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多世界転生物語〜偽りの姫の居場所〜  作者: 星実月 希蝶
4章エレ編 秘密と記憶
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4話 誰かのためと願いぶつかり


 とても輝いている氷の崖。そこに、フォル達もきた。ギューは、ここが目的地なんだと知っていたかのよう。


「どうして逃げるの! 」


「逆に、どうしてついてくる」


「君を、止めたいから」


 止めたい? それに、この声——ずっと、フォルのそばで聞いていた声。黒い鳥の姿をしていた、フォルの眷属。本名を知らずに、エレ達はクロって呼んでた。見た目そのまま。


「止める? 止めてどうなると言うんだい? 止めたところで、ボク以外の誰かが、同じ事をするだけだ! 」


「……それは」


「だったら、ボクが引き金を引く。全ての恨みを終わらせる引き金を」


 恨み。どうして、なんだろう。彼女からは、確かに澱んだ感情がある。でも、それ以上に、美しいと思えるものがある。

 何があれば、こんな感情を持つんだろう。


 凍える世界で、とてもあったかいその奥にあるもの。


「止めるの! たとえ、全てを騙しても、復讐なんて誰にもさせない! 」


 俯くフォルに、エレがあげられる言葉。あの日、フォルが言ってくれたの。世界を騙してもエレを守るって。なら、エレは、全てを騙してでも、フォルの大切を全て救う。


 フォルと目が合う。ありがと。口がそう動いていた。


「君にも、他のみんなにも、そんな事はさせないよ。だから、そんなくだらない復讐よりも、僕を選んで」


「……は? くだらないって」


「くだらないよ。そんな、犠牲ばかりの方法。君だって、そう思ってるんじゃないの? 問題定義は大事だと思う。でも、その方法は君を嵌めた連中と同類だと言ってるだけだ」


 あの頃のままだったら、こんな言葉聞けなかったのかな。言葉を選ぶフォルを見ていると、人はみんな何かに少しずつ影響されているのかな。そう感じる。誰かの救いの言葉が、やがて他に向けられる。影響というより、循環に近いかもしれない。

 その言葉は、何かを変える事ができたのかな。数十秒だけど、言葉が止まる。


 ひらぁひらぁと、落ちてくる光を放つ氷の宝石。二人を邪魔しないようになのかな。ギューが小声で「これが狙いだ。」って教えてくれる。でもね、狙いだなんて言われても、エレには何が何だかわかりません。もっと詳しく教えてくれないと。


 狙い。多分エレ達じゃなくて彼女の狙い。それが何につながっているのかなんてわからなくても、そのくらいは理解できる。なのに、彼女は動かない。光る氷の宝石を拾おうとしていない。


 エレが両手を上に向けていると、氷の宝石が、えれの手のひらに落ちてきた。小さくて冷たそう。保温魔法のおかげで、冷たいって感じないけど。

 氷なのに全然溶けない。ゼロの術のように特殊な氷なのかな。

 どうやって使うのかわからないから、とりあえずギューに預けておく。エレ達に必要なのかすらわからないから。手に取ったのは、綺麗だったから。


「そんな綺麗事だけで、救われるのなら、誰も泣いてなんていない。同類になるとしても、こうでもしなければ、ボク達は闇の中に閉じ込められたままだ! 」


「本気で、その方法以外ないと思ってるの? そもそも、失敗すれば君だけじゃない。君のように復讐に走る前にと、君とおんなじような子を排除しようとするよ」


 その通り。だと思う。感情に身を任せた事で、周囲を巻き込んだ。そういうお話は、よく聞くお話。そうした事で、みんなが救われる。なんて幻想も存在はしないんだけど。


 本当に、むずかしいよね。気づいたら、ギューの右手を握っていた。


「それでも、このまま何もしないよりは! 」


「何もしないよりはマシだ? そんな理由で、関係もない子を危険な目に遭わせるのは、一時期とはいえ、その子らをまとめていた当主としてどうなの? ただ、危険に晒して、状況はむしろ今までよりも最悪。そうなるってわからない? 」


 子供を諭しているみたい。フォルからしてみれば、子供なのかな。生きた年数を考えれば、世界に生きるほとんどの人が子供のようなものなんだから。転生前を入れていればだけど。


 あっ、光を放つ氷の宝石が消えちゃった。さっき、偶然手のひらの上に乗ってくれてよかった。地面に落ちているのは、いくら保温魔法があってもとるの冷たそう。


「ボクだって、もっと穏便に済ます方法を考えた。でも! それ以外に、闇の中に消されたボク達が、光に戻る方法がないんだ! そのために多少の犠牲だって、仕方がないじゃないかい! それでも、光を見る事が、ボク達の希望なんだ! 」


