4話 最初の世界
あっっぶなぁぁ。
今、エレいた。いや、エレ達と合流するのはいいんだよ。それはいいんだよ。でも、隣見てよ。隣、僕の。このエレの格好をしたエルを見てよ。
こんな格好したエルを隣にいさせている。いくら僕の意思じゃないとしても、エレに会わせたいと思う? 少なくとも、僕は思わないよ。
とりあえず、白い出店が並び、人が集まっている中。僕らもそこに紛れた。
とはいっても、あっちにはフォルとフィルがいる。オルはエルの居場所がわかる。ギューだって、その気になれば、僕らを見つけられるだろう。
全然、気が休まらない。エルの謎行為のおかげで、祭りを素直に楽しむ事すらできないよ。
「ねぇ、そろそろ着替えてくれないかな。せめて、髪どうにかして」
「やだ」
やだって……
こっちがやだよ。
とりあえず……
小さいけど、チーチーって音が聞こえた。空に、空色の光がぴかぁーと広がる。咄嗟に結界魔法を使ったけど、守れたのはエルとティアだけ。今、ここにはエレ達だっている。みんなは、大丈夫なんだろうか。
まるで時が止まったかのように動かなくなった人々。見た目じゃわからない。でも、あの光は……
みんな、凍っているんだ。
「……エルグ、聞こえてる? 」
『ああ』
「オル達の指示は誰? 」
『イヴィに頼む事になった』
イヴィか。なら、ある程度の状況は言わずとも理解できるか。この件に関しては、神魔聖でないと理解しにくい部分があると思うから。例えば、魔星に対する内容とか。
『シェフィ、どうかされたんですか? 』
さすがは主様。言わなくても頼んでくれるなんて。
「うん。魔星が動いているんだと思う。魔法も術も使われていないはず。なのに、突然魔法が発動した」
『オルとフィルの方にも連絡してみます……その、定期連絡、定期連絡をしてください。状況が何か変わった際も、すぐに、連絡してください』
わぁ、僕の性格わかってるぅ。
「善処するよ。たぶんね」
とりあえず、もう少し状況をはっきりとしてあげないといけないかな。まずは無事な人を確認。
視界に入る限りだといないけど……
「ミドゥ、魔星の動きわかる? 」
「怒ってる。変な実験ばかりする人々に対して」
そっか……世界全てを氷漬けにしないと止まらない可能性もあるか。
「……はぁ……はぁ……いたの……ぷにゅぅ」
エレだ! 僕のかわいいだ⁉︎
やっぱ無事だったんだね。大丈夫と思っていても、その目ではっきりと見るまでは安心できないよ。
「もう! せっかくびっくりさせてやろうと思ったのに、どうしてこんなタイミングで! 」
びっくりさせられそうになってたんだ。
フォルとギューも無事。
「……敵対している組織は全て潰す気か。民間人まで巻き込んで」
「うん。これは流石にやりすぎだね」
魔星が暴走しているだけ。一見そう見える。でも、場所を操作するくらいは既にできている。それを僕らは目にしてきているんだ。
わざわざ平和に過ごしている場所に、こんな事しでかすなんて……
にしても、取り返しのつかない制限時間。そういう事か。
走ってきたから、エレが座ろうとしている。人が見ていない。疲れた。歩きたくないどころか、立っているのもいや。
もうね、エレにとって座らないっていう選択肢がないんだよ。
「ちゅめた⁉︎ フォル、おしりちゅめたい! とってもちゅめたい! 凍った! 凍ったの! ……ふきゃん⁉︎ 」
「あぶねぇ……大丈夫か? エレ」
「うん。ちゅめたかった」
冷たい? 普通の草。凍っている様子はない。それは、人だけじゃないのかな。
ぐすぐす泣いているエレ。慰めはギューがしてくれてる。その間に、僕らは現在の状況について考えないと。
「……急がねぇと、手遅れになるぜ。少しずつだが、生命の輝きが弱まってきてる」
「うん。僕も感じてるよ」
ギューの感じているもの。フォルとおんなじ。生命の神魔聖でしか感じられないもの。そして、僕らは僕らだからこそ感じられるものがある。
生命の輝きは弱まっているみたい。だけど、なんでだろう。僕らの感じ取れる愛の輝き。それは衰えるどころか増しているんだ。
