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多世界転生物語〜偽りの姫の居場所〜  作者: 星実月 希蝶
3章シェフィ編 探し人
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6話 枯れ音


 ヴィーの成長にしんみりしていると、フォルがほっぺつんつんしてきた。いつもの事だから、とりあえず抱きついておく。


「……もう一個質問なの。どうやっても、ここから出れないのはどうして? エレ、いつも出る時みたいに、出ようとしているよ? でも、出れないの」


 エレはちゃんと出ようと思ってたんだね。神妙な面持ちのエレ。

 エレが試した方法は、ここから出るように念じる事だと思う。それなら、他の方法で試してみれば出られるとかないかな。


 僕が思いついたのだと、エレには試したくない方法。

 僕はエルを見た。何も言わず、にっこりと笑うだけ。言わずとも、エルならわかってくれるよね? そう信じてる。


 エルが首を横に振っている。痛めないかなと心配になるくらいの勢いで。隣のティアは、何かを察している? 苦笑いでエルから離れている。ゆっくり、ゆっくりと。


 まぁ、いくらエレが洗脳化にあっても、自分からはする気ないかな。


「……シェフィ、強打方法とか考えてない? 」


「バレた? 」


「うん。エレ以外は気付いてる。ゼロ見てみなよ。ヴィーとエレ守ってる」


 フォルに言われて見てみる。ほんとにゼロがヴィーとエレを守ってる。二人の前に立って、この二人は俺が守るんだ。そう言わんばかりの顔をしている。


 僕はエレにだけは手を出さないんだけど。


「……あの、我も、戻れません」


「そうなの? なら、小さくなるか、移動の乗り物になってもらえない? 私はいいけど、エレを歩かせたくないから」


 いつも思うんだけどさ、ティアって、なんで神殿でおとなしいなんて言われてるんだろう。行く度に、神和の聖女様は、お淑やかでおとなしく、美しくから、我々が守らねば。とか言ってんの聞くけど、そんなふうに見えた試しがない。


 そんなティアが、エレのためにとグリンゲルグに命令中。これって、小さくなるってこたえいいのかな。


「姫君を乗せます」


「ありがと。エレ、いい乗り物があるから、ここから出てみない? 」


「うん。出てみる。ヴィーも一緒に乗ろ」


 エレからのお誘い。ヴィーは、なんと返す。ここで、人間時代からの成長が試される。


 数秒の間。返しの思考中なんだろうか。

 

 おお、とうとう口を開いた。出る言葉は、果たして


「乗せてもらおう」


「うんうん。一緒に乗るの」


 エレの機嫌は晴れ模様。そして、ヴィーはその返答にどう示す。言葉だけじゃない。こういう場面では、態度も大事なんだ。


 あの堅物ヴィーだ。かつての彼なら、罪悪感をその態度に表すだろう。そうしたら、エレの機嫌が曇りになってしまう。

 ここで見せる態度はどうだ。

 見せた態度は、なんと、普通に嬉しそうだ。


「僕らも乗っていい? 」


「……全員どうぞ」


「わぁい。ありがと、聖獣王……言いづらいな……グリちゃん♡ 」


 フォルを先に乗せてあげないと。術をほとんど使えないから、グリンゲルグの背に乗るのはむずかしそう。


「フォル、エレが引っ張って乗せる」


「うん。ありがと。でも、それエレが落ちるだけだよ」


 うん。正論。正論だけど、もう少し言い方なかったかな。そういうとこもすきなんだけど。猫かぶってた時よりも全然こっちの方が魅力的だね。あっちもあっちですきなんだけど。


