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多世界転生物語〜偽りの姫の居場所〜  作者: 星実月 希蝶
4章エレ編 秘密と記憶
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エピローグ 愛の魔聖の日記


【今日、神聖に会う日。正式には、神聖の卵。まだ、神聖に選ばれたわけじゃないから。聖愛宮殿。桃色のぼくらの新たな城。

 白を基調とした装いで、ぼくは桃色の城に足を踏み入れた。


 空色、それにピンク。ぼくより少し長いのかな。あまり、変わらないかも。

 優雅なというか、無駄のない動きで、くるりと振り返る。その姿を見て、一番最初に思った言葉。

 かわいい。


 対面の日。大事な日。この先一緒に住む相手。その相手とどういう関係でいるのか。きっと今日決まるから。何か言うべきだと思う。出る言葉は、


「強そう」


 だった。


「かわいい⁉︎ えっ⁉︎ 金髪ふわさら⁉︎ 何か言いたそうな目かわいい! 」


 黙っていれば、きれいで愛らしい人。なのに、口を開くと印象がガラリと変わる。元気で、素直。それに、無邪気。


 桃色の城に似合うその子は、ぼくとは違う。


「ねぇねぇ、名前、名前。僕、シェフィム。シェフィム・レディエース・エンシェルト。君は? 君は? 」


 どうしてそこまではしゃげるのか。ぼくにはわからなかった。だからなのかもしれない。こんなに無邪気でかわいいシェフィが、うらやましかったのは。それに、目が離せなくなっていたのは。


 ぼくらは、何かを愛して初めてその力を使う事が許される。誰も愛せなければ、力を使えない。ぼくは、運が良かったのかもしれない。目の前に、それが叶う相手がいてくれて。


 目を輝かせるシェフィに、ぼくは、一目惚れに近い現象が起きていた。もちろん、これは恋情なんかじゃない。もっと、重い。


「ねぇねぇ」


「……ミードゥジョプ。よろしく、シェフィム」


「ミドゥ! 」


 親しい仲以外では、愛称呼びなどするな。初対面なら尚更、そうすべきじゃない。ぼくはそう教わっていた。シェフィは違うのかもしれない。

 でも、それを失礼とは思えない。


 シェフィはどこまでも、愛らしいだけなんだ。


「僕らずっと一緒でしょ。だから、ミドゥもシェフィって呼んで。仲良しの印」


 そう言って渡してきたのは、毛糸でできたハート。形が歪すぎて、ハートだと理解するまでにかなりの時間を要した。


「これ、僕ががんばって作ったんだ。仲良くなりたい人に、これ渡すんだ」


 仲良くなりたい人。ぼくは、それに選ばれた。きっと、初めての人。


「ぼくだけにくれる方がいい」


「じゃあ、ミドゥに全部あげる。ミドゥも僕と仲良しいい? 」


「うん。一緒に暮らすから」


 ただそれだけ。事実。一緒に暮らす以上、ある程度仲良し関係の方が気が楽。なのに、シェフィは目を輝かせて、ぼくに抱きついてきた。というか、飛びついてきた。

 まるで、ご主人様を見つけたペットみたいに。


 わずかな違和感。それで、気づいた。ぼくらは、愛が与えられているのか。近づけば、なんとなくの範囲で理解できるらしい。


 シェフィは、ぼくを愛してなんていない。


 

 後で知った。シェフィは、誰かを本気で愛する事を恐れているようだった。なのに、愛したい。矛盾の感情。愛した結果、悲しい事があったかのようだった。それに、自分の性格で愛される事なんてない。そんな事も言っていたっけ。


 そこを全部含めて、ぼくは、シェフィが好き。きっと、初めて会った日、この出来事があったから。ぼくはどんなシェフィでも好きになれていた。


 毎日一緒に過ごしていても、中々それを見てもらえず。だったら、見てもらえるまで、ぼくはぼくなりに愛情を伝える。


 そう、思っていた。儀式が終わるまでは


 ぼくの儀式。基本的に神聖と変わらない。違うのは、見せられる真実。ただ一つ、ぼくら魔聖は、神聖と違う真実を見せられた。

 それは、星の生命に関して。星は永遠に保つ事はできない。だから、星の生命の存在で、星を生まれ変わらせる。星の生命は、永遠に星に囚われる。それは、星の意思とは違う。


 ずっと、闇の中で想いだけを持つ存在となる。誰かに確認される。その意味では、星の生命は存在を消すと言っていいと思う。


 そして、星の生命は生命の星に生まれた神聖の片割れ。シェフィに初めてできた友達。


「ねぇねぇ、ミドゥ! みてみて! 友達できた! 友達。神聖の友達できた。初めての友達」


 シェフィはそううれしそうにぼくにフォルを紹介した。初めて。なら、ぼくは?

