第15話 結ばれる絆、そして託された「亜空間」
聖獣という衝撃の事実に言葉を失うソウタに、コエザは楽しげに続ける。
「雷獣に冒険者ギルドの証をつけておるようじゃが、聖獣との契約はしておらぬようじゃのう。契約したいか?」
「契約?」
ソウタは戸惑いつつも、いつの間にかコエザと対等な口調で話していた。見た目が可愛らしい少女の姿であるため、緊張が解けているのだ。コエザもそれを咎める様子はない。
「そうじゃ。モンスターなら主従の『従魔契約』、精霊を呼ぶ『精霊契約』、そして対等な『聖獣契約』……要は、魂の繋がりを持つということじゃ」
「繋がりを持つと、どうなるの?」
「意志疎通がスムーズになり、念話ができるようになる。何より重要なのは、他の者による強制的な従魔契約を防げることじゃ。力ある者に無理矢理隷属させられる運命から、聖獣を守れるのじゃよ」
それを聞いたソウタは即座に首を縦に振った。リャンゾウもまた、自分の意思で力強く頷く。
「お願いします!」
「ふふ、テイムスキルを持たぬお主に出来るのは『聖獣契約』だけじゃな。妾が媒介となって結んでやろう」
コエザが呪文を唱えると、眩い聖なる光がソウタとリャンゾウを包み込んだ。二人の胸の奥で、カチリと何かが噛み合うような感覚。
(ソウタ! やっと意志が通じたキュ!)
(おっ! リャンゾウか?)
(そうだキュー!)
頭の中に直接響く相棒の愛らしい声に、ソウタは目頭を熱くした。
「コエザさん、本当にありがとう!」
「いやいや、媒介しただけじゃよ。聖獣側にその気がなければ契約は成立せん。お主にこれほど懐く聖獣も珍しいぞ」
興奮冷めやらぬまま、ソウタはボンブルおばばからの手紙と、大切に抱えてきた薬草を手渡した。
「ふむ……。ボンブルが採取を教えたか。なるほど、確かに素晴らしい腕じゃ。今後も継続して採取を頼みたい。報酬は弾むぞ」
「分かった。……ただ、冒険者登録をしたから、指名依頼にしてくれると嬉しいな」
「おお、良いとも。そうしよう。だが一点、気になったことがある」
コエザが指したのは、ソウタの持つ薬草の保存状態だった。
「保存方法じゃ。大事に運んできたのは分かるが、どうしても若干の傷みが出る。これでは完璧とは言えん」
「うぐ……それは分かってるんだけど、これしか入れ物がなくて」
謝るソウタに、コエザはニヤリと笑って一つのバッグを差し出した。
「これをやろう」
「え、これ……普通のバッグ?」
「ふふふ、中に入れてみるのじゃ」
半信半疑で薬草をバッグに入れると、次の瞬間、まるで水に溶けるように薬草が視界から消えた。
「えっ!? 消えた!?」
「亜空間収納機能付きのアイテムバッグじゃ。これで採取した瞬間の鮮度を維持したまま納品できるはずじゃよ」
「こ、こんな高級品を貰ってもいいの!?」
「よいよい。受け取り難いなら『貸している』ことにすれば良い。妾の依頼品は、常に最高の状態で届けてもらわねば困るからのう」
コエザの不器用な優しさに、ソウタは胸がいっぱいになった。ただの「モブ」として村を出たはずが、伝説の聖獣を相棒にし、エルフの賢者からも認められた。
ソウタの歩む道は、彼自身の意図とは裏腹に、徐々にその輝きを増し始めていた。