 あそこの人達も、おんなじなのかな。解放を目指しても、何も変わらず、復讐しかない。そう思っていたのかな。もし、あの人達なら、それで変わるならいい。そう答えるのかな。エレの術の後で、何かが変わっているのかな。


「一人なら、そう、なんだろうね。一人でできる事なんて、たかが知れてるんだ。一人で見れるものなんて、狭いものだよ。でも、視野を広めれば、見つけられなかったその方法だって見つけられるはずだ。例えば、主様が用意した場所で平和に暮らすもあるか。それに、連中が心酔している愛姫の失脚、とかね」


 エルグにぃの用意した場所なら、平和に暮らすのも可能なはず。それに、闇の中ではなく、光を見せるには変わりないにかも。でも、まだ全然教えてもらえてない。彼女がどちらを選ぼうとも、エレ達はきっと


「そんな事、不可能だ! 不可能と知っていて、そんなものに縋るわけ」


「可能だよ。連中がやってきた事に対する証拠を集めるのも、愛姫の失脚も。協力すれば、不可能ではないんだ。連中が何も気づかないでいてくれたおかげで、こっちには本物っていう武器もある事だからね」


 フォルがエレを見る。その通りではあるの。愛の姫。それは、愛の神魔聖の妹。エレとティアだから。

 エレが、全ての状況を変える武器になる。なんて、今はわからないけど。


「何を言ってるんだい。御巫候補が愛姫なわけないじゃない。そんな嘘で、止めようとしたって無駄」


「嘘ではありませんわ。わたくしからも、証言いたします」


 足音がしなかった。玄人なの。素人の動きじゃないの。やっぱり、やっぱり、ルナって


「キミは」


「お忘れですか? わたくしはルーヴェレナ。古の名は、もう捨てましたが、知らないなど仰りませんわよね? ローシェジェラ様」


 ゼロ達が、戦の女神とか、勝利の女神とか、冗談っぽくだけど言う意味、理解できたかも。只者じゃないとかそういう事じゃない。氷の美なの。


「エンシュア組織にいた、青銀の乙女。行方不明と聞いていたけど、裏切られて隠れていたのかい? 」


「いいえ。わたくしは、エンシュア組織に見捨てられた後、現在わたくしが仕えている方に拾われましたわ。彼は、わたくしのために、平和な国を与えてくれましたの。しかも、実験で生まれた暴走まで、受け入れて、解決方法を共に考えてくれましたわ」


 うん。そう。ルナがエンシュア組織の人とは知らなかったけど、ゼロはルナのためにって平和をくれたの。怯えて暮らさなくていい居場所、与えた。


「エレが姫である。その証拠は、ありますわ。そちらの、愛らしいぬいぐるみが証拠ですわ。愛姫は聖獣に愛される。聖獣が守る彼女こそ、本物ですわ」


 そういえば、そんなお話があった気がする。愛し子というのは、愛姫であるという事なのだと。


「……一応、信じよう。だからって、本物がいるからといって、何か変わるわけない」


「エレを過小評価しすぎだよ。本物という武器は使い方がある。とかは置いておいて、普通にエレに任せれば、連中が使ってる魔法機械の情報入手し放題だから」


 それはそうなの。エレは、特別な本を持っているから。でも、他に言う事ある気がする。なんでそこなんだろう。必要ではあるのかもしれないけど。


「ついでに、お薬いっぱい作れるの」


「そういう事。エンシュア組織の信用を落とした後に、愛姫が偽物。ついでに、連中がした事の全責任を取らす事だって、エレに手伝って貰えば可能だよ。そんな、犠牲前提とした方法をとらなくても。そんなんで気が晴れるわけない。とか言われればそれまでだけど……君は、確実性のある方を選ぶだろ? 」


「……わかった。信用する」


 犠牲なんて、本当は出したくなかったんだ。止まってくれてありがと。


「……ルナ、ロジェと一緒に帰ってくれる? 僕らは、もう一箇所行かないとだから」


「ええ」


 ルナ達とは別れて、エレ達は夢見遊園地に行くの。それにしても、美女と美女が揃うと、エレはなんて子供っぽい見た目なんでしょう。って思っちゃう。このお悩みは、フォル達には言えないのです。

 夢見遊園地で、遊べないかと考えている時点で、エレは子供なのかもしれないけど。そこは考えない事にする。

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