 シェフィは、ぼくについてはこう答えていた。


「ミドゥ? ミドゥは別枠。僕、ミドゥがいないと困るから。なんて言うか……そばにいるのが当然……きょうだい……僕の荷物的存在? 」


 何言ってんのか、半分理解できなかった。でも、ぼくがシェフィにとって特別な存在なんだ。それだけはちゃんと理解できた。ぼくは、シェフィのいなくてはならない存在。

 そう言われたから、今日は飛びつくの避けなかった。なでなでって、シェフィの頭撫でる。シェフィの髪は、見た目通り、触り心地がいい。


「そういえば、儀式のお祝い……僕、こんなのしか買ってないんだけど、いいかな? 」


 そう言って、シェフィはぼくにかわいらしい服をくれた。大事にする。宝物にする。そう誓った。

 ぼくは、シェフィの髪がだいすきだから、髪のケア用品一式とシェフィに似合いそうなぬいぐるみを贈った。

 シェフィは素直。すぐ喜ぶ。それがすきで、その後から定期的に餌付けしていた。シェフィがすきな甘いものを大量に用意しておいて、定期的に渡していると、お礼がくる事もあった。


 一番すきだったお礼は、シェフィを一日中誰がきても独占できる券。すきと言いまくっても、撫でまくっても、シェフィはにゃんにゃんと猫のように戯れてくれる。


 ぼくらの役割が与えられて、それぞれの姫と公式的に会う事ができた後。ぼくとシェフィの時間は減ったけど、夜は二人っきりの時間があった。これからもずっと、二人で一緒に愛をばら撒こう。なんて話もしていた。


 それが変わったのは、間違いなくあの頃。星に異常が起き、解決に勤しんでいた頃。

 どうにかしないと。神魔聖が協力して、方法を探っていた。

 白い聖星宮殿。長い廊下で、歩く少女を見かけた。一人で、何かを呟いていたように見えたけど、聞き取れなかった。ただ、星の存続に関して、真剣に悩んでいるようだった。


「エレ」


 ぼくが呼び止める。普段なら、エレは尻尾を振ってぼくの方へくる。なのに、その日はそうじゃなかった。何も言わず、ぼくがいる事、声をかけた事。何も気づいていないかのように立ち去ろうとする。

 何か悩んでいるんじゃと、ぼくはエレの左手を掴んだ。


「ふぇ? ミドゥ? どうかしたの? 」


 いつも通りのような反応。だけど、少し、反応が薄いとも感じる。


「呼んだのに返事しないから」


「そうなの? 全然気づかなかった」


「……何か、悩みでもある? 」


「ううん……そう……少し眠かったんだ。昨日全然寝れなくて。なんだか、星が存在していそうで……」


 存在している。エレはフォルがすきなんだ。だったら、その方がいいはず。いくらあの話を聞かされていないとしても。そもそも、ぼくらの居場所の星がなくなるなんて、望んでいるはずはない。

 そうじゃなかったら、世界の創世なんてしない。エレは、本気で星を愛しているはず。


「エレ? 何言ってるの? 星が存在しているのは、ぼくらにも、エレにもいい事じゃないの? 」


「……ふぇ? エレ、今そんな事言ってたの? 星は、大切だよ? エレの大切な居場所だよ? 」


 白い宮殿で、わずかに漏れ出る黒い何か。それは、どこからきているんだろう。エレは、自分が言った言葉を全く覚えていない。

 だから、気のせい。そう思っていた。そう思わなかった方が良かった。後悔した時には、もう遅かった。


 ぼくが、その違和感を見逃した数日後、エレは、自らが犠牲になる方法をとって、星を救った。


 ただ一つ、気になる事がある。それは、あの日のエレの言葉と行動が真逆という事。エレは星を守るために犠牲になっている。でも、あの日は星が存在していない方がいい。そういう意味にしか捉えられない発言をしていた】

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