2話 不思議な森の空間
確認し終えて、早速ゼロ探し。僕の勘が頼りみたい。全てのかけらが集まっているからなのかな。エレが、以前のようにすぐに疲れなくなった。それでも、元の体力の無さがあるから、気にしておくに越した事はないんだろう。
と思ってたんだ。でも、疲れたより先に出た言葉があるんだ。
「飽きた〜。もっときれいな景色欲しい〜」
真っ白景色がずっと続いていると、流石に飽きてきたみたい。僕もわかりはするんだけど、景色を変えるなんて、そんな芸当できないから。光を出す程度であれば別なんだけど。
「……本来の姿を見せて。シェルシェス」
えっと、星の子供って感じじゃなかったかな。旧神聖語。
信じられない事が起こった。そうとしか言えない。僕らは今、森の中にいる。
ここが、フォルの創った空間。不完全であるがために、世界を記録する場所として機能している。その話はあったけど、フォルの言葉で変わるなんて。きっとこれが、この空間の本来の景色なんだ。
薄らと光る青緑色の葉を茂らす木々。宝石のように美しい花を咲かせる植物。フォルがすきそうな場所。エレが森を見ている。その目は輝いている。まるで、あの日みたい。
僕が初めて、公式的じゃなくて、エレを生命の星に連れて行った時。
あの日のあの子も、こんな顔をしていた。
はしゃぎながら、フォルの手を取る。「こっち行ってみたい。」ゼロを探しているのわかってるのかな。そう言いたくなるような事を言って走る。僕らが示す方角と、エレが走る方角がおんなじ。だから、何も言わないけど。
「エレ、そんなに走ると転ぶよ」
「転ばないの。にゃ⁉︎ 」
言ったそばから。転びかけたエレをフォルが支えている。ほんとに目を離せないよ。
「……シェフィ、ごめん。話すって言ったのに」
「仕方ないよ。この状況じゃ。落ち着いたら、ちゃんと話して」
「うん」
エルの話も聞いておかないとだけど、流石に優先するのはゼロ。
ところでフィルはずっと前見てないけど、大丈夫なのかな。あの白い景色だと何もなかったけど、ここにはぶつかる木がある。
魔法具に夢中になっているのもフィルらしいんだけど。
四角い魔法具。多分、防御系統。
「わっ⁉︎ 」
目の前に葉っぱが大量に落ちてきて、つい声が出てしまった。直前で止まったから、葉っぱまみれにはならなかったけど。
「……エレ、ちょっと頼みあるんだけど」
「みゅ? フォルに頼みならいいの」
「そう。ありがと。判断は君に任せる。聖獣の力使って」
思った以上に回復が遅かったのか。この森がゼロの居場所に辿り着くまでに、どこまで癒してくれるのか。それでかなり変わってきそうかな。
あれ? さっきまでもう少し明るくなかったかな。なんか、暗くなってきている。時間による変化なんて概念があるのかな。だとしても、おかしいか。まだ暗くなるような時間じゃないはず。
なら、どうして
「……これ……エレ、あの時の記憶ってある? 」
「あの時って、聖星国の事? ううん。王都に行ったくらいから曖昧になってきて、王宮に着いた後は、覚えてない。夢見気分? って感じだった」
聖星国か。懐かしいな。一番初めの世界。色々あったけど、あの日は僕らは別々だった。僕とエルは一緒。フィルはゼロと一緒だった。エレとフォルとティアが、一番危険な場所に行っていた。
だから、あの日の二人の事は知らない。ティアに聞けばいいけど、今ここにいないから。
でも、どうして急にそんな話を。なんて聞くまでもないか。わかってる。わかっているんだ。
多分、初めから気づいていた。信じたくなかっただけで。
エレ達の話を聞いて、不完全な空間への干渉。それができる存在は、そう多くはない。そして、真っ黒い霧。
おんなじだった。僕らが、遠い昔に遭遇したものと。
「……」
