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多世界転生物語〜偽りの姫の居場所〜  作者: 星実月 希蝶
4章エレ編 秘密と記憶
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番外 ゼロ調査隊


 エレのためにも、フォルのためにも、俺らはみんなを見つけるんだ。行き場所は水没都市と呼ばれる場所。今はその近くにある陸地にいる。

 なぜ陸地かというと、問題があるからだ。俺とアディは、海を視界に入れて立ち止まっている。


「なぁ、どうしろと? 」


「入りゃいいだろ。エレじゃねぇんだ。泳げんだろ」


「……」


 服濡れる。エレに好きって言われた服濡れる。俺のエレ。俺のエレは、こんな時どうするんだ。きっと、お洋服なら乾かせばいいのって言う。


 エレとフォルのためなんだ。服が濡れても、海の中に入る。


 ぽちゃん——海が動く音。波紋は綺麗。エレが好きそう。深い深い海の中に、俺らは入るんだ。


 入ってすぐはまだ明るかった。けど、沈んでいくと暗くなる。明かりが通らなくなる。それでも、俺は泳ぎ続けるんだ。服が重い。小魚が可愛い。ピンク色の、エレみたいな子を発見。魚には詳しくないから知らない。

 エレみたいな子も、頑張って泳いでるんだ。


 都市、見えてきた。かなり発展している。海の中に沈んでいるから、魚の棲家になっている。


 都市の中に入る。水中とは思えない。普通に地面を歩いている感覚がある。浮けない。水の中なのに、泳げない。エレの俺は、この問題にも華麗に原因究明していくんだ。それがエレの俺なんだ。

 まず、後ろを見る。入ってきた場所。よく見てみると、薄い膜のようなものが見える。これはおそらく、結界魔法。


 不思議なのは、魚は普通に泳いでいるという事。ここが海と断絶されていれば、魚はここを泳げないはずなんだ。

 どうして魚が泳げて、俺らは泳げないのか。その謎を、エレの俺が解いてやるからな。俺のエレ。俺の目の前でにゃんにゃん言ってる俺のエレ。見てろよ。


 魚は小さい。大きい魚はいない。きっとこれが鍵なんだ。俺らは大きい。魚は小さい。魚は軽い。俺らは重い。


 俺のエレ、謎が解けた。エレの俺が、謎を解いてやった。この謎の答えは、重さだ! 俺とアディは、この辺を泳ぐ魚よりも重い。軽い存在は、ここで泳げて、重いとここは地上と変わらないって仕掛けなんだ。


「エレ、俺のエレ、謎を解いてやった」


「……ゼロ、もう一つ謎あんぞ。こんな場所での目撃証言。そもそも、ここに人の気配はねぇ。なのになんで、姫さんはこの場所で見たという噂を聞いた。姫さんの能力的に、あの精霊の赤子が見てきたわけじゃねぇだろうからな」


 そうだ。エレは、危険な場所にはいくなって言っている。だから、エレに情報を流している子達は、絶対にこんな場所に来ないんだ。なのに、噂がある。これは、この謎の答えは


「アディ、教えろ」


「……誰かの罠。だろうな。目撃証言が曖昧だからなんとも言えねぇが。五人で、外見も一致してりゃ、フォルを誘き出そうとしてたんだろう……って考えんのが自然と思うが、どうなんだ? ルー」


『そうだな。その可能性が一番高い。二人とも油断するな。近くに人も魔物も姿は見えていないが、いつ何が起こるかわからないだろう』


 ルーまでそう言うなら、そうなのかもしれない。となれば、罠に突撃するだけだ。


「な、グリちゃん」


「なぜ我が抱き抱えられているんだ」


 ふっふっふ。エレにバレずにグリちゃんをこっちに持ってきてやったんだ。エレはヴィーがいるからな。これでエレと連絡取り放題。ここだと連絡魔法具壊れるかもしれないから、収納魔法の中なんだ。

 通信機は防水機能あるから。


「そう言えば、グリちゃんの能力……アディ」


「……百、だな」


「ああ」


 グリちゃんの能力聞こうとしたのに。邪魔が入った。百人。全員黒いローブを着ている。エンシュア組織の連中だろうな。

 って事はだ。この噂は、エンシュア組織が関わってる。初めから、予想はついていたんだが。


 ここで氷も炎も相性悪い。なんで俺らがここなんだろうと思うくらい。けど、俺らが術にばっかり頼ると思うなよ。


 アディが相手してくれているうちに、俺は収納魔法から短剣を用意する。その短剣をエンシュア組織の連中めがけて投げる。百発百中。外れ知らず。エレにいいところ見せられた。

