8話 報告書
宿は、意外と近かった。ついでに、高級だった。広いお部屋。清潔な白。そしてエレはというと、椅子に座って泣いております。
「これじゃ、だめ? 」
「それを報告書って出したら、破かれるレベルだぞ」
「ふぇ」
エルグにぃとのお約束。報告書の制作。ちゃんとがんばりましたって書いたのに、ギューがだめって言ってくる。他に書く事なんてわかんないよ。
ちなみに、ギューはもう書いてある。エレは、がんばって書いているのに、これで三回目なのに。後何回やり直せばいいんだろう。
遊園地にいた時は全然眠くなんてなかった。だけど、ここにきてすっごく眠くなってきた。文字なんて見たくない。そう思うくらい眠くなっている。
幻覚のゼロは見えない。もう逃げたのかもしれない。もしくは寝た。
「……」
「……ぴぇ」
「……あった事そのまま書けばいいよ。どんなものを見た。何をしていたら何が起きた」
フォル。起きて最初にそれはひどいの。エレの事をわかっていないの。「僕も書かないと。」そう言って座るフォル。エレのお隣に座って、報告書を書き始めている。エレはとっても苦戦しているのに、フォルはすいすいと書いているの。
なんでみんなそんなに早く書けるんだろう。
えっと、遊園地がとても楽しかったです。がんばりました。これならいいかもしれない。
「……エレ、ちゃんと書い……遊園地、初めに何を見た? 」
「廃れてた」
「言うんじゃなくて書いて」
言うんじゃなくて書く。えっと、遊園地に行きました。遊園地は入る前はとても楽しそうな場所でした。入ってみたら、なぜか入り口で見た景色がなかったです。とても廃れていました。これなら初めから来ていないと思うくらいでした。でも、出ようとしたら出入り口消えました。
書いたの。
「うん。じゃあ、遊園地に入った後どうした? 」
遊園地に入った後は、えっと、楽しい場所を探しに向かった。
楽しい場所を探しに歩いていたら、魔物がいっぱい出てきて困りました。魔物は浄化魔法が効かなくて、びっくりしました。あと、魔物は他の魔物と違うっぽかったです。びっくりしました。
魔物がいなくなって、また楽しい遊園地探しました。そうしたら、今度は目の前が真っ白になりました。びっくりしました。よくわかりません。
よくわからないけど、真っ白がなくなると、楽しい遊園地がありました。
楽しい遊園地でいっぱい遊びました。とても楽しかったです。
「書けたの」
「うん。後は……君が書かなくていいよ」
「いいの? 」
「うん。君の場合、まずは報告書を書いて提出する。その練習からだから。エルグにぃ様も、君の報告書で情報を得ようなんて思ってないよ。僕らがいるから」
それもそうなの。そして、フォルはもう報告書かけているの。
どうしてそんなに早いにと思うくらい。
エレは、フォルと一緒にいたくらいで報告書が書けるようになる。そう思ってた時期もあるけど、少し目を離している間に描き終わっちゃうから書けるようにならなかったの。
机の上に置かれた報告書三枚。エレもちゃんと書けたから、後は提出だけ。誰が提出するのか知らないけど。
「ギュー、書けたの」
「書けたな」
「エレ、エルグにぃ様も言ってたけど、君が転生してから今までの事報告書にまとめておきなよ。できないなら日記でもいいから」
「そういや、あの人も言ってたな。報告書でも書いとけって」
フォルだけじゃなくてギューまで。この柔らかい椅子から逃げ出そうかな。もう、書くの飽きた。遊びたい。勉強みたいでなんかや。
「エレ、君はあまりしてこなかったかもしれないよ。でもね、情報をまとめておく。それはここぞと言う時に役に立つんだ。何かあった時、以前に知った事が役に立つ。すぐに出てこなくても、文字にしておけば、いつでも見てこれだってなるんだよ」
それは、そう、そうかもしれないけど。まとめた方がいいのかな。
