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多世界転生物語〜偽りの姫の居場所〜  作者: 星実月 希蝶
4章エレ編 秘密と記憶
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9話 残せるもの


 アスティディアでも、色々とあったの。あの雨、魔聖に魔星が気づかない。どういう事だったんだろう。それに、電系の魔法具が噴水に設置されていたのも。

 アスティディアのあの、機械的街並み。エレはすきなの。あの街並みは、今も変わっていないといいの。


「噴水……」


「うん」


 それに、異空間でエレが見つけた影のような闇のような家具達。生活していたかのような。あれも不思議。


「家具……もしかしたら、あの洞窟の家具がその空間に落ちたのかもしれないね」


「うん。それに」


 星の常識と世界の常識。あの時のエレは、咄嗟に否定した。自分が否定されているかのように感じて。でも、そうじゃなかった。

 それを知っている間に、シェフィ達の方では、神殿の書庫にユグベーズ手記が消えている事を知ったの。ユグベーズ手記だけじゃない。何か手がかりが得れそうな本は一通り消えていた。


 フォルは呪いの聖女の件を、結果的には抹消できただろうとか言っていたの。でも、不思議な事が一つあるんだ。

 エレ達が来る前に、あの組織の人達は撤退していた。フォルがどんな選択をとっても良かったと言っているみたいに。


 リミェラねぇの記憶にあった部分もそうだけど、ノヴェにぃ達が出会ったエレのかけら。どっちも記憶がない。


「神殿の書庫から本を盗まれた? なんて事あり得なさそうだけど……」


「不思議なの」


「そうだね」


 そういえば、フィルは今シェフィと一緒なんだよね。シェフィは、待っているのが大変だったみたい。でも、エルのおかげで立ち直れていたの。あの時の毒無効物理特化チートってどういう意味なんだろう。


 ゼロがロストが寒くなっているって言っていたのも気になる。どうして寒くなっているのか。何か異変でもあるんじゃないかって。


「……あれはまだ原因がわかっていないんだ」


「そうなんだ。他は」


 フォルを探している時、エレは愛の星に転移したの。らぶらぶいっぱいだった。それはいいんだけど、どうして、星に転移したのかは不思議なところ。エレはフォルを探そうとしただけなのに。

 しかも、もう一度使ったら今度は炎の星。本当に謎だった。今でも、どうしてなのか。ちゃんとした答えはないの。


「……転移魔法は、無意識に行きたい場所に行く事がある。なんて言うけど……そうじゃなさそうだね」


「疲れちゃった」


「お疲れ様。ねぇ、もう一つだけ聞かせて。君は、あの時どうしてあんな事したの? 僕らが他の方法を考えていたのは、君だってわかってたんじゃないの? 」


 わかってた。ううん、みんなが他の方法を探してくれている。だから大丈夫。そう思ってたの。でも、どうしてなんだろう。自分でも、わからなくて。気づけば、魔星になって星を救う。それしかなくなっていた。どうして、なんだろう。エレが聞きたい。


「……わかんないの」


「君の自発的な行動、というわけではないのか」


「……そういえば、エレもう一個気になる事ある。毒無効物理特化チートってなぁに? 」


「……エレ、寝よっか。ほら、疲れてるんでしょ」


 フォルが強制的に寝せようとしてくる。まだいっぱい堪能したわけじゃないふかふかベッド。そこに連れて行こうとしてくる。


「むすぅ。今日はまだ寝ないの……フォルと、一緒にいたい」


 限られた時間の中、エレが少しでも後悔しないためにも。エレは、フォルと一緒にいっぱいお話したい。いっぱいらぶしたい。少しでも長い時間、起きていたいの。


「……そっか。なら、聞き流すだけでいい。眠くなったら言って。君に、少しずつ僕の持つ知識を渡すから。全部はむりでも、誰かが一緒にいれば管理者をまとめられるくらいには、なってもらいたいから」


 フォルがいなくなったあと、管理者を誰がまとめるのか。今まではフォルがしていた事全てを、誰がするのか。フォルは、エレを選んだんだ。一番、可能性が低いエレを、選んだ。だったら、エレは、フォルのために覚えるのがいいんだと思う。でも、どうして?