 短剣が当たった連中はぐっすり寝ている。魔法にも毒にも耐性あっても、流石に抵抗できねぇだろうな。この俺特製神経毒使用短剣には。俺が愛情込めて育てた毒花からもらってきたものなんだ。


「……」


 俺は寝てるエンシュア組織の連中に近づく。身ぐるみ剥がしてやる。何か情報持ってないか。


「アディ、なんかあった。後で見るから預かるんだ」


 何か見つける度にアディに預かってもらう。全員分の身ぐるみ剥がしたら、十個くらい気になるものを手に入れた。


「ゼロ、目撃証言に繋がる情報ねぇぞ。むしろ、向こうもそれについて調べにきてたみてぇだ」


「なんで? こいつらがフォルを誘き出そうとしてたんじゃねぇのか? ……一人くらい起こしとくべきだったかも」


 アディと俺が一緒だと、その発想が消えてるんだ。ぐっすり寝ていて起きそうにない。想定が外れた時の事考えてない。


「エレ、俺のエレならどうするんだ……」


『ゼロ、そこに黒い影があったとか書いていない? 』


 通信機から聞き馴染みのある声。俺の大好きな声だ。


「ゼム⁉︎ ない! 何も書いてない! 」


 俺の双子の兄。氷の神聖ゼムレーグ。俺の一番大好きな存在なんだ。

 ゼムは、かなり抜けているけど、仕事はできるんだ。仕事だけはしっかりしてるんだ。


『……なら、もう少し探索してみて』


「ああ。みる」


 俺のゼムが言うからそうしてみる。俺のゼムが言うから。

 エンシュア組織じゃなくて、ゼムが考えているのは多分澱みの塊みたいな存在。なんでそんなもん探すか知らないけど。


 あっち見てこっち見てそっち見て。探せど探せど何もない。あるのは、綺麗な水。珊瑚も見つけた。神殿みたいな建物も見つけた。真っ白い建物。ここは昔どんな場所だったのか。ここにいた人達がどういう生活をしていたのか。それが見えてくる気がするんだ。


「ゼロ、なんかあったぞ」


 アディがなんか見つけた。普通に落ちてる。緑色の紙。何も書いてない。ただの緑色の紙。なんでこんなのがあるんだと幻覚のエレに聞いてみる。幻覚のエレはにゃんにゃんしてる。

 きっと、これは重要なものなんだ。一見何もない気がするけど、何か重要な秘密が隠されているんだ。

 幻覚のエレも多分そう言ってる。


「あっ⁉︎ アディ、なんかいる! 」


 猫だ。どう見ても猫だ。どっからどう見ても普通の猫だ。迷子になったかもしれないから、グリちゃん頭に乗せて猫抱っこする。


「にゃぁぁ‼︎ 」


 猫が、猫が抱っこしたら鳴いて消えた。なんか、小さい丸い飴みたいなのになった。色は白。


「……魔法具だな。目撃証言についても、こいつじゃねぇか? 」


『かもしれない。もう少し調べて何もなかったら帰ってきて。深追いは禁物だから』


 ゼムがそう言うなら。ところで、アディはなんで魔法具ってすぐに気づいたんだ? 俺は見ても気づかなかったのに。魔法具に関しては、エレがすごいんだ。俺の幻覚のエレはものを持てないから、帰ったら本物のエレに渡す。


「……これ以上は何もなさそう」


 そこまで奥に行かないようにしながら、何かないか探す。何もなかった。今回の探索はこの辺にする。二人だけでの深追いは避けるべきってゼムも言うからな。俺とアディなら平気な気もするけど。


 今日はこれで帰る。けど、転移魔法使うのは陸に上がってから。結界の外までは歩いていく。


「……魚……大群……猫……仲良くする不思議……魚も魔法具⁉︎ 」


「魚は魚だな」


 魚は魔法具じゃなかった。ここにいる全部の生き物が魔法具じゃない。きっとこれは持ち帰るべき情報だ。


 結界の外に出たら、普通の海。泳げるから、泳いで陸に上がる。何もなかったが、とりあえず任務完了。

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