そして、エレとティアもまた、僕らとは違うものを感知できる。
「……魔力と神聖力が混ざっている。しかも、爆発しそうなくらい……一点に」
一点に……いやな予感しかしない。それがどこかにもよるんだけど。
「……もうすぐ……もうすぐ始まる……これで、ようやく」
「エレ! 」
黄金の光が、エレに纏う。光から逃げるように、黒い靄が外へ出てくる。これは……
「ふぇ……エレ……」
「……そう、いう事……人のかわいいシェフィの妹を」
あのぉ、エルさん? 怒る理由を聞くより前に、何を言っているのかお聞かせ願える? 誰の僕だよ。
そんな事はいいとして、一体何が起きているのかだ。
気になる事……ありはしたね。エレにまつわる事で二つ。
その一つ、エルの証言。エレが、魔星になる前におかしかった。この澱みが、関わっていないはずがない。でも、なんで誰も気づけなかったんだろう。僕ら全員が気づかない。そんな事はあり得るのかな。
エルは、違和感があったみたいだけど。
エレは覚えていないと思う以前に、話聞けそうにない。眠っているみたい。
「オルに黙ってろって言われてっが……エレが聞いてねぇなら、いいか。エレに、確認できた限りだと、二つの力が入り込んでんだ。一つは今見たもんだろ。もう一つは、どこまでも慈悲深い何かだ」
「シェフィ、ぼくが以前見た事なんだけど……魔星の件の少し前にエレから、星を滅ぼそうとしていると思われる発言を聞いた」
ギューの証言。そして、新たなエルの証言。両方合わせて考えると、あの行動は、二つの力によるもの。片方は星を守りたい。片方は星を破壊したい。
結果は、星の寿命をわずかに伸ばした。そして、エレが犠牲となった。というか、なりかけた。
それは矛盾の結果か、エレの意志の混入か。
……
今考えても、これ以上の答えは出てこないか。
とにかく、今は目の前の事をどうにかする。それだけを考えないと。エレの件は今は後にするしかない。
「……エレがいないと、ゼロは話聞かないか」
「だろうね。エレには幻覚のゼロが見えてるらしいから」
幻覚のゼロ? 理解できずにきょとんとしてる。
「ゼロにグリちゃん奪われたんだと」
「やるねぇ」
よくエレからしゃぁーってされなかったよ。
「……あれ? ……これは、外部からの協力頼れないかぁ……どうしよう」
通信機の故障。この場所が関係しているんだと思う。場所というか、状況? さっきは繋がったんだけど。
話によると、判断はエレにしてもらう……エレは寝ているからむり。元々僕の役割だから、いいんだけど。この状況に対しては…………
「とりあえず、時間稼ぎだね。回復系でどうにかなりそう? 」
「気休めにすらならないよ……」
「フォル? 」
「……詰み、だ。今の僕らに、魔星が暴走を始めた状態を止める手立ては存在しない。諦めたくはないけど……本来の暴走は、エレのかけらのようにはいかないんだ」
ありとあらゆる可能性。その中に眠るわずかな勝機。それすら見つからないんだろう。
エレから、澱みを除去できた。それだけで、充分な成果なんだと諦める。それか、結果が変わらずとも、足掻く。
僕らに残されたのは、二つか。
「……」
僕も、どうにかしようと考えてはいた。でも、何も思い付いてはいないんだ。暴走を止める方法は。
空を見上げた。澄んだ青色の空を
ああ……世界の終わりって、こうも美しいものなのか。
シュシェリーアのみんなは、どうしてるんだろう。旧聖星国の王都は……
「やっぱ、むりだよなぁ。生まれ変わって生まれた地を、見捨てろなんざ」
「だよね。君ならそう言うと思ったよ。どっからあの時の事を調べ上げたのか知らないけど、見捨てるなんて選択肢、僕らにないか。そうでしょ? シェフィ」
「うん」
あんな事を言っていても、結局君も諦めないんだ。僕も、おんなじ。ギューとヴィーと出会った大切な世界。それに、あの子が星を救おうとした結果の場所。
どんな結末となろうと、最後まで諦める事なんてできないんだ。