 いやだ。いやだ。いやだいやだいやだいやだ。覚えたくなんてない。そんなお別れやだ。どうしても、どうしても、頭で理解しても、やっぱり、納得なんてできない。それでいいなんて思えない。


 ぽかぽか。フォルが、エレを抱きしめる。温かくて悲しい。


「にしても、おかしかねぇか? エレの記憶、報告にあったもんと照らすと、一部が故意的かのように抜けている」


「……そうだね。シェフィのあれに関してというか、シェフィの記憶に関しては、まだ完全じゃない。っていうのは、僕らだけなんだ。あの時、魔星になっていたエレは、対象じゃなかった。なら、シェフィの記憶、全て持っていていいよね? 」


 そういえば、思い出せない事ある。思い出せないといえば……


「ギュリエン。ねぇ、二人もあそこにいたよね? いた、はずだよね? フォルとギューだけじゃない。アディはイヴィ……シェフィだって、いたはずだよね? 」


「その記憶は、僕らは」


「オレもねぇな」


 エレだけじゃない。フォルは、まだシェフィ関連が完全に戻ったわけじゃないみたいだから。でも、それとは関係ないギューまで知らないのは、何かおかしい。エレの記憶だけじゃない。もしかしたら、エレ達みんなの記憶は、どこか、抜け落ちているのかもしれない。


 とりあえず、ベッドの上に移動して座る。ふかふかで、とても眠たくなりそう。


「……ふみゅぅ。エレは考えるのがきらいらしいの。もうね、とっても眠くなってくる」


「エレ、僕の仕事変わるなら、このくらいは考えてもらわないと。書類整理とかも、考える系あるから。ただまとめればいいってもんじゃないよ」


 そうだと思ってたの。まとめておしまいじゃないの? 他にする事あるの? エレは、辞退しようかな。


「……大丈夫だよ。時間が許す限り、僕のそばにおいて、教え続けるから……僕は、君ならできるって評価してるんだよ。だから、少し考えるからってだけで辞めようとしないで」


「諦めるもん。エレはお勉強だいっきらいなんだから……諦めれば、一緒にいてくれるなら……いくらでも諦めるもん……でも、でも……そうじゃないから……がんばんないと……わかってるもん。エレは、もう子供じゃないんだから」


 わかっていてできないのは、別だもん。

 物分かりの悪い子だって思われるのやだ。エレは、フォルにどう見られたいんだろう。もう、何もわかんないよ。

 考えれば考えるだけ、涙が止まらなくなってくる。フォルは、これでいいのかな。納得しているのかな。こんなに、やだって思っているのは、エレだけなのかな。


 わかんないよ。わかんない。もう、何も分かりたくない。

 何も知らずに、何も気づかずに、いられればいいのに。知る事で、どうしてこんなに悲しくならないといけないんだろう。


 カタン——扉が開く音。誰か入ってきたのかな? 見る先、扉を開けたのはフォル。


「……少し、外の風当たってくる。遅くならないうちに戻るから」


「待って! 」


 咄嗟に呼び止めた。なのに、振り向く事すらせず


「ごめん。外の状況も見ておかないとだから」


 そう言って、お部屋の外へ出ていってしまう。


 恋人になって。ただの恋文。ずっとすきだった。全部、本当、なんだよね? フォルはずっと、エレに本当の事言っているんだよね? 疑う事なんてない。そんな必要がないってわかっている。でも、恋人になってなんて言っていたのに、ここまでそっけない態度取られると、思いたくなるよ。


 扉が閉まっても、ずっとそこを見ている。


「……」


 きっと、全部、エレが勝手に思っている事。だから


「……エレ、ちょっといいか? 」

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