 すきといえば、乗せてあげるよりも、一緒に乗る方がいいかな。

 フォルって、思ったより軽い。もう少し鍛えた方が、なんてむりか。どれだけ鍛えても変わらなかったと本人が言ってたから。


 真下で見てみると、ほんと大きい。四メートルくらいかな。でもこのくらいなら、僕は術使う必要もなさそう。もう少し大きい想像してたんだけど。


 地面を蹴って跳ぶ。フォルを抱いたまま、グリちゃんに乗る。


 白いもふもふは、もふもふだった。ふっかふか。何これ、すぐに寝れる。徹夜明けじゃなくても。このもふか感をみんなに伝えたい。アディあたりを今度誘おうかな。


「シェフィ、ふか? 」


「うん。ふか。初めて乗ったけど、グリちゃんすごいふか」


 触れば触るほど、そのふかに心奪われる。このふか度を再現したベッドが欲しい。


 エルとティアも乗る。ゼロも。みんな乗って、ふかふか堪能。

 ゆっくりと、グリちゃんが動き出す。揺れが少ないから、落ちる心配はなさそう。むしろ、この揺れが僕らを包み込んでくれる。深い深い眠りの中へと。


「……すやぁ……」


「……すゃ……」


 エレとティアが寝ている。この状態でも、眠るってあるんだね。


「グリちゃん、さっきから本当に出口向かって歩いてんのか? 」


 白いもふもふに気を取られてた。景色は変わっている。灰色の地面。今も歩いているけど、進んでいる様子がない。ずっと、足を動かしているだけ。


「そうですが」


「そうじゃねぇよ。さっきから、動いてんのか? 」


「何を言っておられるのですか? 動いて……」


 ゼロの指摘で、その場から動いていないと認識した? それまでは、本気で動いていると思っていたのかな。


「……ねぇ、さっきから何か、変な音しない? エレのあれとは違う。歌じゃない……なんだろう、これ」


 まだ術の効果範囲内だとは思う。だから、歌が聞こえるのは正常。音系はあんまり得意じゃないけど、使えなくはない。音魔法で、小さなその音を拾う。


 なんなんだろう。風のようにも聞こえる。でも、誰かが笑っている声にも聞こえる。なんの音。そう聞かれても、答えられない。言える事があるとしたら、不気味。

 あれ? そもそも、あの二人は寝る直前に術は解いているんじゃないの? 眠りが浅くなるから、術を使ったままはやなの。いつも言ってるから。


 今日に限って。なんて言葉はあの子は持ち合わせない。


 というか、そうだった。術が使われてるかどうか。すぐにわかるんだ。なんで、こんな単純な事が抜けてたんだろう。大前提だ。景色が変わっている。それはエレの術は解けている証拠。


 この灰色は、エレのすきじゃない。


 まずは、これがなんの音か。もう考えるのはやめよう。エルと目が合った。一致すれば、それが答えだろう。


「「枯れ音」」


 同時に紡がれた言葉。最悪な、直感。外れろ。そう願うのは僕だけじゃないだろう。

 だって、僕らの言う枯れ音は——


「……」


「フィル? ……二人とも正解みたい。枯れ音の泣き声だ……せめて、祈りだけでも捧げようか」


「そう、だね」


 生命の神聖が感じてるというなら、間違いなんてないんだろう。

 エレとティアが眠っているのに起こすのは悪い。という事で、僕らだけで祈る。

 

 ——どうか、次生は愛と幸福に満ちたものとなりますように。


 ピンクの光。愛を願う光。枯れ音達に、届く事を願って。

 黄金の光は、新たな生命を祈るもの。それを、空色の光が、遠く遠くへと運んでくれる。


 ぽたん——不意に落ちた雫。僕らの視線は、その雫の元。それは、奥底へとしまい込んでいた本物なんだろう。


「……えっ……あっ……ごめん……なんでもない」


 翠色の瞳にできた水溜りを、両手で拭っている。


「……これ、脱出方法、何も思いついてなくない? 祈りも大事だけど、今は脱出も大事っしょ」


 あ〜、うん。そうですね。何も解決方法なんて思いついてないね。最悪な状況だ。せめて、祈っておこう。でも状況は変わらないよね。で今。


 外がどうなってるのかもわからないし、脱出が大事。フォルの言い分もごもっともです。


 なんて言われても、思いつかないもんは仕方ないじゃん。とも思うけどね。そうは言ってられないのが、僕らか。


「はい! はい! 俺、俺いい方法思いついた! 」


「ねぇ、なんかない? シェフィとエルなら何か浮かぶんじゃないの? 僕はもうエレ以外考える気ないから」


 エレ以外ってなんだろう。エレの何を考えてるんだろう。あと、今さらっと聞かなかった事にしたよね? ゼロがしょぼんとした顔で俯いている。人差し指で、グリちゃんの毛で遊んでいる。

 今回の慰め隊はフィルらしい。

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