1話 噂を解決せよ
夢から醒めたんだ。ゼロもフォルもいる。エレのお部屋。今までを考えれば、そんなに時間は経っていない。なのに、とっても長かった気がする。
「ヴィー、おいで」
白い猫さんのぬいぐるみ。普段はこの姿なの。この方が、近くいれるから。ふわふわと浮いている白猫ぬいさんを両手で抱いて、エレはベッドから降りるの。
何も変わらない。わけなんてない。見る景色は、全然違う。
きらきらとふわふわ。視界の邪魔になりそうなくらいに溢れかえっている。これは、エレが変わったわけじゃなさそう。
きらきらとふわふわは、ゼロとフォルが垂れ流し中。どうして、そんなに垂れ流しているんだろう。
あっ、シャワーとお着替え。ヴィーを連れてくわけにはいかないから、ゼロとフォルの面倒を見てもらっておく。今日のお洋服は、動きやすいお洋服に。
ピキューン!
何かが、何かがエレを呼んでいるの。かけらはもう全部揃った、はず。違うのかな。まだ、足りない何かがあるのかな。
どこから呼んでいるのかわかんない。エレはどこへ向かえばいいんだろう。
わかんないから、シャワー浴びに行こ。
エレのお部屋のシャワーだから、改造式。シャワーの温度は、今日の体温で決まる。勢いは、洗うのに丁度いいように調整される。これぞエレ特製のシャワー。改造した甲斐があったの。改造のために、設計図とか、素材とか苦労したけど。何より苦労したのは、身長の足りなさ。身長無さすぎて、背伸びしても天井設置式の方は届かなかった。
そんなこんなで作ったシャワー。身体をきれいにするの。それでお部屋に戻る。
その間、三十分くらい。なのに、なんで見ていないうちにこんな事になっているんだろう。
ゼロがずっとしゃぁしゃぁしてる。フォルは、相変わらずぼーっとしてる。ゼロ、何があったんだろう。
ヴィーをいさせてよかった。おかげで、事情がわかる。
「ヴィー」
「俺は何もしていない。エレどこだと聞かれて、正直に答えただけだ」
正直に答えただけでどうしてこうなるんだろう。
あっ、ふよふよさんだ。ふよふよさんはね、目に見えない精霊の赤ちゃん。エレにいつも情報くれるの。リブインでも、ちょっとだけ情報もらってた。
今回はどんな情報をくれるんだろう。先払いのお礼。魔力いっぱいあげる。
今回くれた情報は、ちょっと良くないもの。エレ達の目的の一つ。エンシュア組織の件で、かなり動きがあったみたい。よくないのはこの先。同時にいくつか問題発生。
ゼロとフォルに相談したいのに、二人とも相談できそうにない。こういう時は、別の場所を頼るといいの。
とりあえず
「グリちゃん」
小型版グリちゃん召喚。グリちゃんに二人のお世話を頼んでおく。
お部屋から出て、広い廊下を歩く。ぬいヴィーを抱っこして。この呼び方が一番しっくりくる。
「どこへ行くんだ? 」
「アディのお部屋。フォルが情報くれそうにないから」
「なぜそれで師匠に? 」
「ギューにぃと連絡とってもらう。本家様の情報網を使うの」
天才的エレの発想。フォルは今、お話を聞きそうにない。オルにぃは、シェフィと一緒にいる。リミェラねぇも。エルグにぃはちょっと事情あって。という事で、本家の三男にでもお頼みしてみようと思って。
そのために、アディのお部屋に行くの。もうすぐ着くと思う。
「……エレ、忘れ物があるから、こっちにきて欲しい」
ぬいヴィーが離れちゃった。きた方戻ってる。すたたたって、ぬいヴィーについていく。エレのお部屋を通り過ぎても、ぬいヴィーは止まらない。どこへ向かおうとしているんだろう。そう思いながらも、着いて行った先は
アディのお部屋。どうして、正反対にあるんだろう。
どうでもいっか。辿り着けたんだから。謎は謎のままでもいい事はあるの。
とんとん——いるかわかんないから、扉を軽く叩く。返事がない。いないのかもしれない。アディが行きそうな場所って、思い当たりはする。でも、エレは行けないような場所ばかり。
イヴィのお部屋にいてくれればいいんだけど。
ダメ元で、イヴィのお部屋に
「姫さん? 」
「ぴにゃ⁉︎ ふにゃ⁉︎ ぷにぴぃにみゃ⁉︎ 」
後ろからいきなり声をかけられて、びっくりしたの。ぴょんってなったの。
振り返ると、アディがいるの。びっくりした。声をかけるなら、声をかける三秒前に、今から声をかけますって言って欲しい。
