1話 確認
エレと一緒に待っている。白い空間の中で。フォル達がくるのを。そう、今は二人っきり。二人っきりなんだ。
僕はエレを抱き寄せる。なでなでぎゅぅぎゅぅらぶらぶすりすりフルコース。
満足するまで楽しんでいた。エレも、いやではなかったと思う。
約束の時間一時間前。おかしいよね。一時間前に揃うなんて。三人の時間概念を知りたいよ。
「あれ? 早くない? 」
うん。そうだね。エレはかわいいね。純粋で。
「僕は……エレがいないのが寂しくて」
フォルは仕方なし。
「シェフィに最低でも一時間は前にこいっていつも言われるから……じゃなかった。頭のかったい他支部の神官長」
なんで僕になすりつけようとしたんだろう。エルは、うん、そうだね。大変だねとしか言えない。神殿が増えるとそういう面倒ごとが起きるのか。あれだよね、たしか、各地で広めようと増やしたんだったよね。
にしても、よく本殿で長年勤めてきた大神官にそんな事言えるよ。
「…………たかった」
いつも以上に間が長い。んじゃなくて、小声で聞こえづらいのか。
「フィルは、エレの設計図で魔法具作りたかったみたい。それと、新しい魔法具の自慢」
提供じゃなくて自慢ときたか。それは、フィルなら堂々と言える事じゃないのか。というか、今思ったんだけどバランス悪すぎない。強さでバランスはいくらでも補えるパーティって名乗った方がいいかも。
「ところで、緊急時の指揮役誰にするの? 」
エレはかわいい。エレは愛しい。
きょとんと左手を顎に当てているエレ。
指揮役は重要かも。特にこの人選だと。
神聖のまとめ役を担う僕。魔聖のまとめ役を担うエル。それに
「……」
本来であれば、そのどちらをもまとめるフォル。星の生命というのは、そういう役割も担っているのだから。普段は、僕と一緒に神聖のまとめ役だけどね。
そのフォルは、俯いている。自分がやる。なんて言えないよね。一度失敗して、取り返しのつかない事態を引き起こしているから。
「エレがする」
「えっ」
思わず声が出た。隣にいる僕の愛しいエレが立候補するから。一番、経験が少なく不安がある。でも、一番の適任は間違いなくエレだ。この子だけが、戦闘時に全てを見通す位置にいられるから。
震える左手をまっすぐと上げているエレ。どうして、なんて聞かなくてもわかる。僕ら全員。
「……僕が担うよ。それが、一番でしょ」
「エレ……エレが……」
あっ、これエレ本気で言ってた。でも、僕に抱きついて引き下がっている。フォルの方は、大丈夫でしょ。あの時のあれは失敗じゃなくて、人が足りなかっただけだから。
それでも、あそこまで減らしたのはフォルの判断の早さが成し得た事。なんだろうけど。
そこに気づいてはいないのかな。
まぁ、エレに任せるよりって感じではあるんだろうけど、そこへ戻ってきてくれる。それは、素直にうれしいと言っていいのかな。
エルも反対はしないだろう。あと、助けに行く前に確認しておくべき事は
「一応、役割分担しておく? すき放題やってたら、誰もエレを守れなくなるから」
それはそれでいいんだろうね。そもそもエレの方に敵が来る前にいなくなっているんだから。けど、万が一を見越して。エレが役割とはなんだって顔をしている。フォルはなんかいやそう。フィルは、どこでもいいって感じなのかな。普段通り、任せます状態。
「ぼくこうえ」
「とりあえず、エルは前衛で戦ってもらうか」
エルの発言遮り手法。めんどうだから、一番楽そうな場所で。なんて事、僕が許すと思ってんの。
あとエレは後衛以外できないから、それで決定。こういう時、イシュの方が気がきくんだよなぁ。あの子中衛くらいは任せられる。
エルは嫌々同意。
「……おれは」
「中衛頼める? シェフィは前衛頼んでいいよね? 僕は……後衛にするよ。万が一、はあるから」
