5話 星の謎
エレがもう一箇所行きたかった場所。それはゼロが管理している温室。
水色のお花がいっぱい咲いている。温室なのに寒いのはどうしてなんだろう。その答えは単純。そのお花は全て氷の花。冷気を帯びているお花なの。
「……ゼロ、神聖ってなんなの? エレは詳しく知らないから教えてほしい」
エレがずっと疑問に思っていた事。少しお暇できたからそれを聞いてみる。ここにしたのはエレが見てみたかったから。
エレは神聖の事、ほとんど知らない。本当に最低限しか教えてくれなかったから。これから何が起きるにしても、エレは神聖の事を知っていないといけないと思うのに。
「エレ、この世界には魔力が大量に漂っているだろ? その魔力を魔星って星では呼んでいるんだ。正確には魔力全てじゃないけど、そこは後々。その扱いに長けてるのが魔聖。星には神聖力……魔星とは違う物質が大量に漂っているんだ。神聖はその力を扱うのに長けた存在」
ゼロが真面目に教えてくれる。勉強モードなの。いつもは逃げるけど、今はエレから聞いているから逃げない。お勉強だって思わないようにしておく。
「それぞれ役割があるっていうのも特徴の一つか。それと、魔法と神聖術も違うな。魔法は普段使っててわかると思うが、魔力に指示を出す。魔法陣とか魔法式とか。だから解析も簡単だ。神聖術は旧神聖語での演唱や誓い。言葉の意味や想いが強く影響してくるんだ」
何度か目にした事だけはある。膨大な力を暴走させる姿を。暴走が本来起こるものかどうかは別として、神聖術は魔力よりも危険な部分が多い。そんな感じがする。
危険なだけじゃないっていうのは知っているんだけど。どうにかして魔法を使う時のように、感情との切り離しはできないのかな。
そうすれば、世界が滅ぶ事が少なくなるのに。
ゼロはエレがわかるように説明してくれる。どうすればエレがわかるか、かなり考えているのかむずかしいお顔をしている。
「こういう話もあるな。魔法を扱う魔聖は器用と言うか、一部が特化していても他もある程度バランスよく使える。けど、俺ら神聖は一点特化型。旧神聖語を知ってればある程度は扱えるが、魔聖と比べるとかなり劣る。その代わり」
「……得意はとことん強い? 」
「そういう事だ。俺の場合は本来の役割と別で氷の神聖の弟という面も持ってる。だから」
ゼロが右手の手のひらを上に向ける。そこに透明度の高い氷が生まれる。これって、魔法じゃなくて神聖術なのかな。見ただけだと分かりずらいよ。
「氷の術は得意な方なんだ。その逆で炎に関しては全くと言っていいほど使えねぇ。なんでもある程度こなせる上で強みがあるのが魔聖。なんでもはできなくても一つの分野に特化しすぎてるのが神聖。そう覚えとけばいいだろ。努力次第である程度は補えるけどな」
わかりやすいの。ゼロはエレに理解できるように、いつも考えてくれている。おかげでエレはいっぱい覚えられる。
そういえばまだ聞きたい事あった。
「そうなんだ。じゃあ、お次は愛の神聖ってどんな人なの? 」
覚えてないってわかってる。でも、それでも聞いてみたかった。おにぃちゃんが周りからどう思われているのか。エレの記憶の断片では、優しくて可愛い部分があって、純粋。でも、他の人には違うかもしれないから、ちょっとどきどき。
「フォルと似てる。俺らのまとめ役だった。お前はあいつのようには絶対なれない、つぅかなるな。お前は俺らのそばでふにゅふにゅと愛想振る舞ってればいいんだよ」
「……なんでちょっと視線逸らしたの? 」
ゼロがおにぃちゃんのお話する時、視線逸らした。問い詰めようとすると、また視線逸らす。
「……えっと、俺が覚えてる断片がその……えっと……ちょっと……なんていうか、可愛いだけの存在はお前だけなんだ。だから、エレは姫として癒し与えるのが一番重要なのにあんなふうになってほしくないっていうか……」
何言ってるんだろう。なんか冷や汗かいて、怪しい。でも、そういう事ならお望み通りそうする。でも、その前に
「姫ってなんなの? 」
「ああ、ほとんど書かれてはなかったが魔聖と神聖には一人の姫がいるんだ。神聖姫の方は純粋無垢でいなければならない。神聖書記にそう書いてあった」
本の知識だったの。
——……は……ですか? なぜ……は、争いを……ですか?
