第20話 理不尽な略奪者と、雷獣の制裁
夕暮れの路地裏に、冷ややかな影が伸びる。Cランク冒険者パーティー『狂鬼』の五人が、ソウタを完全に包囲していた。
「おい! 『草毟り』! 今日は薬草を沢山毟ったか?」
リーダーのカイズがニヤニヤと卑しい笑みを浮かべて近づいてくる。ソウタは突然のことに肩を跳ねさせた。
「ひゃ、ひゃい?」
「俺はCランク冒険者『狂鬼』のリーダー、カイズだ。……言わなくても分かってるよな。いつも俺たちがモンスターを倒して森を掃除してるから、お前みたいな軟弱者が安全に薬草を採取できてるんだ」
「はぁ……?」
ソウタは思考が追いつかない。自分が森に入れば、リャンゾウが危険を察知し、必要とあれば排除してきた。この男たちが何をしているのか、何を恩着せがましく語っているのか、さっぱり理解できない。
「いいか、今日はその日頃の恩に誠意を見せろ」
「おらはカカメだ。今日採取した薬草を全部置いていけ。俺たちが貰ってやる」
「命を懸けてる俺たちに感謝して、報酬を差し出せ」
四方八方から投げかけられる威圧的な言葉。逃げ場などどこにもない。恐怖で心臓が早鐘を打つ中、ソウタは震える声で精一杯の抵抗を試みた。
「お、俺が……採取した……物は、俺の……」
「おい! 違うだろぉ! お前のモノは俺たちのモノ。俺たちのモノは俺たちのモノだぁあああああ!」
カイズの怒号が響き渡る。周りのメンバーも嘲笑しながら、腰の剣を抜いた。夕陽を反射する冷たい刃が、ソウタの顔を青ざめさせる。
(なんで、こんなことに……! 逃げなきゃ、でも足が動かない……!)
その時、頭の中にリャンゾウの力強い念話が響いた。
(ソウタ、怖がるな。俺がついてるキュウ。此奴ら、殺すかキュ?)
(わ、わわっ、殺すのはダメだよぉ!)
(じゃあ、死なない程度に、徹底的に遣っつけてやるキュ)
カイトが剣をソウタの頬に押し当て、脅しをかける。
「何モタモタしてんだよぉ! 早く出すもん出して楽になれよ、なぁ!」
その瞬間、リャンゾウの身体が眩い光を放った。
――バチッ!!
凄まじい稲妻が走り、カイトの身体を突き抜ける。彼は断末魔の叫びを上げる間もなく、白目を剥いてその場に崩れ落ちた。口から泡を吹き、全身を痙攣させている。
「カイト! おい、大丈夫かぁ!?」
仲間たちが騒然とする中、リャンゾウは一瞬たりとも止まらない。目にも止まらぬ雷光のような動きで、残りの四人の懐へ飛び込む。
ビリッ、バチッ! と乾いた音が響くたびに、『狂鬼』の面々は一人、また一人と地面に伏していく。数秒後、路地裏には焦げ臭い煙とともに、気絶した五人の男たちが転がっていた。
(今だ、逃げるキュ!)
リャンゾウの言葉に、ソウタはようやく正気に戻る。
(そ、そうだね……逃げよう!)
ソウタは逃げるようにその場を駆け出した。後ろで倒れている者たちのうめき声が、遠ざかっていく。
モブキャラとしての平穏を願うソウタの旅路は、こうして「冒険者パーティー壊滅」という、決して引き返せない一線を越えてしまったのである。




