4話 想い綴るうた
わかったんだ。僕にずっと声をくれていた、その少女の正体が。ずっと、僕らは認識できていなかった。何も知らなかった。でも、きっと知っている人物は存在する。
幻覚を抜けられたからなのかな。見つけた。ここの毒に耐えられなかったか。解毒をしないと。
「……って……えっ? 」
倒れている二人に近づいた。毒にやられた。そう思っていたんだけど、なんか違うみたい。フォルの頭にたんこぶある。エレは額にあざが。
これ、毒じゃないね。どこでぶつけたんだろう。
「エレ、フォル」
「……ん? ……シェフィ? ……僕……エレは? 」
「隣。何があったの? 」
フォルが目を離した。話したくない時の仕草。でも、ゆっくりと口を開いた。
それでも語られる。僕にだいすきなフォルの口から、僕の知らない間の事を。
「……幻覚はすぐ気づいたんだけどさ、エレを探そうとして……なんか落ちてきた」
そっか。エレの行動は、だいたいわかる。毒の影響は二人ともなかった。そう仮定しよう。それなら、エレは思うはずだ。愛の術で空間破壊すればどうにかなるかも。でも、愛の術は温存しておく。それなら、魔法具にでも頼るの。
って考えるはずだ。
それで、魔法具がフォルの頭に直撃と。だとしたら、エレは自爆か。
「……あたまいたい」
「だろうね」
「……ふにゅ……にゃ? ……二人ともどうしたの? 」
君が余計な事をして、でも、それがなかったら二人とも幻覚の中。そういう可能性もあるのか。寝起きのように目を擦るエレは、意外と功績を上げているのか。
何はともあれ、二人とも無事で良かった。敵ではなく味方の攻撃は受けていたみたいだけど。
「……フォル、シェフィ……あっちに何かある」
かけら同士のつながり。それがあるんだろうね。エレが道を示してくれる。僕ら聖極のお姫様の導きに従おう。
「……エレ、帰ったら話あるから」
「ふぇ? もしかして、らぶのお話⁉︎ うん」
お姫様は特別な存在だから。なんて言い訳は通用しないかな。エレは気づいていないけど、かなりお怒り。帰ったら、僕は一緒じゃない。それに安堵する日が来るとは。
それはそうと、このお姫様はどこへ向かうんだろう。急に止まったと思えば、ぐるぐるぐるぐる回っている。
次は両手をぱたぱたと。空を飛びたいのかな。鳥にでもなりたいの?
僕の愛しいフォルの温もり。右手に伝わる温もりに、視線を移す。
「シェフィ、上。エレ愛てないで、上見て」
エレは愛でるものだから、愛でているのは仕方ないよ。という言い訳が頭に浮かんだ。僕って、もしかして普段からそういう認識なのかな。一応、仕事や異常事態ではちゃんとするようにって気をつけてんだけど。
上。何があるんだろうか。水。水だ。聖星宮殿の周りに湖なんてあったかな。あれば、エレが転んで溺れるから、危ないって覚えているんだけど。少なくとも、僕の記憶の中には、存在していない。
ゆらゆらと揺れる水面。見ていると、眠くなってくる。
「……」
「エレ、ここから出る方法……あの子を助ける事じゃないの? 外の方が、創世姫を助けない限り、ここから出る事なんて」
「……もう一個、確実に出れる方法あるの。でも……力を貸してなんてくれない」
フォルがなんで気づいたのか。それはおいておいて、もう一つの方法。言い方的に、聖獣の類なのかな。この空間から出れるほどの力を持つ聖獣。そんなの、限られている。
「ごめんなさい。」そう言ったエレ。ぽたんと水滴が落ちる。どうにかしないと。僕がエレを守らないと。
でも、どうやって? 守るなんて、できるの?
