9話 水の中
共通点。それを探す。術関連で言えば、フォルとエレは共通する部分がある。でも、それだとヴィーが説明つかない。
考えるよりも勘でって思うけど、考えているとむずかしい時ってあるんだよね。
また袖を引っ張ってくる。
「……」
今度は、何を言いたいのかな。共通点探しにでも手伝ってくれるのかな。
「……あっ……うん……それなら、エレとフォルは当てはまるよ。ヴィーは……ヴィー、君って、幼い頃とか、埃に弱いとかあった? 」
ついつい、エレに言うように言ってしまう。慣れているのかもしれない。
「あった、と記憶している」
やっぱそうか。どういう理由かはまだわからないけど、共通点はこれだと思う。ゼロが教えてくれたおかげだ。
エレとフォルも、埃で咳が止まらなくなる事がよくあるんだ。
「ああ、そういう事。共通点、僕ら三人は、一度でも、澱みが起こす病にかかった事がある」
まだ、埃しか言ってないよ。あれも、そういわれたら埃反応してたね。治りかけに。
埃も関係ありはした。
「だから、私達はなんともないのね……というか、いつになったら、グリちゃんはくるのよ」
「わかんない。反応なさそう。ゼロ、氷。こうなったら、ろぉじょぉなの」
「籠城? それいいかも」
エレは、適当人任せ。でも、そこがいいんだ。それに、この場所がいやすぎて、籠城なんて思いつかなかった。
「……」
ゼロが氷で周囲を囲ってくれる。天井を覆うと、真っ暗。ゼロの氷は溶ける心配がない。さっきの氷柱は、溶けるようにしていたけど。自分で調整できるんだって。
天井に光魔法のあかりをつける。それに、浄化魔法を使う。この範囲だけだったら、匂いもどうにかなると思う。地面から臭いがきていても、地面も凍っているから。過ごしやすいようにしないと。一時間くらいはここにいないとだから。
神魔聖の書物に載る夜は、深夜帯。
「ゼロ、そろそろ喋ってもいいんじゃないかな」
「臭い消えたから、喋れる。ずっと喋らないのに、みんな理解するから喋る必要ないかもしれない」
そこは言わないお約束でしょ。ゼロが僕に懐いている。すりすりで撫でろと要求してくる。これあれだね。ヴィーの周囲はわいわいかわいい雰囲気。僕の周囲は殺伐とするね。
要求が通らないと、威嚇が始まるから撫でてあげる。そうすると、やっぱりきましたよ。左隣のフォルが。ゼロとおんなじ事をしている。両方が独占しようとしているから、仲良く一緒ににはなれないんだ。
「ヴィー、エレね、ヴィーと一緒にいるのすきなの。だから……エレも撫でてほしい! 」
「今の話とこれは、どこが繋がるんだ? 」
わぁ、純粋な疑問なんだろうなぁ。エレは痛いとこ突かれたなぁ。どこも繋がってないなんて、エレ言えないだろうから。
相手がヴィーだからか、エレが動かなくなった。ティアがエレの顔の前で手を上下に振っている。
そのくらいじゃ、エレは動き始めないと思う。
こういう時は、フォルがいなく——
「エレ、僕のお姫様」
「ふぇ⁉︎ 」
エレが動き始めた。後ろから両手で目を隠して、エレを呼ぶ。そうしたら、エレはこっちを見るんだ。僕がやろうとしてたのに、フォルに先取られた。
この方法、集中状態のエレにも使えるからおすすめ。ただし、できる人は少ない。ヴィーは、そろそろできるようになってもいいと思う。
それにしても、まだ夜にならないのかな。狭い空間で、ゼロを愛でるだけ。これ、意外と暇だ。
「フォル、何かおもしろいお話ない? 」
「おもしろいお話……なんだろう。急に振られても」
「シェフィかゼロでもいいの」
エレが僕らの方を見る。おもしろい話をするまで逃がさない。そんな目をしている。
「俺、面白い話ある! いっぱい、面白い話してやる」
