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多世界転生物語〜偽りの姫の居場所〜  作者: 星実月 希蝶
4章 シェフィ編 再会
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5話 神官長様


 エレが寝ているから、全員で動く事はできない。誰かがエレを見ている必要がある。って話をしていたら、エレが起きた。


 ちょうどよかった。あの時は、想定外が奇跡を呼んだ。でも、今回はそれに期待する事はできない。あの時の奇跡は創世姫あってこそ。

 だけど、絶望だけの状況でもないんだ。エレが起きたという事は、わずかな希望を与えてくれる。


 エレの周囲にピンクの光が漂う。


「……よかった。グリちゃんとのお話できるみたい。それに、ヴィー」


 ぬいぐるヴィーだ。エレがぬいぐるヴィーを抱っこする。それと、僕らにも見えているよ。ゼロの幻覚。


 流石にあの連中も、聖獣の介入なんて考えてなかったんだろう。エレのおかげで、外との連携が取れる。

 それさえできれば、可能性はない断言しなくてもいい。


「ゼロ、状況わかる? グリちゃんは、ゼロが気が済むまで貸すから、お願い」


『言われなくても、協力する。だけど、外から何かできんのか? 』


「それについては僕から説明するよ。ゼロ達に頼みたいのは、暴走の鎮静。中ではできなくても、外からならできる可能性があるから」


 それは、力づくで。理論上は、可能なんだ。問題は、世界への影響と成功するかは賭けという事。

 ゼロ達も、その辺は理解しているんだろう。エクリシェにいるみんなと話し合っている。


 正直さ、成功の確率は、現状かなり低いんだよね。シンプルに火力。

 アディとイヴィとゼロとゼム。アディとゼムは問題ない。でも、イヴィとゼロは心配。そもそも、四人だけで、どうにかなるものかという点。

 せめて、あと二人くらいいてくれれば……


 もしくは、ラジェ。フォルの護衛を任されているんだ。以前まではその意味を理解していなかった。でも、理解した今ならわかる。フォルの護衛は、二人分の火力を補えるくらいの能力がないと務まらないって。


 それでも、確実に成功なんて言えないけどね。


「ねぇ、ラジェ呼べるかな? 」


「護衛の仕事ほっぽり投げてどっか行ってる事を言及されたくなければ、僕らに協力しろ。って言っといて」


 そこまで言わなくても、協力すると思う。

 外の方はひとまずこれで。次は中。僕らができる事。被害の確認。それに、外の方の準備が出来次第結界を張らないとかな。


 エレがぬいぐるヴィーで遊んでいる。退屈になったみたい。

 ぬいぐるヴィーにも働いてもらわないと。氷には炎をってね。

 まぁ、失敗すればとんでもない事になるんだけど。


「ヴィー、炎術で凍っている人を戻せる? ……一応、耐性ありそうな神官長からにしよっか」


「やってみよう」


「ふにゅ? 神官長様どこにいるの? お祭りの最中、誰か見ていない? 」


 僕は見てないかな。遅れてきているから。


「今は祈りを捧げに行っている時間」


「うん。ミドゥの言う通りだよ」


「ふぇ? いいの? 偽名。お仕事の時のお名前使わなくて」


 そこつっこむよね。エレなら。ティアはエレに呼んで欲しいと思うから、こういう時の返し方はね


「うん。聖女としての仕事中以外は、呼ぶ必要ないって気づいたの。だから、エレも以前みたいに、イシュって呼んで。語尾に♡ つけて」


 いなかったよ。今までそんな♡ なかったよ。あれ? 長い事呼ばれなくて、記憶おかしくなった?

 ティア……イシュは、エレに迫っている。エレは「うん。」って何も気づいていない。


「イシュ♡ 」


「エレ〜♡ 」


 愛らしいお姫様達。抱き合っていて。


「……ミドゥって語尾に♡ 」


「……やだよ。♡ は」


 エル……って言ってたら拗ねられそうなミドゥ。理解できないけど、言われた通りミドゥって呼んであげるじゃん。だから、ハートだけは勘弁してよ。


「エレは何を見せられているのでしょう……ヴィー、なんか、二人だけにした方ぎいかもしれない。だから、神官長様探しに行こ」


「そうだな。ギューも一緒に」


「ああ。フォル」


「……うん」


 二人にしないでよ。二人になっていて、恐怖心しか感じてないんだよ。ずっと恐怖だけだから。ほんとに怖いから。一緒にいてよ。「ごめんね〜。」ってイシュまで逃げてくるし。僕が逃げようとしても、ミドゥが手を握って逃してくれないし。