「……力で出る、か。なら、温存。それさえ考えなければ……あっ⁉︎ エレ、僕を信じて」
「ふぇ⁉︎ ふぇ⁉︎ フォル? 」
エレの両手を握るフォル。名案が思いついた。そんな顔をしている。でも
『うーん……愛のお歌を……でも、それを……みんなを守れるような術を、エレも編み出すの』
そっか。それなら、可能性がある。
僕らのお姫様は、こう見えて努力家なんだ。それなら、術の大元をエレとフォルに任せて、僕は想いを。
「エレ、媒介は任せて」
「ふぇ? ねぇ、なんの事? エレに説明を、ねぇ、エレに説明を求めるの」
術使う本人だけが気づいていない。そんな事あるって思うくらい。まぁ、そのうち気づくでしょ。早く出たいから、説明なしで。
でも、想いか。今の僕にある想いってなんだろう。みんなと一緒。それに、僕は……
「ゆらりゆらりと、揺れ動く、波。愛を愛を、君に届いてと、願って。星の輝き、満ち溢れる。中に生きる、光の子。未来を求めて、彷徨う心。愛はどこかと、海探しては、見つかるはずはなく
逃げる空は、どこにもなくて、追いかけてゆくよ、海の中。眠り眠れと、愛探しては、見つかるその音は、暗き闇へと
ふらりふらりと、揺れ動く、風。愛を愛を、僕は探してと、想って。星の煌めき、満ち溢れる。外に行くよ、願いの子。今を求めて、近づく心。願いどこかと、空探しては、見つかるはずはなく
逃げる海は、どこにもなくて、追いかけてゆくよ、空の中。起きろ起きろと、星探しては、見つかるその音は、深き闇へと
愛知らずに、探しゆくのは、その身に溢れる、祈り月をと
逃げた真は、そこにあって、見つけていたよ、星の中。眠れ起きろと、願い探しては、見つかるその音は、光音へと」
久々だと、低い音出ないな。でも、音程なんて関係ないか。
「エレ、世界は任せて」
「うん……想いうた、響け! 愛の音色、届け! 」
おそらく、ここはあの邪悪な気配を宿すあれが創る空間だ。それにもっと早く気づいていれば、この方法を見つけられてたのに。また、フォルに負けた。
「リリフィルトゥ・シェルフィーシェ! 」
広がる歌、世界へと。旧神聖語。どんな言語でも、意味と願いで、術は使える。でも、やっぱ、旧神聖語が一番強力だ。
溢れるピンクの光の音色。僕の想いを媒介に。広がる音色は、闇を消し去る。空間構築は、完全にフォルに委ねているのか。フォルがすきそうな、夜の世界。
あかりは、輝く蝶。どこか、僕の想いを反映しているかのよう。
ちなみに、媒介は、エレとフォルに向けた想い。少し恥ずかしさもあったけど、これがないと術が完成しないんだ。
僕とエル、ティアとも別の答えを導き出した。これが、エレの答えなんだ。どこまでも優しく、愛おしい。愛の想いを、消えないものを言葉にする僕ら。それを、力へと変えるお姫様。
媒介の愛が強いほど、術は強力となる。なら、僕のこの想いは、どれだけの効果を生み出すんだろうか。
「ふにゅぅ……ちゅかれた……」
「お疲れ様。よくがんばったね」
フォルがエレの額にキスをする。今は恋人じゃないんだっけ? 僕としては、このまま結婚しろって思うけど。たぶん、フィルもそう思っているんじゃないかな。互いに、互いの下の子を身内にしたいと常々願ってるから。
「……うん。がんばった。エレはすごいがんばったんです」
「うん。がんばった、がんばった」
だいぶ道のりは遠そうだ。笑顔を見せてるフォルは、恋人じゃなくて、妹を相手にしているかのよう。頭を撫でて、喜ばせて。エレはそれで満足してそう。
今はまだ、二人の距離感はこれでもいいのかな。と、素直に受け取りたい僕と、早く義弟になれと言いたくなる僕がいる。
「エレ、もう一仕事。頼める? 」
「うん。ふにゅふにゅふにゅぅぅん! 」
謎エレ言語炸裂。二人と合流するために、エレの創る空間から出る。じゃなくて、まさかの二人がいる場所を、この空間に転移させてしまうなんて。
お気に入りの落書きを、消したくない子みたい。




