバーたちの顔は、死人よりも青ざめていた。
「どうするんだリーダー! 『真実の箍』なんて使われたら一発で終わりだぞ!」
「……夜逃げだ。今夜のうちに街を出るぞ」
しかし、彼らが路地裏に身を潜めた瞬間、暗闇の中から複数の気配が立ち上がった。ギルド長も錬金術ギルドも、彼らが「逃亡」するという選択肢さえも予見していたのだ。
ソウタの平和な日常を壊そうとした代償は、彼らが想像するよりも遥かに重く、そして速く彼らの元へと迫っていた。