 なんなのほんとに


「ミドゥ、僕らも行こ」


「うん」


 手を握られたまま、僕は神殿の中に入る。


 白い神殿。歩く目的地は、創世姫の像がある部屋。イシュとミドゥの話だとそこにいるはずなんだ。祈りをするのはそこだから。


 ミドゥが聖衣でこの場所に入らないのは、なんか慣れないな。神殿で働くようになってから私服は、ほとんど着ないから。


「……静かだね。普段は聖女様、聖女様って騒がしいのに」


「うん。イシュがいつもどこかに行くから。聖女になったなら、もう少しおとなしさを身につけて欲しかった」


「わぁ、それ僕に言う事かなぁ? 」


 安らぎの聖女。記録はほとんどないけど、神殿に所属していれば、名前は聞いた事あると思う。僕の妹がかつてそう呼ばれていたという事も。その経緯に関しては、上層部しか知らないんだろうけど。


 そこはどうでもいいんだ。そんな称号を持っていても、エレはおとなしくなるどころか、どんどんかわいくなってきている。

 お淑やかさはどこかへ忘れていっているのかなと思うくらいに。


 それも、あの子の魅力なんだけどね。イシュもそうだよ。口ではおとなしくなんて言いながらも、そうならないイシュがいいって、顔に出てる。


「ふにゃぁぁぁぁ⁉︎ 水! 水! 」


「何やってんだ、ヴィー! 氷溶かすだけっつてただろ! 」


「なんか怪しかったから、壁で練習させてよかったよ」


「フォル、冷静に言ってないで、水用意しないと」


 ……えっ?


 エレの焦る声が聞こえたかと思えば……

 ギューの声に続くフォルの声。見てないけど、氷を溶かすために、壁に炎術撃ったと思う。で、失敗。大炎上。


 壁、燃えてるんだけど。思ったより、やばい状態。しかも水系得意いない。


 イシュは水用意しようとしてくれてるみたいだけど、これをどう鎮火しろと?


「……ぅおお⁉︎ な、何が起きているのだ⁉︎ 」


 ……よかったねぇ。結果だけは良くて。神官長の声聞こえた。氷、溶けたみたい。果たして炎の熱によるものなのか。

 神殿が燃えた光景が、氷きっていない意識に入ってきた? それで、自力で溶かした?


 他の声は聞こえてこないから。そうとしか思えない。


「あっ、神官長様」


「安らぎの聖女……エレ様とイシュ。なぜ、創世姫様の守られるこの場所が」


「もう守りないからじゃない? 創世姫も黄金蝶も、守護できる状態じゃくなってるから」


 なんだろう。そこにいないのに、フォルの顔がわかる。今絶対に笑顔だよ。あんな発言しておきながら笑ってるよ。


「笑い事ではないだろう! 早く水を、えええい! 」


 ……巨大なバケツを空から逆さまにしたのかな。今歩いていた場所、壁はあるけど、屋根はないんだ。髪も服もびしょ濡れ。巨大な川みたいな水たまりが出ている。火は消えたけど。


 鎮火の代償高すぎない? これ出店の品物全部だめになってるんじゃないかな。神官長がする事ではないと思う。


 まぁ、店について他人事の僕らには、鎮火したからいっか。だけど。


 エレ達は、大丈夫なのかな。炎上の中心にいたはずなんだけど。フォルが術使うの控えていても、ギューがいるから大丈夫か。


 走って、みんながいる場所に向かう。

 幸いにも、創世姫の像は無事。エレ達も。


「……神官長、ぼくは責任取りませんよ。全てご自分で勝手にやられた事です。ぼくは何も知りませんから。始末書書くのでしたらご自分で書いてください」


 普段っから、面倒な仕事ばっかり回されてるからなぁ。ここぞとばかりに、責任の所在を押し付けているよ。でもね、ミドゥ、一応、僕らにも責任あると思うんだけど。炎術でどうにかしようとしていたのは、僕ら全員なんだから。


 ……アディに頼んでれば、大炎上なんてしなかったんだけどね。そこも含めて、なのか。


「そんなもんはわかっておるわ! ……むっ……見苦しいところを、失礼いたしました。安らぎの聖女……いや、創世姫様」


 もっと早く冷静になりなよ。祭り台無しにする前くらいに。


 ともあれ、一人は助ける事ができた。一番最悪な事態、はひとまず防げたかな。

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