それ。ほんとそれ。僕の愛したフォル。自分がエレのそばにいれば、いくらでも起点がきく。そんなふうに考えるのがフォルなんだ。
「エレ、敵が出たら真っ先に神域結界。今の君ならできるはずだ。フィルは、解析優先。君ら二人は、好きにして」
あっ、エレがフォルに抱きつきに行った。でも、仕方ないか。僕も正直エレとおんなじ事したい。
あと、僕個人が確認しておきたい事。二つあるんだ。
一つ目の確認するか。地面を蹴る。かなり柔らかい。これだと、戦闘時は動きにくいかも。ここで何かあった時は、氷魔法とかで地面を固めるか。
もう一つ、これはエレに関する事。
「エル、少しだけ付き合って。今から、実践時のために実験したい」
「シェフィ、いい事教えてあげるよ。洗脳って技があるんだ。一部の記憶だけを消す。認識をさせなくする。そういった術」
それができないからどうしようか悩んでんだよ。エルは当然のように言うけどさぁ。神聖だからって全ての術使えるわけじゃないんだよ。
って言おうと思ったら、エルがエレのそばへ行く。
「似た魔法なら、使える。二日間くらい効果ある。そのあと数時間、頭がぼんやりするかもしれないけど」
二日。それまでにゼロを助ければ問題ない。って、返事を聞く前になんで魔法使ってんの、この舎弟は。
ピンク色の光が、エレを包んでいる。愛魔法でこんな事できるんだ。
「これで大丈夫。シェフィ、他に確認する事は? 」
「ねぇ、僕も確認ある。方法がなくなった時、君ら全員逃げ切れる? 」
ああ、あれか。僕は逃げ切れるかな。エルも毎回僕と追いかけっこで鍛えているから大丈夫。っていう意味を込めて頷く。
でも、問題は
「……大丈夫。おれは。でも、エレは」
「僕が抱いたまま避けるから心配ないよ。君らも、使うかもしれないもんの危険性はちゃんと説明してよ」
なんで僕を見るんだろう。フォルは、僕に何を言いたいんだろう。何回かそれでやらかした事あるけど。僕だけじゃないでしょ。多分。
「シェフィは知ってる。毒無効物理チーっ⁉︎ まだ全部言ってないじゃん」
「……エルと僕は基本これ。近くにいなかったら安全だよ」
わかりやすいように、実際に見せてあげた。ちょうど良さげな場所を探して。
「……おれは、そんな危険な事……今回は弓使うから、頑張って避けて」
それは、中衛役が安全な位置探すんじゃないの。フィルが何故か目を合わせていない。ていうか、僕の記憶だとフィルって弓扱えないはずなんだけど。練習したのかな。
なんてわけないか。そうだったら、フォルが頭を抱えるような事ない。
「……はぁ。わかった。全員余計な事しないで。フィルは弓禁止。シェフィとエルは愛の術と魔法好き勝手使うの禁止。とまでは言わないけど、連携で使うのは禁止。エレは……エレエレしといて」
溜め息ついている。なんなら、小声で「引き受けなかったらよかった。」なんて言っている。
エレを愛でながら。
「返事」
「ひゃい⁉︎ 」
「エレはえらいね。ほんと、僕の癒しはエレだけだよ」
返事をしたのはエレだけ。フォルがエレ独占している。誰かが近づくと「しゃぁー。」って威嚇し始めた。それのせいで、エレがなんでも威嚇しているの自覚ないんだろうね。
「感覚人達、どっちにゼロいるか教えて」
僕とエルを見ている。フォルからしてみれば、僕らはそうなんだろう。
どこにいるんだろう。そんな事も考えずに、適当にこたえてみる。
ここだと方向感覚わかんない。多分、西だと思うんだけど。
「北か……エレ、一緒に行こっか」
「うん」
北だったんだ。完全にエレ奪われた。でも、笑ってくれている。僕と一緒にいた時、ほとんどの時間を泣いて過ごしていたから。
きっと、あの子も笑ってほしい。そう思っていたはずだ。おんなじであっても、過ごしてきた場所は違う。想いは違う。本質はおんなじ。
ねぇ、僕と一緒にいたかけら達。エレは、独立したかけらの子は、大丈夫そうだよ。ちゃんと笑えている。