それの危険性を知るからこそ、自分で自分の感覚を閉ざしてまで、僕は知らないふりをしてたんだ。
「大丈夫なの。エレのゼロはとっても凄いんだから。それに、約束ある。だから、大丈夫だよ」
明るいエレの声。自分だって、理解してるくせに。それでも、君はそう言うんだね。ゼロという希望を、信じているんだ。
それとも、愛のお姫様は知っているのかな。その不思議な眼で、ゼロの無事を視ているのかな。
「……相変わらずの楽観思考だよ。でも、それもそっか。もし、捕まってたら笑ってやるよ。暗殺術を学んだ時の君はどこいったんだって」
「フォル……エレはしゃぁってしてあげるの」
久々に見た。性格悪い時のフォル。エレは通常通り。
「ゼロが捕まってないなら、これは便利かもしれないね」
僕の言葉に、理解を示さなかったのはエレだけ。話聞いているのか怪しかったフィルまで頷いている。
暗くなれば、それは正解の場所。わざわざ、こっちにいるんだよ。そう教えてくれているんだ。
悲観するばかりじゃなくていいよね。
「……エレ、防御魔法具正常に機能する。何かあれば、これで守って」
「うん。ありがと。フィルの魔法具だいすき」
防御魔法具の使い道はエレ保護か。フィルがエレに四角い魔法具を手渡している。
歩いているうちに、だんだん暗くなって
「……っ⁉︎ いたぁ……誰か、あかり」
「エレばっか見てるか、いったぁ……エル、あかりを」
エレという愛らしい存在しか視界に入っていなさそうだったフォル。それを注意しようと思っただけなのに。目の前見てなかったら、木に頭ぶつけた。
普通に痛い。
エルが光魔法であかりをくれる。あかりが照らしてくれるおかげで、木々がはっきりと見える。
「……エレ、木にぶつからない方法知ってるの。あのね、こうやって、両手をふにゅふにゅして、エレのそばに木がないのか確認すればいいの。エレはおりこうでした」
エレが賢い。でも、それ上は守れていないよね。エレは気付いてすらなさそうなんだけど。そんなとこもかわいいから、言わないでおく。
「……今度、あれの場所を特定できる魔法具を作る」
「エレもお手伝いするの。フィルのために、設計図描く。今回は、エレにおまかせなの。えっと……まだまだ遠そう」
結構歩いてるんだけど。それに、かなり真っ暗。あかりがないとんないも見えないくらいに。
一体、その場所はどこまで暗いんだろう。というか、ほんとにこの空間の中にいるのかな。
森の中を歩いているはずなのに、ここは、ほんとに森の中なんだろうか。そんな疑問が生まれてくる。見えてる景色は、木々の中。
「君も感じてる? 異様な気配」
「うん」
「なんでかな。懐かしい感じがするのって。ここに、何か大切なものがある、のかな」
フォルの方を見ると、意識的なはずはない黄金が見える。術は抑えているはずだから、こんな場所で封印を解くはずはない。どこか遠くを見つめるその黄金は、何かに干渉でもしているかのようだ。
何か。一体なにが。以前の事と何か関係があるんだろうか。
「……そこに、いるの? 」
「ふぇ? 」
「エレ、こっち」
フォルがエレを連れて走る。僕らも追いかける。
やっぱり、森の中じゃなかったんだ。森はとっくに抜けていた。
黒い宮殿。僕らにとって、縁深い場所。
愛の星の中。神魔聖の姫達が暮らす純白の宮殿。聖星宮殿。外装が、おんなじなんだ。
違うとすれば、あそこは純白だった。なのにここは黒だ。
なんでなんだろう。いやな予感がする。純白は、染まらない姫達を示していた。なら、この黒は?
まるで、姫達が黒く染まっている。そう暗示しているみたい。
足が止まる。誰も、その中には入らない。入れないんだ。
結界で阻まれていて。きっと、ここにくるには役者が足りない。もう一人
「エレ! 」




