第16話 鑑定のゴーグルと、運命的な再会
アイテムバッグの衝撃も冷めやらぬうちに、コエザはさらなるプレゼントを差し出した。それは、いかにも錬金術師の工房にありそうな、古風ながらも精巧な造りのゴーグルだった。
「ただのゴーグルではない。鑑定の魔道具じゃ」
「鑑定って、あの鑑定!?」
「その通り。雷獣と契約したお主なら、魔力を通すだけで使えるはずじゃ」
リャンゾウが念話で「魔力を通すキュ!」と促す。ソウタが言われた通りにゴーグルへ意識を集中させると、視界の端にコエザのステータスウィンドウが浮かび上がった。
(鑑定の魔道具……。これがあれば、知識がなくても薬草を見分けられる!)
「いいのか、こんな凄そうなものを……」
「妾にもメリットがある。聖獣がいれば少し危険な場所へも行けるじゃろう。妾が欲しい素材を確実に採取してきてくれるなら、安い投資じゃよ」
コエザは楽しげに笑うが、ソウタは引きつった笑顔を浮かべるしかない。
「あはは……レベル1の俺に、危険な場所はちょっと……」
「心配いらぬ。聖獣契約のおかげで、雷獣が倒した魔物の経験値を半分得られるようになっておる。お主はすぐに強くなるのじゃ」
魔法もスキルもない「採取士」のソウタにとって、それは願ってもない朗報だった。ソウタはコエザのステータスをうっかり鑑定してしまい、年齢が「20歳」と表示されていることに気づいたが、賢明にも追求は避けることにした。(ステータス偽装……このおばば、底が知れないな)と心の中で毒づきながら、ソウタはリャンゾウと共に屋敷を後にした。
◇◇
その夜。従魔と一緒に泊まれる宿屋の一室で、ソウタとリャンゾウは静かに向き合っていた。今日一日の出来事を振り返りながら、念話でとりとめもない会話を交わす。
(なぁ、リャンゾウ。お前、本当にすごいよな。聖獣だったなんて)
(ソウタだってすごいキュ。……ねえソウタ、思い出さないキュ?)
(思い出す?)
(前世のことキュ。ソウタが飼っていたゴールデンハムスター、リャンゾウのこと……)
その名前を聞いた瞬間、ソウタの記憶の蓋が開いた。引きこもり時代、唯一自分を癒やしてくれた、二索の模様を持つ小さな友。
(まさか……リャンゾウ、お前、そうだったのか!)
(やっと気づいたキュ!)
二人は興奮に包まれた。ずっと孤独だと思っていたこの世界で、まさか前世の家族が、しかも最強の聖獣となって再会を果たしていたとは。
しかし、ソウタは少しだけ腑に落ちない気持ちも抱えていた。
(……なんでだよ。聖獣に転生したお前が強運で、俺はこれまでのモブキャラ人生だよ。この理不尽な格差は何なんだよ!)
ベッドの上で頭を抱えるソウタと、それを楽しそうに小突く聖獣のリャンゾウ。
前世の絆を取り戻した二人の冒険は、ここから本当の意味で始まりを告げようとしていた。