ゼロ、そんな意気揚々と言ったら期待値が上がりまくるんじゃない。もし、そこまでおもしろくなかったら、エレとティアからジト目で見られるだけじゃ済まないよ。自信ありげなその顔が、ほんとに大丈夫なのかと思わせる。
「この前、あったんだが」
十分後
「それで、ゼムが」
さらに十分後
「そう言ってきて」
さらにさらに十分後
「それで……」
ようやく気づいたみたい。エレとティアの冷めた視線を。簡単に話すとね、ゼロは兄弟一緒に過ごした日があったみたい。その日に、術を見せてもらって、きれいだった。きれいって言ったら、ゼロの術も見たいってゼムが言ってきた。って感じの話。
僕は、暇つぶしにはなったよ。
「フォル、時間は? 」
「残念。さっきの話、そこまで時間かかってないんだ」
「そうだったのね。エレを愛でて待ってましょう」
ティアはずっとエレを愛でてるでしょ。エレを愛でて、すきすきって言って、夜になるまで待とっか。
たまにはゼロも相手してあげながら。フォルが来たら、喧嘩しないように、みんな相手してあげないと。
深夜帯。ようやく時間になる。エレが眠そう。ゼロが氷を溶かしてくれる。氷から出ると、ついに占い術が示したものを知れる。
枯れた水は、すでにわかっている。
わざわざ、枯れた水の話が出ているんだ。ただ、空を明るくするには違う気がする。
光術は使えるけど、使う前にフォルを見る。
「……枯れた水に朝をあげる。これ、光じゃなくて……ヴィー、炎術」
「それでいいのか? 」
「うん。ついでに、誰か、愛術してくれるシェフィとかいるかな? お姫様に仕事させるなんて、ひどいシェフィはいないよね? 」
炎の術は、ヴィーが得意。愛は、僕とエレとティア。フォルは、僕をご指名だ。なんか、言い方に棘を感じるけど気のせいという事にしよう。
ヴィーの炎の術、久しぶりに見るかもしれない。普段は、鎖の方しか使わないから。
ヴィーが右腕を前に出す。赤い光。きれいな、青色の炎。ほんと、この逸材、僕らの家に入れたかったよ。愛は、かなり希少で僕らのお目にかかれるほどの逸材は、見ないからねぇ。
氷が溶ける。溶けた後は、僕の出番。ピンクの光が、水を輝かせる。色とりどりに輝く水は、本来の姿なんだろうか。
エレの目が輝いている。きれいなものは、エレのだいすきだから。
ところで、これで
「姫君! 」
グリちゃんの声。やっときてくれた。どれだけ待ってたと思ってんだろう。もしかして、枯れた水に朝を与えたから、来れるようになったのかな。
フィルとエルが降りてくる。グリちゃんが縮んだ。
「みんな合流なの。これで、みんなで脱出できる……けど、この後ってどうすればいいんだろう」
エレがみんなを代表してくれる。誰もそれはわからない。フォルならわかるのかな。
さっきからずっと、フォル頼り。
「そのうちわかる気がするの。エレはフォルと一緒に遊んでるから。フォルも言ってたの」
「僕何も言ってないよ? 」
フォルは強制的にエレの相手。と言っていると、異変が起きた。
水が溢れ出す。泳げないのはエレだけ。とにかく、エレを守らないと。
エレを守ろうと、右手を伸ばした。すぐそばにいたフォルがエレを抱いた。
僕もと思ったら、まさかのフォルがエレと僕両取り。と同時くらいかな。左手に何かが当たる。
見ると、エルが僕の手を握ろうとしてたというか、握った。エレがヴィーの左手を掴む。すかさず、ティアがヴィーの右手を。これ、何かあった時大丈夫なの?
ゼロがグリちゃん抱いてる。ついでにフィルと手を繋いでる。なぜかここだけ別になってる。独占できないと察したのかな。
水の中で息できないと、エレとティアが困る。という事で、水中でも息できるように、結界魔法の応用を。顔のあたりには、水が入ってこないようにする。もちろん、全員にだよ。エルだけ仲間外れなんて事してないから。