なんだろう。今何か声が聞こえた。エレは知らない言葉なのに聞き取れた。不思議な事ってあるもんなんだね。
「……れ……エレ! 」
「ふぇ⁉︎ ど、どうしたの? 」
びっくりした。ゼロが急に声かけてくるから。
「どうしたはこっちの台詞だ」
ゼロが心配そうにしてる。なんとか誤魔化さないと。そうだ、氷のお花にお手て近づけてみよっと。
「つめたっ⁉︎ 」
氷の花は冷たい。
「氷の花はロスト特有の花だ。本来寒い地域でしか育たない。今は温暖な地域で育てられるか研究中なんだ。この研究はゼムに必要だからな」
もう咲いているのに、まだ研究段階なんだ。ゼムはゼロの双子のおにぃちゃん。
ゼロはゼムがだいすきなの。
必要な事。そういえば、エレにはわからない事がある。
「ゼロががんばってるから成功するの。ねぇ、必要で思ったんだけど、あれってわざわざ婚約発表の場所でする必要あったの? 」
見栄えなわけないの。エレの反応を見るためもないと思いたい。ゼロがなんか呆れている。
エレの今の知識を見るためとかも違うと思う。エレには理解できない何かがあったのかな。
「……仮にも王族の婚約者だ。あの件に関わっている貴族は全員参加確認してたんだ。あいつがわざわざ集めなくても勝手に集まってくれる。あの場所はちょうどいい場所だ」
案外単純な理由だった。でも、やっぱりそうなんだね。ゼロが呆れるのに理由がなくても、フォルの選ぶ場所は理由があるんだ。それなら、わざわざジュンドの森を選んだのも理由がある。そんな気がする。
あそこは一度迷えば出る事ができない。だから失敗した時の事を考えて? それはあり得ない。
実際に行ってみないとわからないのかも。
「ゼロ、なぜかエレの連絡魔法具がないからゼロが代わりにルーにぃとエルグにぃに頼んでおいて。明日、ジュンドの森に行きたいって」
悩むよりもフォルに聞けばいいと思う。それに、いけばわかる時だってあるから。ゼロは何か言いたそう。
「……お前記憶どうなってんだ? 」
なんでそんなあり得ないものを目にした時のお顔しているんだろう。連絡魔法具ないの、事実なのに。
そういえば、フォルって今いるのかな。調べてみよっと。エレは神聖達の居場所、詳しく知る事ができなくても、近くにいるか知る術を知っているから。
一方的に連絡できるけど、範囲限られてるからわかるって感じなんだけど。
術を使うために目を閉じて集中する。フォルにお部屋にいるのか問いかける。でも、反応がない気がする。フォルはきっとエクリシェにいない。
「フォルいないみたい。ゼロ、そろそろお部屋に戻って休も。今日はゼロのお部屋でねむねむなの」
エレはそう言って温室の外へ出ようとする。でも、ゼロがついてこない。振り返るとゼロが止まっている。
「ゼロ? どうしたの? 準備もしたいから早く行こうよ」
「あ、ああ。そうだな」
どうしたんだろう。いつも以上におかしなゼロ。略しておかしゼロ。ゼロの事ほっといて先に行くと時々お部屋につかない時がある。でも、ゼロが動こうとしない。お部屋に着くように祈って先に行ってようかな。
「……あいつなんであんな事できるんだ? あれができるのは、姫の力を持つ状態だけだろ。あいつは……答えるわけねぇか。たとえ全て知っていたとしても。俺らの剣は名前だけだからな……そもそも、今あの剣持ってねぇんだった」