ノートにまとめておく。収納魔法に入れてあるから。新品のノート。机の上に置く。でも、何から書けばいいんだろう。エレは、シェフィとの交換日記ですらまともに書いた事ないのに。あっ、あの後ずっと三行くらいで終わらせてたらシェフィに泣きつかれたんだった。それで少しだけまともに書いていたかも。それにユグベーズ提出用の日記も。
「エレ、まず……そうだね。君は、リブイン王国で、リブスの国王夫妻の事を知れなかった? 」
国王夫妻……今なら、わかるの。あれは、エレが起きた時だった。その前日までなかったお薬があったのは。あれだけは、飲んで調子が良くなった。副作用も少なかった。
手紙もあったけど、読めなかった。あの狭くて薄暗い部屋の中で、忘れていたもの。シェフィが教えてくれた。
あれは、リブスの国王がエレに与えてくれたものなんだと。
「そっか。そうだっただね。その後も君は、僕が来るまでずっと写本を続けていたんだよね。その時に聞いた不思議な事ってあるかな? 」
「不思議……」
お金稼ぎのためにエレを使っている。それ以外に聞いた事は、あれがあるかも。もうじき、全世界を巻き込むような大戦が起きるかもしれない。そう聞いた気がする。ソファで眠ろうとしていた時。
「……大戦……それ以外はない? 」
「うん。フォルが来るまで、何もなかった」
フォルがリブインで助けてくれた日。両脇のお花。少しだけ変だったかも知れない。ざわざわしていた感じがする。あの時は、そんな事感じる余裕なんてなかったけど。
「花……その後は? 僕と出会ってから、リブインの仕事を手伝ってくれるまで」
フォルのお仕事のお手伝いまで。ゼロが誓いをしてくれた。でも、あれに神聖力ほとんど感じないから、完全にはできていないのかも。エレの身体を思ってなのか、ゼロの能力的問題なのか。それはわかんない。
フォルが、神聖とおんなじにならないでって言ってたのもあるの。今なら、わかる。シェフィの中で、エレの知らないシェフィに触れたんだ。それでね、知ったの。儀式の痛みを。
思い出しただけでも、泣きそうになる。
「……あの時の事は、ほんとにごめん。君に知られたくない。それしか考えられなくて。それで、婚約の事だけ詳しかったのは」
「フォルと結婚できたらって調べておいたの」
「そっか。その後……ジュンドの森の後くらいまでは? ほとんど、僕は一緒にいなかったけど、大丈夫だった? 」
「うん」
あの時は、いろんな事があった。エルグにぃからフォルのお手紙をもらった。書類が散らばった机の上にあったお手紙。シェフィ宛てのお手紙と、エレ宛てのお手紙。そういえば、あの時の手紙の内容。それに、最後の消された一文。あれはなんだったんだろう。今でも、正解はわからない。
「……あれは……もう一度、僕を愛して……あの手紙は、ほんとに、ただの恋文なんだよ」
「ふぇ⁉︎ ……ふにゅ」
他に気になったと言えば、ゼロから星のお話を聞いている時の事。氷の花の温室で、誰かの声を聞いた。女の人の声。あれは、神聖語。
それに、フォルを探しにきた時、シェフィとの記憶があった。シェフィは、あそこが魔物がいないって言ってた。でも、魔物がいたの。
「ジュンドの森に魔物? 」
「うん。それに……」
エレは、汚染されていた時の事少し覚えてる。誰かの意思を感じていた。ずっと。集落の時、雪景色の場所の時。それに、職人街とかリブインとか、自分が望んでいないのに勝手に影響が出ていた。ただ本をみたいだけで、みんなが眠った。ただ、みんなのお助けをしたかっただけなのに、みんなは昼夜忘れて魔法具製作の励んでいた。全部、エレは望んでない。
魔星の事だけじゃない。あの、掲示もだね。
「役目ない神聖、星の最後に役割果たす。愛の双子は、膨大な愛を星に捧ぐ……君らにそんな能力があったんだ」
うん。そういえば、雪景色の場所。あの時、突然かけらだったエレが外界で具現化。お花畑でも。それも不思議。
ここまでは、ほとんどがフォルの知らないお話。ここからは、違うのかな。




