第17話 採取士の躍進と、募る嫉妬の影
冒険者ギルドの扉をくぐると、受付のカモリナが目を丸くして駆け寄ってきた。
「ソウタくん! あなたに指名依頼が来ているわ。それも、あのコエザさんからよ!」
「あ、はい……昨日の今日ですが、お引き受けすることになっていまして」
ソウタが淡々と答えると、カモリナはさらに驚いた表情を見せた。
「あなたがコエザさんと知り合いだったなんて! コエザさんはこの都市の錬金術師の頂点に立つ大御所なのよ。そんな人が、冒険者になったばかりのあなたを指名するなんて、ギルド内が騒然としているのよ」
(そんなに凄い人だったのか……昨日は少女にしか見えなかったけど)
ソウタは内心で冷や汗をかきつつも、採取士としての自信を胸に依頼を受諾した。冒険者としては初心者だが、薬草採取の腕だけは誰にも負けないという自負があったからだ。
◇◇
その日から、ソウタの「採取生活」は劇的な進化を遂げた。
聖獣契約により、相棒リャンゾウとは念話で完璧な意思疎通が可能になった。リャンゾウの鋭い嗅覚で希少な薬草を特定し、遠方のモンスターを事前に察知して安全を確保する。採取した薬草は、コエザから譲り受けたアイテムバッグで鮮度を保ったまま大量収納。鑑定のゴーグルは、今まで見逃していた小さな薬草のサインさえも漏らさず捉えた。
さらに驚くべきは、自身のレベルアップだ。リャンゾウが狩るモンスターから経験値の半分を得ることで、ソウタの体力は日増しに向上していた。今までは休憩を挟みながらでしか進めなかった森の深部へも、今では軽快な足取りで駆け抜けることができる。
村で採取していた頃とは比べ物にならない、短時間での大量収穫。ソウタの稼ぎは、驚くべき速さで積み上がっていった。
しかし、その光り輝く成果は、影も同時に生み出していた。
「おい、またあの『草毟り』がのうのうと帰ってきたぜ」
酒場のカウンターで、低ランクの冒険者たちが苦々しげにソウタを睨みつけている。命を懸けてモンスターと戦い、傷を負い、武器や防具の修理費に頭を悩ませる彼らにとって、装備も持たず軽装で森へ行き、高額な利益を得て帰ってくるソウタの姿は、どうにも許しがたいものだった。
「武器も防具もいらねえ楽な仕事で、俺たちより稼ぎやがって。気に入らねえな」
彼らの視線は嫉妬と悪意に満ちている。ソウタは冒険者として登録し、採取士という正当な職種に従事しているに過ぎない。しかし、その「リッチ」な生活が、必死に生きる冒険者たちの自尊心を刺激し始めていた。
ソウタはそんな陰湿な視線を、なるべく意識しないように努めていた。だが、都市ビーカルという巨大な社会の歯車は、着実に彼を「ただの採取士」という枠を超えた、何者かへと押し流そうとしていた。