「どーしたんだ? 」
「アディが急に声かけるからなの! 」
「……いや、姫さんがそこにいっから」
って、そんなお話は今はどうでもいいの。訝しげにしているアディもどうでもいいの。今重要なのは、そこじゃないから。連絡魔法具が壊れて、エレが連絡できなくなっちゃったから、わざわざきているの。忘れちゃだめ。
「まぁ、ちょうどよかったな。姫さん、クッキー買ったから、食うか? 」
「ふぇ⁉︎ うんうん! 早く行こ。お部屋行こ」
アディのお部屋に入るの。ソファで座って、クッキー待ち。エレが紅茶苦手だから、ジュースを用意してくれる。
クッキー楽しみ。
「ところで、ヴィー。何か用でもあったか? 」
「ギューに連絡して欲しいらしいです。エレは連絡魔法具を壊して、連絡先全て失くしたので」
そんな事あったね。そんな事よりクッキー。チョコチップクッキー。
アディがエレ達の向かいのソファに座る。
「何かあったんか? 」
「うん。情報欲しくて。ヴァリジェーシル本家が持つ情報。えっと、ずっと昔の当主のある噂。魔星実験が行われるかもって噂。神殿での祭事。その日に何か仕掛けようとしているって噂。水没都市に不思議な五人組の目撃証言。夢見遊園地、少年少女行方不明の噂」
いくつも問題発生なの。これを全てエレ達でどうにかしないとは、むりなお話。情報収集からなんだから。しかも
「お話によると、全てが、同じ時間に取り返しつかなくなるかもしれないの。そんな感じのお話を聞いたんだって」
その時間が、全部を並行的に解決しようとしないと、間に合わなくなるかもしれない。あまり、長くはないの。
エレは、クッキーを食べながら解決方法思案中。クッキーは甘くてサクサク。ミルクが合いそう。
「あのね、多分、当主の件はフォルが行くっていうと思う。情報も、フォルなら自分でどうにかすると思う。でも、他は」
教えてくれた情報で、どうにかできる方法があるかもしれない。それを考えるのは、エレの特技じゃない。
ジュース飲む。あまあまさん。少しだけ、クセのある味。でも、きらいじゃないの。色は、薄緑色で、苦そうな感じだったのに。
「水没都市の方は任せろ。イヴィと一緒に行ってやる」
「ゼロも連れてくの。ゼロなら、見間違いなんて起こさないから。となれば、エレ達は夢見遊園地。神殿と魔星実験については、頼めるかもしれない相手知ってる」
記憶があるからこそ、連絡手段がある。そういえば、ヴィーにもクッキーあげないと。ぬいぐるみ状態でも、食べれるみたいだから。
猫さんに餌を直接手渡ししているみたい。なんか、楽しい。
「頼める相手? 」
「うん。エルグにぃなら、シェフィと連絡取れる。向こうには、エルとティア、それに、オルにぃとフィルまでいるの。この二つの件も、どうにかできるはずだよ」
神殿の祭事の時に、見回りしていたとしても警戒されない。シェフィ達なら。
でも、これを許可してくれるとは思ってない。エレは、アディにこれがきっと最適解なんだと視線を送る。
「……知ってる理由は、今度聞いてやる。連絡もしてやんよ。条件付きでな」
「条件? フォルを一人で行かせるなって? 」
「そっちじゃねぇよ。姫さんの方だ。ギューなら、姫さん一人くらい守れんだろ」
アディが、そう言って連絡魔法具を貸してくれる。通話は、繋がってる。時間的に、ついさっき繋げたばっかり。
『師匠、何のご用ですか? 今、手が離せなくて』
久しぶりにギューにぃの声聞いた気がする。
「ギューにぃ……あのね……えっと、忙しいなら」
『エレ? なんかあったか? 』
エレのお話は聞くんだ。こっちも急ぎというか、多分、ギューにぃにとっては、丁度いいんだろうけど。
「うん。えっと、少し情報欲しくて。それと……神殿の祭事の件含めたエンシュア組織関連のお仕事、エレ達お手伝いするから、夢見遊園地の調査、一緒に行ってくれる? 」
『明日の朝、そっち行く』
「うん。ありがと」
ギューにぃ、意外とすんなり許可した。危険だからだめだって言われそうだったんだけど。エレが決めたから、なのかな。
通話は切ってないけど、アディに連絡魔法具返す。何かお話したいと思うから。エレは一旦お部屋から出る。お話、エレが聞かない方がいい気がするから。
その待ち時間を、有効的に使う。フォルから教わった事。だから、早速エルグにぃのお部屋に行く。




