7話 エレの転移魔法事情
フォル探し。諦めない。エレは、諦めない子なの。フォル、今どこにいるの。エレが聞いているの。だから答えろなの。
なんて言って、答えてくれるなら苦労しない。
空色の景色。保温魔法具が全然効いていないのかな。寒すぎる。凍えそう。何か、羽織るものでも持ってきていればよかった。ルナ、今どこにいるんだろう。フォルもどこだろう。
ルナは、エレを探しているのかな。
気を抜くと、足がつるんって滑りそう。またお尻がひえひえになりそう。
「ふきゃ⁉︎ 」
また、また滑った。氷が、お尻が離れない。手も離れない。ピンチなの。これは、どうすればいいんだろう。炎魔法を使えばいいかな。
周囲の魔力に、あったかぽかぽかってお願いする。赤い光りが、氷についているエレの両手の周りにぴかぴかぽかぽか光ってる。
エレの両手がびちゃびちゃ。でも、氷から離れた。
あとは、お尻だけ。お尻も、おんなじ方法だと、お尻びちゃびちゃ。それは、ちょっとやなの。ちょっとじゃないかも。他の方法があるかな。音魔法で溶かしても、水。変わらないと思う。
「保温魔法……保温魔法なの! 」
きっと、保温魔法が解決してくれる。そう信じて、保温魔法をお尻に使う。ひんやりが消えただけでした。道具とかあるかな。王都から離れているから、氷以外何もない。
こうなれば、一か八かなの。最終手段。転移魔法でエレがここから離れる。
場所は、どこにしよう。お空とお水と氷以外なら、この際どこでもいい。
お願い、お願い。成功して。まともな場所に転移して。
エレの根性と気合いと運、エレに応えて。
白い光りが、エレを包み込む。
運に任せたその場所は、一体どこになるんだろう。何がきてもいいように、目を閉じておく。
白い光りが消える。寒くない。苦しくもない。地面はある。足に硬いものを感じる。硬い、岩場とか、整備されている道か。
目を開ける。
どこ? ここはどこなの? エレは知らない。目の前に広がるのは、明らかにおかしい発展を遂げた場所。
縦に長い街並み。人はみんな、らぶらぶしている。愛に満ちている。
直感的に感じた。ここは、世界の文明よりもはるかに優れている。
なら、ここはどこ? エレの中のエレの記憶にある? ないと思う。でも、エレは、エレの知らないエレは、いろんな場所に行っているわけじゃない。
誰かにお話聞こうかな。言葉、分かればいいんだけど。まずは、言葉を聞き取れるのか。そこからなの。
耳を澄ます。
「アナタ、今日はどこへ行きます? ワタクシは、アナタと一緒にいられるのでしたら、どこでもかまいませんわ」
「おお、相変わらず可愛いなぁ、キミは。なら、キミが好きな、喫茶店に行こう」
聞き取れるけど、なんだろう。胸焼けしそう。ちょっと、近づける雰囲気じゃない。みんな、こんな感じで。
もういいや。自分でどこか調べよっと。
それにしても、本当にきれいというか、人がきらきらしてる。どんな人でも、愛される。そんな場所。ここなら、エレも愛されるのかな。何かあって、数日間くらい脱走するなら、ここがいいかも。
にゃぁ、人前構わずキスしてる。流石のエレもびっくり仰天。どれだけ愛情、らぶらぶならいいんだろう。
どこか、ここの事が書かれている場所ないかな。看板とか。
看板、ある。でも、看板違い。これは、なんのお店なんだろう。ピンク色の看板。グリアジュー、続き読めない。看板が読みづらい。
というか、今気づいた。これ、転移魔法使えばいいだけだった。今度は、どこに転移するんだろう。あまり、らぶらぶいっぱいな場所じゃないといいの。エレも、フォルとらぶしたいってなっちゃう。
という事で、転移魔法使用。白い光りに包まれて、次なる場所は、どこでしょう。
次なる場所は、
「あちゅ⁉︎ ふぇ⁉︎ なにこれ⁉︎ 」
焼ける! 焦げエレになっちゃう⁉︎ 早く、早くお水を。お水じゃない、氷を。氷をください。
溶岩みたいな場所。岩がちょっと赤い。靴履いてるのに、足が熱い。溶けてないよねって思うくらい。
ちょっと、誰か。お願いですから。助けてください。
って、思っても誰もいない。人がいない。転移魔法使わないとなのに、集中できない。
こんなにあちゅい場所に、誰かいるわけないよね。一人でどうにかしないと。だけど、魔法は集中できない。あちゅい。暑すぎ。
ぐるぐる。目の前ぐるぐる。汗で、お洋服がびっしょり。めちゃくちゃびっしょり。シャワー浴びたい。
「……姫さん⁉︎ なんで、こんな場所に」
エレは、だめかもしれない。とうとう、アディの幻聴が聞こえてきた。アディなら、こんな場所でも、いる可能性あるけど。
目の前くるくる、ぼやぼや。頭ぼー。
何かが、エレの背中に当たる。エレのお口に、液体が入る。ちゅめたい。味は、ちょっぴり甘め。これは、お水。
なんだろう。しょっぱい何かが、エレのお口に入る。クッキーみたいな食感。ちょっとお固め。
これ、夢なのかな。
風が、吹いている。気持ちのいい風。熱風じゃないの。
また、お水入った。
どれくらい経ったんだろう。ちょっと、はっきりしてきた。エレは、どうして、座ってるんだろう。
「……ふぇ……アディ? イヴィ? なんでいるの? というか、ここどこなの? エレはなんで、ここにいるの? エレはエレなの? 」
「ああ、おいたわしや。この暑さで、愛姫様の頭がやられてしまったようです。アディ、今すぐに治しなさい」
そっか。イヴィは、暑さでちょっぴり、おかしくなってるんだ。イヴィは、今はほっといて、アディに聞くの。
「……姫さんがどうしてここにいんのかは、逆にこっちが聞きてぇんだが? 俺様とイヴィは、加護の定期調査だ。ここは、炎の星。姫さんも、星の記憶があんなら、名前くらい知ってんだろ? 」
「うん。知ってる。だから、あちゅいんだ。ありがと。アディとイヴィが来てくれなかったら、エレは干しエレだったかも」
本当に助かった。イヴィは、なぜか頭を抱えている。
それにしても、ここが炎の星って事は、もしかして
「……ねぇ、エレね、さっき転移魔法使ったら変な場所だった。みんならぶらぶ、ピンク色。あそこって、愛の星のお街の方なの? 」
「らぶ? ……そうかもしれねぇな」
どうして、星に転移したのか。それはわかんない。でも、あそこが愛の星なら納得。あのらぶらぶっぷり。
ぴにゃ⁉︎ い、今、今、炎が、炎がびゅぉーんってなった。噴火? 噴火なの? でも、溶岩じゃなさそう。自然の炎。
自然の炎が噴き出している。ここ山じゃないのに。
エレは、アディにしがみついて、ぷるぷるしている。
ふにゃ⁉︎ そうなの⁉︎ フォル、フォルがどこにいるのか探さないと。また転移魔法を使わないと、だけど、もうやだ。エレが一人で転移魔法を使うの。
こういう時は、お仲間作戦。
「アディ、イヴィ、お願い。あのね、エレは今、フォルを探しているんです。ロストで逸れて。でも、でも、寒い場所で滑って、お尻くっついちゃったの。だから転移魔法使った。なぜか、愛の星だった。謎ですね。もう一回使ったら、ここだった。よく助かりました。びっくり。って事で、お願い」
「……姫さん、わりぃんだが、もう一回説明してくれねぇか? なにをどうしたら、転移魔法で星にきたか」
それはエレにもわからない。
そして、イヴィはいつまで、変な妄想しているの?
「……ロストで、いなくなったんだよな? ……ロスト付近には、ゼロとゼム以外いなさそうだが」
「ふぇ? でも、エレは、ロストにいたよ? あっ⁉︎ あのね、襲撃! 襲撃がなんとかって言ってた。もしかしたら、別の場所にいるのかも」
「だな。とりあえず、近くに転移すっか。イヴィ」
イヴィを見るの。でも、イヴィは「おいたわしや。」とか言ってる。頭を抱えている。
「……イヴィ、お願い。フォルのいる近くに、行きたいの。お願い」
エレの、必殺技。上目遣い。イヴィと目が合う。いつものイヴィに戻った。
「お任せください。愛姫様。それで、どこに転移すればよろしいのですか? 」
まだ戻ってなかったかも。ちょっと心配だけど、イヴィに任せる。
場所をもう一回教えると、イヴィが転移魔法を使ってくれた。




